Beranda / BL / ヴァールス家 嫡男の憂鬱 / 武器商のタユエル-2

Share

武器商のタユエル-2

Penulis: よつば 綴
last update Terakhir Diperbarui: 2025-04-06 06:00:00

「で、俺に血を吸わせろと?」

「いや、人工血液を少し分けてもらえないだろうか。僕が自覚している事は、ヌェーヴェルとあの2人以外知らないだろう。だから、君にしか頼めなくてね。それに、君に負担をかけるのは嫌なんだ」

 こいつらは揃いも揃って····。

「バカかお前は。ほら、飲め」

 俺は襟を開き、首筋を差し出した。

「なっ、何をしているんだい!? やっ、ダメだよ。君の血は吸わない。際限なく吸ってしまいそうだから」

「限界だと思ったら、殴ってでも止めてやるよ。お前がお母上のように摂食障害にでもなってみろ。隠し通せないだろう」

「ヌェーヴェル····本当にいいのかい?」

「俺が吸えと言ったんだぞ。俺だって、お前を大切に思っているんだ。愛だの恋だのではないがな!」

 頬が熱くなった。我ながらアホらしいと思う。

 ノウェルはおずおずと俺の肩を押さえ、首筋にそっと牙をあてがう。そして、グッと食い込ませると、ノウェルは初めて人間の血を啜った。

 泣きながら、美味そうに吸い続ける。こいつの心情は計り知れんが、少し憐れに思ってしまったのは失礼だっただろうか。

「んっ、ノウェル、もういいだろう····そろそろ、やめ····んぁっ」

「んくっ、んっ、んっ、ぷはぁ····ごめんよ、ヌェーヴェル。もう少しだけ····喉の乾きが癒えないんだ」

「待て、も、無理だって····はぁ··ん····」

 ダメだ。目が回ってきた。殴って止めないと。だが、力が入らない。

「ノウェル、その辺でやめておきなさい。まったく貴方は&middo

Lanjutkan membaca buku ini secara gratis
Pindai kode untuk mengunduh Aplikasi
Bab Terkunci

Bab terkait

  • ヴァールス家 嫡男の憂鬱   今暫くこのままで-1

    「ノウェル、ヌェーヴェルの血は美味しいですか?」 ヴァニルは、ノウェルに打ちつける腰を強めながら聞いた。「んっ··美味い······」「喉は大丈夫ですか?」「大丈夫だ。ヌェーヴェルの血を、飲めるのなら····こんな痛みなど、へでもない」 ノウェルは、喋る事もままならないほど夢中で俺の首筋に吸いついている。擽ったさもあるが、じんわりと馴染んだ痛みが気持ちいい。「ヴェルは結局、ボクらの事だ〜い好きなんだよね」 こいつらの喉が焼けている事がそれを証明していようとも、絶対に認めてやらない。「すっ、好きじゃ··ない」「強情だなぁ····いいよ、また言わせてあげるから」 ノーヴァは俺の奥を突き上げると、折檻するように言った。「ほら、正直に言わないと、吐いても奥やめてあげないよ。なんならボク、このまま大人になってみようか?」「んぶっ····馬鹿ヤロォ··んえ゙ぇ゙ぇぇっ····わがっだ、言うから゙、奥やめっ··ゔぇ゙ぇ゙ぇぇ」「ヌェーヴェル、あぁ可愛い····んぅっ····ヴァニル、もう、奥を突くな! 僕まで、ぇゔっ····吐いてしまう。せっかくヌェーヴェルの血をもらったのに····」「勿体ないのはわかりますが、吐けばいいでしょう。締まって気持ち良いですから」「馬鹿な事を言うな! ヌェーヴェルが、汚れてしまうでは、ない

