悪役令嬢なのに死ぬたび攻略対象がヤンデレ化してくるの、バグですよね?

悪役令嬢なのに死ぬたび攻略対象がヤンデレ化してくるの、バグですよね?

last updateTerakhir Diperbarui : 2025-07-14
Oleh:  斎藤海月Ongoing
Bahasa: Japanese
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普通の女子高生だった私が、歩道橋で自殺しようとしていた謎のイケメンを助けようとしてまさかの道連れ転落。 気づけば乙女ゲームの悪役令嬢に転生していた! 破滅ルート=追放だし大人しく受け入れよう…と思っていたのに、なぜか誰かに殺されて…...? 死に戻った先では攻略対象たちが何故か徐々にヤンデレ化して私に執着しはじめ、私を殺しにくる超高難易度ヤンデレデスループ突入!? これバッドエンドしかなくない!?私、どうすればいいの!?

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Bab 1

プロローグ『幸せな結末を』

「ああ、今日はずいぶん遅くなっちゃったな――」

 夕暮れの空を仰ぎ見ながら、綾瀬凛花はふと小さく息を吐いた。

 高校三年生の彼女は、最後の試合に向けた部活動で少し居残り練習をしていたせいで、すっかり帰宅が遅くなってしまっていた。

 西の空は茜色に染まり、沈みかけた夕陽がビルの輪郭を柔らかく浮かび上がらせている。高層ビルの窓に反射した光がきらきらと瞬き、車のテールランプが赤い光の帯を作ってゆっくりと流れていく。それはまるで、街の中を静かに流れる宝石の川のようだった。

 心地よい微風が頬を撫で、さらさらと葉擦れの音が耳に優しく届く。遠くからは自転車のベルがチリンと軽やかに響き、昼間の喧騒とは違った穏やかさが街を包んでいた。

 (……帰ったら、またあのゲームをやり直そうかな)

 ふと頭に浮かんだのは、最近クリアしたばかりの乙女ゲーム『聖なる光と堕ちた神』のことだった。

 聖女ソフィアとなり、傷ついた攻略対象たちを救いながら、最後には堕ちた神さえも浄化して世界を救う――そんな壮大な物語。全員のトゥルーエンドは無事に回収したものの、まだバッドエンドまでは手をつけていなかった。

 (今度はバッドエンド含めて、全部コンプリートしてみようかな……)

 そんなことを考えれば、気づけば自然と足取りが軽くなる。早く家に帰りたくなっていた。

 凛花はいつもより少しだけ近道――人気の少ない歩道橋へと足を向けた。そこを通れば、ほんのわずかだけ早く家に着ける。

 薄闇の中、歩道橋の入口へと差しかかる。コンクリートの階段は昼間の熱をまだわずかに残していて、踏みしめるたびに乾いた足音が響いた。手すりの銀色が街灯の光を受けて、冷たく鈍く光っている。

 ひとつ、またひとつと階段を上るたびに、街の喧騒が少しずつ遠ざかっていく。風が少し強くなり、髪がふわりと揺れた。

 やがて頂上に辿り着き、凛花はふと振り返る。背後には、ビル群の隙間から沈みかけた太陽が橙色の残光を滲ませ、街を淡く染め上げていた。

 ――もうすぐ夜になる。

 そんなことを思ったその時だった。

 ふと前方に目を向けると、歩道橋の先――薄闇の中に、ぼんやりと浮かぶ人影があった。

(え……?)

 その男は、欄干に両手をかけ、身を大きく前に乗り出していた。今にもバランスを崩して落ちそうな、不安定な姿勢だった。

 まるで――飛び降りようとしているかのように。

 胸の奥で心臓がドクンと跳ねた。背筋を冷たいものが這い上がる。

「ちょ、ちょっと! 何してるんですか!」

 凛花は思わず叫んでいた。声はわずかに上ずり、足が勝手に動き出す。恐怖と焦燥が入り混じり、理屈よりも先に身体が男の腕を強く掴んでいた。

 男はゆっくりと振り返った。

 その顔を見た瞬間――凛花は息を呑んだ。

 あまりに整った顔立ち。現実感がないほど整いすぎた美貌。吸い込まれるような瞳に、白い肌、整った唇――まるで物語の中から抜け出してきたような、美しさだった。

 そして、彼の次の言葉が凛花をさらに混乱させる。

「……やっと、やっと会えた……」

 どこか歓喜に濡れたかすれた声が静かに漏れた。

 (――え? 誰? 私、あなたのことなんて知らないのに――)

 凛花の心臓が強く脈打つ。全く見知らぬ男なのに、まるで旧知の人を見るような表情を浮かべる彼。その意味がわからず、凛花の胸に得体の知れない不安が広がっていく。

 男はそんな凛花の戸惑いに構わず、ゆっくりと微笑んだ。

 穏やかで、どこか諦めを滲ませた微笑みだった。

「今度こそ……幸せな結末を」

 そう呟くと、男は凛花の手を強く握り返す。

「――えっ?」

 咄嗟に引き離そうとしたが、遅かった。

 強く引き寄せられ、ぐらりとバランスが崩れ、体が宙に浮く。視界がぐるりと反転し、夜の街が頭上へと逆さに広がっていく。

 風が叫ぶ。耳鳴りのように、血の気が引く音が全身を駆け巡る。

 (やだ……やだ、死にたくない――!)

 心臓が喉から飛び出しそうになる。足が宙を蹴る。もがいても、男の手はしっかりと自分を抱え込んでいた。

 (助けて……誰か――)

 凛花の叫びは声にならないまま、闇の中へと吸い込まれていった。

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