เข้าสู่ระบบ傲慢な令息と、天使のような新入生。 わからせる側と、わからされる側。 その境界が溶けていくとき、支配は愛に変わる。 プライドと支配を奪われ、逆転関係へと堕ちていく―― 学園支配者のわからせられBL。 やがて、それは両片思いの溺愛へと変わっていく。
ดูเพิ่มเติม俺は、レオン・ヴァレンタイン。
聖ルミナス魔導学園の支配者──いや、正確にはこの国の貴族たちが通う、世界屈指の名門魔導学園を支配する「黒き獅子」と呼ばれてきた。
教師でさえ、俺の一言で配置が変わる。 朝の食堂の献立から、夜の魔導演習の順番まで。 この学園は──俺の手のひらで回っている。 それが当たり前だった。貴族であることにあぐらをかいていたわけじゃない。俺は誰よりも勉強し、誰よりも魔導を極め、誰よりも人を支配することに誇りを持ってきた。実力の伴わない権威など意味がない──だからこそ俺は、誰にも隙を見せず、いつも完璧であろうとしてきた。
模擬戦では三年連続で主席。魔法理論の論文はすでに王立魔導学会に所蔵され、数十の貴族派閥が俺を中心に結びついている。
笑われたことなど一度もない。 膝をつかせてきたのは、他人のほうだ。なのに、黒髪の新入生──ハル・アマネが現れてから、胸の奥がざわついて仕方がない。彼は平民奨学生。ただの庶民のはずだったのに、あの笑顔ひとつで、俺が築いた支配を崩しつつある。教師たちは彼に好意的になり、女生徒たちは彼に夢中になり、貴族の息子たちですら彼の言葉に耳を傾ける。わずか一ヶ月で、学園の空気は半分、彼のものになってしまった。
「天使」なんて呼ばれているが、俺には毒にしか見えない。……いや、本当は最初からわかっていた。あいつは毒だ。
だからこそ、惹かれてしまう自分がいる。
いや、そんなはずはない、気のせいだ――入学式の日、講堂のステージに立つハルを初めて見たとき、時間が止まった。
俺が審査したわけでもないのに、平民の少年が学園に入ったというだけで腹立たしい知らせだった。 だが、黒髪が光を弾き、透明な肌と笑顔がステンドグラスの光を浴びるその姿は、天使の降臨にしか見えなかった。 胸の奥が、不本意に熱くなる。 視線を外したいのに外せない。 心臓がうるさくて、指先が痺れた。(なんだ、この感覚は。苛立ちか、それとも──惹かれている?)
「音楽室に呼び出せ」
俺はわざと冷たい声で命じた。
脅して、ビビらせて、あの天使の笑顔とやらを大人しくさせる──そのつもりだった。 本気で体を傷つける気はない。 ただ、あの綺麗な顔からプライドだけを剥ぎ取ってやりたかった。それなのに──。
旧校舎の音楽室。湿った木材の匂いが、埃とともに鼻腔にまとわりつく。
窓から差し込む月光が、黒光りしたピアノの表面を鈍く照らしていた。俺はそのピアノにもたれ、肘をついたまま眺めている。
部屋の中央では、平民の少年──ハル・アマネが、制服の襟を乱されながら立たされていた。サミュエルとギルが、そいつの腕と肩を押さえ込んでいる。
ノアが襟をつかみ、顎を無理に引き上げさせた。 白く細い喉が月光に浮かび上がるたび、胸の奥が妙にざわつく。……ちっ、平民のくせに。なんだよ、このざわつきは。
「天使だと? 笑わせんな、ハル・アマネ」
ノアが冷ややかに嗤う。声には、貴族らしい品格にまぎれた毒が滲んでいた。「どこの下郎に尻尾振って、この学園に這い上がってきたんだ? その清純ぶった顔が涙で歪むとこ、じっくり味わってやりたいね」
その言葉に反応するように、ハルの瞳がわずかに鋭く光る。
けど、ノアの指が襟から首筋へと滑り、まるで高価な磁器でも試すみたいに、軽く圧をかける。 ハルの華奢な肩が小さく跳ね、月光に照らされた肌の白さがいやに目につく。「おや、ハル君」
サミュエルが冷笑を浮かべた。「平民にしては、ずいぶんと肌が滑らかだ。処女? それとも、誰かに可愛がられた後かな?」
