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黒猫との遭遇

Author: 相沢蒼依
last update Last Updated: 2025-08-17 14:31:19

 執筆最中に、どうしてもプリンが食べたくなった僕は、夕方になるちょっと前ひとり、コンビ二まで歩いて行った。

 本当は、文明堂のなめらかプリンが食べたかったけど、お店まで行くのが遠いため、コンビニスイーツで、ガマンすることにしたのだけれど。

「むーっ、結構種類があって、悩んじゃうな。いろいろ買ってみて、郁也さんと食べ比べたら、買い込んでもいけるかも」

 ぶつぶつひとりごちて、かごの中に全種類のプリンを入れて歩く。ついでにシュークリームも買っちゃえ(´∀`)

 お会計を済ませてビニール袋片手に、夕暮れに染まろうとしてる町の風景を、ぼんやり眺めていると、上の方から猫の鳴き声が聞こえてきた。

「ん? 何故に上から声がするんだろ」

 キョロキョロしながら、頭上をよぉく見てみると、目の前の街路樹に黒猫が1匹、こっちを、じーっと見つめているではないか。

「どうしたの? そこから降りられないとか?」

『に゛……ゃあぁん!』

 可愛らしいとはいえない鳴き声で鳴いて、前足をふるふると動かした。

 ――もしかして、僕に向かって飛びつこうと狙ってる?

 金色の目を光らせて、僕の顔を見つめる黒猫の雰囲気が、正直怖かった ((;゚ェ゚;))

 首輪をしているので飼い猫だと分かるんだけど、どうしてこんな高い木の上にいるんだか。

 僕を狙っているのなら――

「分かったよ。こっちにおいで、受け止めてあげるからさ」

 黒猫に向かって手を伸ばすと、

『にゃあぁん!』

 まるで返事をするように鳴いてから、後ろ足で勢いよく、僕に向かって飛びついてくれた。

 しかし勢いがありすぎて、僕の手をすり抜け、着地した場所は、何と頭の上……

 飛びつかれた衝撃たるや、殴られた感じなんですが(汗)

 ふらふらしながら黒猫に手を伸ばしたら、一瞬早く飛び降りて舗道に着地し、僕を見上げてくれた。

『に゛に゛ぁあぁん』

 微妙な鳴き声でお礼? を言うと、一目散に目の前から、消えるように走り去って行く。

「結局僕は、踏み台で終わってしまった……」

 顔を引きつらせながら、帰ろうと歩き出すと――

「すっげぇトコに遭遇できた。ありがとな涼一」

 聞き覚えのある愛しい人の声に、喜んで振り向くと、何故かスケッチブックを手にした郁也さんが、ニッコリと微笑んでいるではないか!

「……えっと。どうしてそこにいるの?」

 他にも聞きたいこと
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