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1-20.銀河に棹さす(1/3)

last update 최신 업데이트: 2025-07-26 06:00:23

 アクセスポイントがずれた件については、伊礼社長が早急に原因調査させると約束してくれた。ゴリゴリバースの障害報告がないので、おそらくVRブース単体の不具合だろうとも言っていた。

家から六道園プロジェクトにロックインできなかったことや原始地球のような別世界に迷い込んだことは、十六夜に影響がある気がして言わなかった。

 その後、VR酔いのような眩暈の症状が出て気持ちが悪くなったので、あたし的には時間はあったけれど鈴風のロックイン制限に合わせて一時間でロックアウトさせてもらった。VRゴーグルを取ると、不思議と眩暈はなくなっていた。

 VRブースをスリープさせて帰り支度をしながら鈴風に聞いてみた。

「今週末、家から六道園プロジェクトにロックインした?」

「いいえ。さっきの子とずっとゲームしてて」

 と申し訳なさそうに答えた。さっきの子って、

〈訪問者様。さようなら ♪ゴリゴリーン〉

 生徒管理AIのセリフとチャイムがよみがえった。どこかで見た瞳。

〈佐倉鈴風様、さようなら。夏波、じゃあね ♪ゴリゴリーン〉

 もう諦めたよ。

 鈴風と二人で廊下を歩いていると開け放たれた窓から風が吹き込んで来た。空は今にも降り出しそうな雲行きだった。生徒用玄関まで来ると、すでに大粒の雨が校庭をぬらし始めていた。

「傘、持ってこなかった」

 予報は夕方から降ると言っていたので午前中は大丈夫と思ったのだ。

「わたし、教室に置き傘あるから取ってきます」

「あ、すぐ止むからいいよ」

 と言いかけたけど鈴風はもう一年生の教室のある廊下へ走り出していた。

 あたしは鈴風を待つ間、玄関の軒下に出て雨が校庭を濡らしてゆくのを眺めることにした。

「万物流転」

 頭に浮かんだ言葉を口に出してみた。あの時、十六夜はあたしの隣に傘も差さずに立っていた。あたしは玄関先のあじさいの葉っぱを一枚取って土砂降りの雨の中に踏み出した。校庭にはすでに雨水の流れが幾筋かできはじめていた。その一つの流れの側に行き、あじさいの葉っぱを浮かべてみる。浮かべた途端その葉は鮮やかな緑色に変わって、万物流転の小川をゆっくりと流れ出したと思ったら強い流
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  • ボクらは庭師になりたかった~鬼子の女子高生が未来の神話になるとか草生える(死語構文)   1-20.銀河に棹さす(3/3)

     暗転。移動の体感。斜面を滑って行く感覚。一瞬またあの原始の地球に彷徨い込むかと不安になったけれど、数秒経った後アクセスポイントの石橋の上にいた。美しく刈りそろえられた植栽。アンジュレーションがf値に調整された青い芝生。さざ波立つ池。中島と須弥山を模した庭石。そこは、さっきロックインした六道園とほとんど変わらぬ景色だった。ただ、州浜だけが違っていた。それは黒白で波紋が描かれ高い波頭が波間に寄せる激しい様を表していた。美しかった。知らぬうちに十六夜は一人でこんなものを仕上げていたのだ。あたしは十六夜を探した。池の上には見当たらなかった。十六夜は水の中であたしを助けてくれた。もしやと思い池の中を覗いてみた。それを見てあたしは怖くなって身を引いてしまった。あたしが目にしたのは果てない底なしの空間だったからだ。空を見上げた。青空のテクスチャーがあるはずの天空は、銀河が流れ幾千万の星が光り輝いていた。それはまさに宇宙だった。池の水はその宇宙を映していたのだった。天と地の銀河と星空。この「元祖」六道園は宇宙の中に存在していた。その時、池の中程から浮き上がってきたものがあった。それはあの水底の石舟でそこにこちらを背にして十六夜が立っていた。池水に棹さしてゆっくりと中島へ漕いでゆく。「十六夜!」 あたしは叫んだ。呼び止めなければ二度と十六夜に会えないような気がしたからだ。けれど十六夜は聞こえなかったらしく、どんどん中島に近づいていった。「十六夜、行かないで! そっちに行っちゃダメだよ」 中島の向こうからまがまがしい気を感じたのだった。思わずあたしは池の中に飛び込んだ。しまったと思ったけれど遅かった。泳ぐ方法を知らなかったのだ。だから藻掻くこともできず星々の間を降下していくしかなかった。太陽系を通り過ぎ、オールトの雲を抜け、超新星爆発やクエイサーの乱舞を横目に見て、オリオン腕に沿って天の川銀河の中心に向かい、巨大ブラックホールに吸い込まれそうになった時、「夏波、手を貸せ」 無意識に伸ばした腕を何かが掴んだ。そしてそのままあたしは水の上に引きずり上げられたのだった。「どうしてここに来られた? 夏波には来られないはずなのに」 石舟の上からそう言ったのは十六夜の声だった。でも、

