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ノウェルの心-2

Penulis: よつば 綴
last update Terakhir Diperbarui: 2025-03-29 06:00:00

「ヌェーヴェル····あぁ、僕の愛しいヌェーヴェル。あの2人がいないうちに···さぁ」

 俺の頬には手が添えられ、ゆっくりとノウェルの顔が近づいてくる。

「なっ、何だよ!? やめろって····」

 俺は必死にノウェルの胸を押し返す。だが、まったく敵わない。

「何って····僕と愛を育むんだよ。照れないでおくれ」

「はぁ!? お前っ、狂ってんのか! 照れてないわ!! はーなーれーろっ!」

 俺は、全力で押し除けようと試みたが微動だにしない。酔っている所為なのか、血走った眼が恐ろしい。

「こんの馬鹿力がっ!」

「ヌェーヴェル····僕はね、ずっと我慢してたんだよ? 君が僕に振り向いてくれない事も、あんな吸血鬼共に君が弄ばれている事も、僕にもアイツらと同じ吸血鬼の血が流れている事もっ!!」

 ノウェルは歯を食いしばりながら、自らの首を締めて爪を立てる。

「お前、知ってたのか。いつから····」

「君が10歳になったあの日、君の誕生会で、だ。君が薔薇の棘で指を怪我して、流した血を僕が舐めただろう」

 そんな小さな出来事などいちいち覚えていない。そう言ってやりたいのは山々なのだが、切羽詰まったコイツの表情を見ていると言葉が詰まる。

「その瞬間だよ、心臓がドクンと跳ね、醜悪な欲求を覚えたのは。君の首筋に喰らいつき、その血を全て啜ってしまいたいような····そんな激しい気持ちが湧き上がったんだ」

 俺の所為じゃないか。とんだ失態だ。幼い俺は、それに気づけなかった。

 けれど、今なら分かる。こいつの前で、誰よりも俺の血を見せてはいけなかったのだ。

「まさか、そんな子供の

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     ノーヴァは優しいキスを繰り返す。徐々に激しさを増し、早速約束を破って大人の姿になった。 そして、大きくなった手で俺の頬を包み口内を隈無く舐めまわす。「んっ、おま····大人になるなって··んんっ」「ん······ふぅ。こっちだと、ずっと奥まで犯せるもん。それと、血···もうガブ飲みはしない。これからは、ヴェルを危険な目に合わせるのは控えるよ」 優しさを見せているつもりなのだろう。俺に譲歩すると言いたげなノーヴァを愛らしいと思う。「控えるという事は、やるときゃやるんだな」「だってヴェル、好きでしょ? 死ぬほど犯されるの」「······嫌いじゃない」「あははっ。素直じゃないなぁ」 ノーヴァは再び俺の口を塞ぐ。ケツを弄っていたヴァニルは、潤滑油《ローション》が乾かぬうちに滾って反り勃ったモノをねじ込んだ。「んぅ゙っ、ん゙ん゙ん゙っ!!! んはぁっ、デカ····待っ、デカ過ぎんだろ······」「デカいの好きでしょう? ほら、もうイきそうじゃないですか。まだ挿れただけですよ」 確実にいつもより大きい。圧迫感が凄いのだ。なのに、容赦なく奥へ進んでくる。「ひぅっ、あぁっ!! ふっゔぁん····アッ、やだ、奥待って」「大丈夫。まだ奥は抜きませんよ。もう少し、ここを解してからです」 ヴァニルは下腹部を揉みながら、期待を持たせるような事を言う。そして、ぱちゅぱちゅと音を立てて俺を煽る。「ヴァニル····

  • ヴァールス家 嫡男の憂鬱   黙って聞いてろ-3

     集まった視線に、俺は直観的な苛立ちを覚えた。「な、なんだよ」「お前がそれ言うの? ヘタしたら、ヴェルが誰よりも我儘だし欲深いよ」「そりゃまぁ、俺だしな。それくらいの気概がないと、ヴァールスの名を継ごうなんて思わないだろ」 俺の言葉に、全員が耳を疑ったらしい。揃いも揃って、イイ面がマヌケに口を開けている。「貴方、もしかしてまだ継ぐ気なんですか? てっきり、私たちを選んだ時点で諦めたものとばかり····」「諦めてたまるか。嫁の件は父さんに上手く言って白紙に戻した。子供の事は追々考えるからいいんだよ」「そういえば、よくあのパパさんを言いくるめられたよね。なんて言ったの?」「····内緒だ」 うまい言い訳が思い浮かばず、バカ正直に『好きな人ができたから見合いは無かったことにしたい』と、子供の駄々みたいな理由を告げただなんて言えるか。しかし、あのクソ親父がよくそれで許してくれたなと俺も思う。 正直、もう出家覚悟で言ったのだ。それだけは、絶対にこいつらにはバレないようにしなければ。「貴方が言いたくないのなら聞きません。私達を優先してくれた事実だけで充分です」「そうだね。まぁ、ボクは暇だし、我儘坊やの復讐手伝ってあげてもいいよ」「私も、協力しますよ」「あぁ、頼りにしてるよ。って··おいこらノーヴァ、誰が我儘坊やだ!」 ノーヴァとヴァニルに手伝ってもらえば、いとも容易く父さんを屈服させられるだろう。勿論、物理的に。ヴァニルの場合、まずは容赦なく精神的に殺《ヤ》りそうだ。 協力してもらえるのは助かるし、頼りにしているのも本心だ。けれど、なんだこの漠然とした不安は。 この2人の際限のなさ故だろうか。あまり関わって欲しくないのが正直なところだ。「あの、ちょっといいですか。ヌェーヴェルさんに聞きたいんですけど」「なんだ、イェール」「その復讐ってのを達成したら、アンタは吸

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