ギルがしゃがんで、ハルの顎を指で持ち上げる。
「抵抗しても無駄だよ」声音はねっとりと絡みつくようで、ぞっとするほど静かだった。
「こんな場所に迷い込んだ平民が、俺たちの遊び相手にならないわけがない。……どんな声で鳴くのか、試してみようか」俺は部屋の隅、古いピアノに肘を預けてその様子を眺める。
口元には貴族らしい余裕の微笑を貼りつけているが、内心、ハルの顔立ちの良さと、震える喉元が引っかかって仕方ない。「ふん、お前たち。ずいぶん楽しそうだな」
一歩前に出て、ハルの顔を覗き込む。……近い。 平民のくせに、その目の奥に何か、底が見えない気配がある。 引きずり込まれそうな、得体の知れない何かが。「この平民、確かに悪くはない体してるな。処女かどうかなんて……試してみりゃ、すぐ分かるだろ」
軽薄な笑いを浮かべてみせたつもりだったが、声の端が掠れているのが、自分でもわかった。なんでだ。なんで、こいつから目が離せねぇ。
ハルの唇が微かに動いた気がして、俺の指が無意識にそいつの顎に伸びそうになる。
「なぁ、ハル。薄汚い出自は忘れてさ……いい子にしてみろよ」
囁くように言いながら、わずかに笑う。「それとも──俺だけでいい、なんて言ってみるか?」
冷たい皮肉のつもりだったのに、喉の奥が熱い。
口にした言葉はたしかに冷ややかだった。けど、吐き出すたびに、自分の内側に熱がこもっていくのが分かる。 くそ、何が平民だ。なんで俺が、こんな……。その瞬間だった。
ハルがふわりと微笑んだ──と、思った刹那、いつのまにかサミュエルとギルの拘束を解いた腕が、俺の首筋に回され、強引に顔を引き寄せられた。そして、唇が触れた。
軽いものじゃなかった。驚くほど、濃くて深くて、熱いキスだった。
舌がすぐに割り込んできて、歯の裏を撫で、上顎をくすぐり、俺の舌を絡め取る。「──っ……」
腰が抜けそうになる。目の奥が痺れ、頭が真っ白になる。
ただ唇が重なるだけじゃない。内側をまさぐられ、息を奪われ、逃げ場を塞がれていく。 音がする。ぴちゃっ、くちゅ……と、生々しい音が、俺たちの口のあいだから零れた。 理性が、じわじわと溶けていく。──俺は、たしかに今、口で犯されている。
「……レオン。とろけそうな顔して」
低く囁く声が、耳の奥に溶けた。
唇を離したハルの瞳が、まるで何かを見透かすように笑う。 その笑顔を、俺は一生忘れない。──あの瞬間からだ。
黒き獅子が、天使に堕とされ始めたのは。
学園祭から数日後。 午後の柔らかい光の中、レオンはソファの端で医療書を読んでいた。 静かにページをめくっていると── 隣にいたハルが、そっと肩に頭を預けてくる。「……ハル。なんでくっついてくるんだよ」「レオンが読んでると、触れたくなるんだよね」「理由になってねぇっての……」 そう言いながら、 レオンは肩をすくめて本に視線を戻す。 ──が。 ハルはレオンの腰に手を回し、 少しだけ引き寄せる。「おい……っ、お前……近いって……!」「嫌?」 低く、綺麗な声で問われて、 レオンは一瞬だけ言葉を失う。「……別に、嫌じゃねぇけど……」 その反応を見て、 ハルは満足げに微笑み、 レオンの髪を指先で軽く梳いた。 レオンの耳が赤くなる。「……ほんと、お前……」「レオンが可愛いせいだよ?」「可愛くねぇ!」 そんな、どこか甘い言い合いの最中── コン、コン。 どこか沈んだノックが響く。 二人が同時に顔を上げる。 扉を開けると、 金髪の弟──ルカが立っていた。 目が赤い。「……兄上」 声は震えていた。「ルカ。どうしたんだよ」 レオンの言葉が少しだけ優しくなる。 ルカは唇を噛んで、 ぽつりと告げた。「……父上に……期待外れだと……。兄上に負ける俺には、侯爵の座は継がせられないと……」 その瞬間、 レオンの肩がわずかに揺れた。 ──わかる。この痛みがどんなものか。 自分も、 父の期待に応え続けてきた。 誉められるため。 見捨てられないため。 自分の居場所を失わないため。 逆らえたのは、 あの日──勘当された時、ただ一度だけ。 だからこそ、 ルカの涙は、自分の過去を刺すように痛かった。「……なんだよ、それ……」 すぐ後ろで、 ハルが静かにルカを見つめる。「ここに来たんだね、ルカ。偉いよ」 ルカは堪えきれず涙をこぼした。「……兄上に……会いたかったんです……」 レオンは迷いながらも手を伸ばし、 そっとルカの頭に触れた。「……泣くなよ。 お前は賢いし、魔力も強い。 侯爵にも、ちゃんとふさわしい。 ……まぁ、ちょっと泣き虫だけどな」 横でハルが言う。「レオン。行こう」「……どこに」 ハルはレオンの瞳をしっかり見つめて言う。「ルカを傷つけた人のところだよ。 レオンは、
学園祭の照明が落ち、観客が少しずつ帰り始める。 ふたりきりになった通路で、ハルがふと思い出したようにポケットを探る。「そういえばね、ユーノが戦闘で使った触手魔法陣を教えてくれた──レオン先輩専用に調整済みって」「……は? おい、何勝手なもん渡してんだよあいつは」「あの双子、研究熱心だよね」「熱心じゃねぇよ! やめろ! 試すとか絶対──」 ハルは一歩だけ近づき、レオンの手首をそっと掴む。 その距離の詰め方が、ずるいくらい優しい。「ねぇ、レオン。ほんの少しだけ……試してみてもいい?」「だめに決まってんだろ! 何言って──」 ハルがレオンの顔を見つめる。 揺らぎも迷いもない、静かで真っ直ぐな光。「……君が好きだよ。 誰よりも君を大切に思ってる。 愛してるから、君にだけ使いたいんだ」 レオンの呼吸が止まる。「あ……っ、お前……また、そういう……」 視線を逸らして、口を噛む。「……だめだっつってんのに…… 愛してるからなんて言われたら……俺、断れねぇだろうが……」 その声は弱々しくて、悔しそうで、でもどこか甘かった。 ハルの手が、そっとレオンの頬に触れる。「じゃあ……いいんだね?」「……っ…… ……バカ。ほんとにバカだなお前…… ……好きにしろよ」 小さく呟いたその言葉に、 ハルは静かに微笑んだ。「うん。君の“いいよ”、ちゃんと受け取った」 レオンはさらに赤くなり、仰ぐように眉を寄せた。「……だからそういう言い方すんな……っ 心臓に悪いんだよ……」 ハルは嬉しそうに、指先でレオンの髪を整えた。「大丈夫。今夜は、君が嫌がることは何もしない。 でも……君が求めるなら、全部するよ」 レオンの喉がひくりと動く。「……そういうとこ……ずるい……」 ふたりの影が、暗くなり始めた学園の廊下で静かに重なる。*** そしてその夜。 ──ベッドに押し倒された瞬間、ハルのキスは許可すら与えず、レオンを飲み込んだ。 軽く触れた唇が、そのまま深く沈む。 舌が口内の奥を探り、上顎をなぞり、逃げる隙を与えない。「……っ、ん、んむ……っ♡」(ちょ……ま……っ……息……全部……奪われ……) ハルのキスは甘くない。支配だ。 唇も舌も完全に捕まれる感覚で、抗えば抗うほど舌が絡みつく。 腰が勝手にきゅっと動き、ハルの膝
その瞬間── 床の魔法陣を走っていた光の線が、一斉に逆流を始めた。 双子からレオンへ向かっていた感応ラインがふっと途切れ、 行き先を失った光は、流れを巻き戻すように方向を変え、 すべてハルの足元へ吸い寄せられていく。 まるで、重力の向きだけが静かに裏返ったかのようだった。 《感応干渉術式》──その核心が、別の一点へ強制的に移る。「っ……な、に……!?」 ユリウスの声がかすれ、ユーノが耳を押さえる。 双子の足元の魔法陣が、光の軌跡ごと裂けるように乱れ、 陣の縁ではバチッと細かな魔素が弾けた。 レオンは戦闘姿勢を崩しかけ、胸を押さえる。 ハルはその隣で、目を閉じ──静かに立っていた。 ──すべて、受け入れるように。 ハルの胸元から、淡い金の粒子が呼吸に合わせてふわりと広がる。 炎でも風でもない。 湖に一滴が落ちて、水面を静かに変えるような、濃くて静謐な波。 その波が双子の術式に触れるたび、光の筋がねじれ、 音もなく押し流されていく。 ユーノが、肩をびくりと震わせた。「……えっ、なんで……兄上……感応、ずれてるよ……!」 彼の身体を取り囲んでいた術式光が、パリンと割れたように弾け、 一瞬で逆流を始める。「反応域が……こっちに……! 偏差が高すぎる……っ!」 ユリウスの顔色が変わる。「……ハルに術式を乗っ取られている。──干渉中心が、切り替わった」 その言葉の直後、 双子を中心に回っていた光の輪がカチリと音を立てて位置を変え、 ハルの周囲で新しい中心となる環が組み直された。《感応干渉術式》の核が、静かに──しかし決定的に、すり替わった。 本来、中心にあるべきは双子だった。 レオンの心を読み、偏差を増幅させるために。 だが術式は読み間違えた。 ……想いの、重さを。 強すぎる愛が、魔術の中枢に介入した。 干渉の中心がハルへと移った瞬間── 片想いの側が、反動をまともに浴びる。「っ……あ、あああああッ……!」 最初に悲鳴をあげたのは──ルカだった。 足元の陣が暴走し、光が跳ねる。 双子からレオンに向かっていたラインが、ハルへ切り替わる瞬間、 ルカの胸に繋がっていた感応糸は、一度だけ強い震えを見せて霧散した。「やめて……♡ なに……これ……♡ 僕は……っ、兄上を……っ、ただ……♡♡」 両手が震
(兄上は、あの男に抱かれて、微笑んでいた) 胸に焼きついたあの夜の光景が、脳裏をよぎる。 首筋の痕。繋がった指。喘ぐ声。 ──そのすべてが、ルカ=ヴァレンタインの心を燃やしていた。(奪われたんだ。僕の理想も、家族も……全部) 握る剣の柄に、力がこもる。 礼式用とはいえ、実戦さながらの魔導強化剣。 構えは完璧。体勢も隙がない。 だが──心は、それ以上に剥き出しだった。 「始め!」 開戦の号令が響いた瞬間、ルカは地を蹴っていた。 剣を水平に構え、一気に距離を詰める。 その突きは、迷いがなかった。 感情のすべてを剣に乗せて――兄の心臓を刺し貫くような勢いで。 しかし──「……っ!」 次の瞬間、甲高い金属音と共に、その剣は真横から打ち払われた。 ルカの目に、冷静な蒼の瞳が映る。 レオン=グランディールは、一歩も退かずにそれを受け止めていた。「速ぇな、でも……読みやすい」 乾いた声とともに、レオンが距離を詰める。 踏み込み、低く構えた剣が、斜め下から抉るように跳ね上がる。(……読まれてる!?) ぎりぎりの防御。だが、そのまま押し込まれる。 一手、二手、三手──斬撃と刺突が、矢のように連なる。(くそ……っ!) ルカは跳び下がって体勢を立て直すが、観客席には既にどよめきが走っていた。 ──序盤、優勢なのはレオン。 動きに無駄がなく、冷静で、迷いがない。 レオンの足運びは、貴族の華やかさではない。 黙々と積み上げた者だけが持つ精度だった。 そしてレオンは、ほんの一瞬だけルカを見つめ、淡く言った。「……お前の剣。執念だけじゃ届かねぇよ」 その言葉に、ルカの胸が、ひどく軋んだ。***(──っ!?) 瞬間、レオンの視界がぐらついた。 足元が揺れたわけじゃない。 風が吹いたわけでもない。 それでも、身体の芯がぞわりと熱を持って、 喉の奥が勝手に、息を呑んだ。(な、んだ……これ……) 次の一手に入るはずだった脚が、遅れる。 剣がわずかにぶれる。 そこへ、ルカの刃が鋭く差し込んできた。「──!」 かろうじて防いだが、タイミングが合わない。 身体が、どこか……重い。(違う、これ……熱い……?) 背筋を、見えない何かが這い登っていく感覚。 肌の上に、誰かの視線が直接触れてくるような、妙な震え。