  • ボクらは庭師になりたかった~鬼子の女子高生が未来の神話になるとか草生える(死語構文)   1-20.銀河に棹さす(2/3)

    「濡れますよ」 鈴風が傘を差し掛けてくれた。「やっぱりもう少しやって帰る」「じゃあ、わたしも何かお手伝いを」 と言ってくれたのを、「ううん。先に帰ってて」 と断ってあたしは鈴風にバイバイした。玄関で上靴に履き替えながら雨の降る外を見ると、傘を差した鈴風がキョトンとした表情でこっちを見ていた。〈♪ゴリゴリーン 夏波、また来たんかーい〉 はいはい。「ロックは厳重にお願いね。他の人が来ても入れないで。鈴風もだよ」〈夏波、何かよからぬこと企んでる?〉「そうだね。悪事を働こうと思ってるよ」〈それはワクワクだね〉「だから、少し黙ってて」〈わかりました。ご武運を〉 いつもよりよくしゃべる生徒管理AIだった。 部室に入るとすぐに左側のVRブースに火を入れた。十六夜が使っている右側のVRブースの不具合を心配したというより、いつもあたしが使っているほうからロックインしないと目的が果たせない気がしたからだ。吸気音の後、ドコドコいう起動音が鳴り始める。ロックイン・OKのサインが点くまでの時間がまどろっこしい。その間に管理用のモニターでここ数日の六道園プロジェクトへのロックイン履歴を確認する。やはり十六夜の記録はなかった。それは織り込み済み。肝心なのはもう一つの六道園、「元祖」六道園プロジェクトの履歴だ。あった。ここ数日、律儀に1時間ずつ。そしてたった今、十六夜はロックインしていた。 「なんとでも偽装できるからな」 伊礼社長のロックイン履歴を見て十六夜が言った言葉を思い出した。もしかしたらこれも偽装かもしれない。ロックイン・OKのサインが点いた。左のVRブースに入り、VRゴーグルをつける。ロックイン先を「元祖」六道園プロジェクトに設定して、操作モニター上のROCK・INアイコンをタップする。「ロックイン!」別に言わなくてもいいのだけれど、なんか出た。

  • ボクらは庭師になりたかった~鬼子の女子高生が未来の神話になるとか草生える(死語構文)   1-20.銀河に棹さす(1/3)

