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六の蝶〜なんか妖怪が神社、掃除してるんですけど〜

ผู้เขียน: 士狼かずさ
last update ปรับปรุงล่าสุด: 2025-11-25 22:16:40

 「なんか……妖怪が神社、掃除してるんですけど」

 はーい、あたし秋華!

 絶賛、気分は闇堕ち中〜!

 水鏡さまに「いらない猫」扱いされて傷心のところを、千年さまにお姫様だっこされて、牛車に乗せられ。今、晴明神社に着いたとこなの♪ もうなんか傷つきすぎて、逆に高まってきたわー。

 今宵からあたしは、ここ晴明神社で暮らすらしい。

 はあ……数奇な運命もあるものだわ。

 なんとも言えぬ傷心のまま、神社の玉砂利を踏みしめる

 ふと正面をみたら

 妖怪、うじゃうじゃいるんですけど────っっ!

 神社に着くまでは、あやかしが跋扈するなんて微塵も思えなかったのに。ここ、晴明神社の鳥居をくぐったら、めっちゃ妖怪ウロウロしてる────!!!

 これって安倍晴明さまの「式神」よね?

 陰陽師は妖怪と契約を結び、使役すると聞くもの。

 式神は、自分の代わりに戦ったり

 雑用をしてくれるって、噂があるけど。本当なのかしら?

 ふと見上げれば、夜の帳が降りていた。

 いつの間にか藍色の空に、三日月が瞬いてたの。

 今宵から、新しい生活が始まるんだもんね。もう水鏡さまの所には、戻れないのだし……。少しは元気出さなくちゃ! そんな風に思い直していると

 目の前に、河童がいた。

 縁側できゅうり、ボリボリ食べてるんですけど……っ!

 え、これも式神なのかな!?

 瞳は虚無だ。緑のキュウリがボリボリボリボリ、滑るように吸い込まれていく。

 あたしあの河童さんと仲良くできるかしら……心配。

 うーんうーん。なんとも言えない気分のまま、台所を横切ると

 鬼童丸きどうまると呼ばれし、鬼の式神がいたの。

 包丁を握り、魚をタンタンタンターーンと華麗にさばいている。

 これって、世にいう剣豪なのかな? 

 包丁で斬る速さが尋常じゃないわ。その横では桜の鬼っぽいのが、強飯こわいいっていうゴハンを飯皿に盛りつけてるし。

 ここの妖怪みんな凄い! 働き者な気がするわ。

 でもこの屋敷、妖怪ばかりで人はいないのかしら?

 晴明さまと千年さま以外、妖怪ばかりなのかなあ。

 廊下から台所を呆然と見つめていると、晴明さまが声をかけてくれた。

 「おお、秋華どの。腹が減ったであろう〜今から夕餉ゆうげにいたそうかの」

 「え、あ……はい」

 そういえば、お腹すいてたっけ。

 あたしは広すぎる畳に戸惑いながら、あらためて部屋の様子に視線をうつした。壁際にそびえ立つ

龍の屏風。その真ん前に猫ほどの大きさの、小さな青龍が寝そべっていた。

 「え、かわいい〜!」

 ちびちびの龍は、畳の上でスウスウ寝息を立てている。

 かぐわしい白檀の薫り。

 長い机の端に、あたしはそっと腰を下ろした。

 「さあ、いっぱい食べてくれ! ここにいる式神たちが作ってくれたご飯だ」

 千年さまが花のような笑みで、あたしにお魚いっぱいのご飯を渡してくれた。鯉を煮た料理かしら? とってもご馳走だわ。食べようとすると、小鬼の少女が湯漬けを渡してくれたの。

 「あたいが作ったの。ねえ、食べて」

 「ありがとう」

 小鬼は緋色の着物を纏い、髪はおかっぱ。

 前髪はパツンと切り揃えられていた。その真紅の瞳が、あたしを不思議そうに見つめる。

 「お姉ちゃん、いっぱい泣いたの?」

 「え……」

 心まで見通すような透明な瞳に、一瞬とまどう。

 彼女はあたしの隣にストンと座ると、優しく目を細めた。

 「あたいはさとり。少しだけ過去が視えるんだよ〜。お姉ちゃん、哀しかったね」

 「え、視えるって」

 ひょっとして水鏡さまとの事、見えたってこと? 

 驚いて彼女を凝視していると、覚が頭をポンポンしてくれた。ちいさな紅葉みたいな手が、あたしの髪をほわほわ撫でる。

 「もう、戻ってこないと思うよ。その人」

 「え……」

 「心を、夕月夜って妖に奪われたんだね。ずっとここに居ていいんだよ」

 まるで……母親が子どもを励ますみたいだ。

 ポンポン。

 ポンポン。

 ポンポン。

 あたしが子猫の頃も、水鏡さまがこうやって背中をポンポンしてくれたっけ。

 縁側でまどろんでいたら、また抱っこしてくれないかな……。

 ねえ、安倍晴明ってさ、すごい人だね。

 この世には悪しき妖怪ばかりじゃなくて

 優しい妖怪も……いるんだって事、教えてくれる。

 「ありがと。これも食べるね」

 湯漬けをひと匙すくってみる。温かい汁が、心まであたしを満たしていく。やさしい味だわ……。その刹那、バタバタバタバタと派手な足音がして、あたしの眼前に座る誰かが見えた!

 「元気でると思ってさ、これ持ってきたぞーーー!」

 くしゃくしゃ笑顔の千年さまの手には、でーーーっかいお札が握られていた。紅い紙に、漆黒の文字。何か読めない漢字がウネウネと蛇のように記されていたの。

 「え、何ですか、それ!?」

 「お札! 厄除けの凄いヤツ。夕月夜もここには来られないと思うぞ〜今宵はこれを寝る部屋に貼って、ぐっすり眠るといい!」

 「ぷっ」

 かわいすぎる……っ!

 あたしは思わず吹き出した。

 だってなんか元気出してほしいんだって、そういう想いが伝わってきたから。

 これが恋の始まりだなんて、まだ気付かずにいたけれど────

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