     アクセスポイントがずれた件については、伊礼社長が早急に原因調査させると約束してくれた。ゴリゴリバースの障害報告がないので、おそらくVRブース単体の不具合だろうとも言っていた。家から六道園プロジェクトにロックインできなかったことや原始地球のような別世界に迷い込んだことは、十六夜に影響がある気がして言わなかった。 その後、VR酔いのような眩暈の症状が出て気持ちが悪くなったので、あたし的には時間はあったけれど鈴風のロックイン制限に合わせて一時間でロックアウトさせてもらった。VRゴーグルを取ると、不思議と眩暈はなくなっていた。 VRブースをスリープさせて帰り支度をしながら鈴風に聞いてみた。「今週末、家から六道園プロジェクトにロックインした?」「いいえ。さっきの子とずっとゲームしてて」 と申し訳なさそうに答えた。さっきの子って、〈訪問者様。さようなら ♪ゴリゴリーン〉 生徒管理AIのセリフとチャイムがよみがえった。どこかで見た瞳。〈佐倉鈴風様、さようなら。夏波、じゃあね ♪ゴリゴリーン〉 もう諦めたよ。 鈴風と二人で廊下を歩いていると開け放たれた窓から風が吹き込んで来た。空は今にも降り出しそうな雲行きだった。生徒用玄関まで来ると、すでに大粒の雨が校庭をぬらし始めていた。「傘、持ってこなかった」 予報は夕方から降ると言っていたので午前中は大丈夫と思ったのだ。「わたし、教室に置き傘あるから取ってきます」「あ、すぐ止むからいいよ」 と言いかけたけど鈴風はもう一年生の教室のある廊下へ走り出していた。 あたしは鈴風を待つ間、玄関の軒下に出て雨が校庭を濡らしてゆくのを眺めることにした。「万物流転」 頭に浮かんだ言葉を口に出してみた。あの時、十六夜はあたしの隣に傘も差さずに立っていた。あたしは玄関先のあじさいの葉っぱを一枚取って土砂降りの雨の中に踏み出した。校庭にはすでに雨水の流れが幾筋かできはじめていた。その一つの流れの側に行き、あじさいの葉っぱを浮かべてみる。浮かべた途端その葉は鮮やかな緑色に変わって、万物流転の小川をゆっくりと流れ出したと思ったら強い流

  • ボクらは庭師になりたかった~鬼子の女子高生が未来の神話になるとか草生える(死語構文)   1-19.水底の石舟(3/3)

     その時だった。海底の白い砂を蹴立てて石舟が近づいてきたのだ。その船は大徳寺の庭園にある石舟のように人が跨げるほどの小さなもので、ゆっくりと、すごくゆっくりとだがあたしの方に向かってきていた。「ここです! 助けてください」 出せる限りの声を振り絞って叫んだ。それでもその石舟は意地悪するように、じりじりと進んでくる。「急いで! 息が続かない!」 と言った時、まるで石舟の中から現れたように舳先に顔を見せたのは、「夏波! 慌てんな」 ニコニコ笑顔の十六夜だった。「息が苦しいの。もう死ぬかもなの」 ようやく石舟が側まで来て、十六夜が差し伸べた手にしがみつく。「声が出るってことは息してるってことだよ」 確かに。水の中だけどあたしってば息してた。 あたしは十六夜に引き上げられてその後ろに跨がった。そして十六夜の背中にしがみついたのだった。「ありがとう。おかげで助かったよ」「夏波一人でも大丈夫だったさ」「あたしだけだったら勝手に窒息死してた」「そんなことないよ」「なんで?」「だって、ボクらは沈まない」 突然暗転した。猛スピードでどこかへ移動する感覚があった。いや、ずれていくと言った方がよかったかも。そのずれる感覚が無くなり明るくなったので目をゆっくりと開けた。遥か上空に青いテクスチャーの天蓋が見えた。これが約束通りリアルな天空になるのはいつのことだろうと考えていると、視界に見慣れた顔が現れた。「夏波センパイ、大丈夫ですか? ずっとうなされてて」 鈴風だった。「大丈夫だよ。十六夜が助けてくれたから」「十六夜センパイの夢を見てたんですね。それで十六夜、十六夜って」 とあたしから誰かに目を移した。「藤野さん。起きられますか?」 また別の知った顔が現れた。青サングラスのちょいハゲメタボおやじ、伊礼社長だった。「ここはどこですか?」「六道園プロジェクト内ですよ」 ゼンアミさんの声だった。「よかった」 途中遭難したみたいだったけれど

  • ボクらは庭師になりたかった~鬼子の女子高生が未来の神話になるとか草生える(死語構文)   1-19.水底の石舟(2/3)

     VRブースにロックイン・OKのサインが点いた。部活の時はいつも十六夜が使う右側のVRブースに入ってゴーグルを付け、六道園プロジェクトにロックインする。目の前が暗転して、暗転して、暗転して、おや? いつもなら一瞬でアクセスポイントの石橋の上にいるのになかなかロックインが完了しない。こんなに「距離」を感じたのは初めてだった。ゴリゴリバースのメンテの影響なのだろうか? それでも家からロックインした時に初っぱなからはじかれたのとは違って、少しずつ中に入っている感覚があった。それでVRゴーグルを付けたまま待っていたのだけれど、少し不安になって、「鈴風、大丈夫?」 と内部マイクを使って呼びかけてみた。ところが鈴風の返事がない。マイクが効かなくても隣のブースにいて聞こえないはずはないのだが。耳を澄ますと何やら水が打ち付ける音がしている。匂いを嗅ぐとなんとなくきな臭くも感じる。火事!? VRブースが火を噴いたんだ。あたしは慌ててVRゴーグルを外して状況を把握しようとした。ゴーグルを取って驚いた。そこは部室のVRブースではなく、暗い海の波間だったからだ。あたしは首から上だけを出して波間に浮いていたのだった。空を見上げると赤黒い雲が覆っていた。見渡す限りの黒い波は、まるで原始の海のようだった。電光を伴い万物を空に吸い上げるような巨大な竜巻が波間の向こうに見えた。それが一本ではなかった。何本も空と海とを繋いでいた。まるで火龍の群れが天を目指して上昇しているかのようだった。「鈴風!」叫んだが返ってくるのは波の音ばかりだった。波間に浮かびながらも、ここはいったいなんだと考えた。夢にしては体験解像度があり過ぎた。髪も着ているものも濡れていて水を被った感覚がある。味も塩辛い。未知のローカルバースに迷い込んだとするのが一番もっともらしいと思えたが、これほどのリアリティーが実現できるのはヤオマンHDが管理するゴリゴリバースだけだと思い直した。ならば、ここはゴリゴリバースのどこかか。鈴風もこことは別の場所に飛ばされたのかも知れない。でも、どうやってもとのVRブースに戻ればいい? ブースでなくても六道園プロジェクトにロックインさえできれば。 そろそろ落ち着いていられなくなってきた。立ち泳ぎに疲れてしま

  • ボクらは庭師になりたかった~鬼子の女子高生が未来の神話になるとか草生える(死語構文)   1-19.水底の石舟(1/3)

     十六夜のことが気になってリング端末で連絡を取ったけれど反応なしだった。それで家のVRギアで六道園プロジェクトにロックインして十六夜がいないか確認しようとしたら、ゴリゴリバースがメンテ中なのか拒否られっぱなしだった。結局、十六夜の生存確認は月曜日に園芸部の部室からすることにした。園芸部のVRブースは、ヤオマンHD本社のシステム管理用高性能機種と同じもので大抵の障害なら余裕でスルーできるから、何かあってもプロジェクトへのロックインくらいは出来るに違いないから。 月曜朝。あたしはバイトが休みなので冬凪に飲み物とお弁当を用意して送り出した後、一時間くらいして学校に向かった。ミユキ母さんは夏休み初めから自分の調査フィールドに入っていて不在なので戸締まりをちゃんとしたか確認して出る。 宮木野線の汽車の車内はクーラーが効いていて快適だった。車窓から見えるのは、田んぼと畑と田んぼと畑と田んぼと畑と田んぼ。たまに竹林。ピーカンのお日様に照らされて暑そうだ。あの暑さの中で冬凪はじめユンボブラザーズやティリ姉さん、もとい江本さんたちは働いているかと思うと後ろめたい気がした。一日やったくらいでこんな気持ちになったバ先はこれが初めて。 やっと学校に着いた。辻バスを降りてからの道のりだけで大汗を掻いてしまった。ハンドタオルで汗を拭きながら部室の前に立つ。〈♪ゴリゴリーン。夏波、来たんだ〉 あー、うざい。生徒管理AIを再教育出来るんなら、あたしは一番に作法を教えるね。「夏波センパイ、来たんですか」 鈴風までかよ。「じゃ、スズ、あたし部室に戻るね。バイ」 もう一人いた子がそそくさと出て行った。〈訪問者様。さようなら ♪ゴリゴリーン〉マスクのあの瞳、見覚えがあるような。制服は辻女のだったのに生徒管理AIが名前を言わないってどういうこと? 「夏波センパイ、夏休みはもう来ないかと」「バ先のシフトが変わってね。月火と来ます」「そうなんだ」 なんか残念そう。あたしってば鈴風に嫌われてたのかな。「あ、VRブースの火、入れますね」 と二台のVRブースの起動スイッチを入れてくれた。ドコドコと起動の音が響く

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