    Terakhir Diperbarui : 2025-04-07
  • ヴァールス家 嫡男の憂鬱   今暫くこのままで-2

     ノーヴァも、この乱れた関係が存外気に入っているようだ。ノウェルを犯すのだって、実は楽しいらしい。ノーヴァの残虐性を目の当たりにする度、俺は少し玉が縮こまってしまうが。 さらに、今のノーヴァには没頭するものがあった。約束通りローズへ紹介し、共に薔薇を育てるようになったのだ。 この間、視察へ行った時も──「ノーヴァ、この薔薇の香りはどうかしら? 先週の物より上品な気がするのだけれど」「確かに、甘ったるいのにすっきりする感じだね」「そうでしょ? うふふ、貴方とこうして楽しめるなんて、すごく素敵だわ」「ボクも··すごく楽しい。何も考えないでローズと薔薇を愛でている時間は心が安らぐよ」「ノーヴァ、こちらへ来て」 ノーヴァの生い立ちを不憫に思うローズは、ノーヴァを我が子のようにそっと抱きしめた。ノーヴァもまた、そんなローズを母のように慕った。 まるで別人のように穏やかで、見たこともないほどしおらしいノーヴァを見て目を疑った。 ノーヴァにとって、ローズの話は興味深いものばかりだった。ヴァニルから学んだものと言えば、戦術や格闘術などが多く、まさに吸血鬼たる生き様そのもの。人間の真似事をして生きる為のものは少なかった。 それに反しローズは、礼節や人間と上手く付き合う為の、人間らしい心の在り方を多く教えた。 数ヶ月で、ノーヴァは見違えるほど心身共に成長していた。無作法で女王様のような面影はなく、立ち振る舞いから言葉遣いに至るまでが完璧な紳士だった。 これには、俺もヴァニルも驚いてた。 さらに驚いたのはノウェルの事。 本家主催のパーティーで、ノウェルは吸血鬼が流れる少年と出会った。名はイェールといい、ノウェルに一目惚れして猛アタックを続けている。イェールは2つ年下だが、単純なノウェルにいとも容易く上手く取り入った。 彼に流れる吸血鬼の血は、何代も経てとうに薄まっており大した力などない。だが、恋を覚えたイェールもまた、血に秘められた本能が少しずつ強まっている。 ノウェルが想いを寄せる俺に、イェールはいい印象を持っていな

    Terakhir Diperbarui : 2025-04-08
  • ヴァールス家 嫡男の憂鬱   今暫くこのままで-3

     今日も今日とて、夜も更けた月明かりの下。散歩と称しやってきた廃城で、俺はヴァニルに迫られている。 時々、2人で楽しみたいと連れ出されるのだ。毎度、後でノーヴァにブチ切れられるのだが。「なぁ、ここちょっと綺麗にしないか?」「そうやってまた時間稼ぎを······いや、まぁ、そうですねぇ」 ヴァニルは、周囲を見回して言った。「些か気にはなっていたのですが、貴方とここに来るとそれどころではなくなってしまって」 何がニコッだ。いつもそうやって誤魔化す。俺と出会った思い出の場所だから昂るとか吐かしてやがったが、このカビ臭さも石の冷たさと毛布の薄さも、いい加減うんざりだ。「此処を綺麗にするまでシない」「····なんですって?」 突如ヴァニルの雰囲気が恐ろしくなる。しかし、ここで負けてはいつもと同じだ。「絶対にシない! 汚いし硬いし冷たいし、嫌だ」「はぁ······子供ですか、貴方は。雰囲気《ムード》もへったくれも無いですね」「なんとでも言え。だいたい、この汚さでムードもへったくれもあるか! あのなぁ、俺だってちょっとは大事にされたりとか、その、良い雰囲気でシたかったりとか····恋人じゃなくても、甘い雰囲気を味わってみたりとかだなぁ····」 一体俺は、ごにょごにょと何をほざいているんだ。こんな事を言いたかったわけではないのだが····。「わかりました。少し待ってください」 そう言って俺を抱え、廃城の上空へと飛び上がったヴァニル。何をするのかと思えば、城に手を翳して呪文のようなものを唱え始めた。「おい、何する気だ」 俺の質問など

    Terakhir Diperbarui : 2025-04-09
  • ヴァールス家 嫡男の憂鬱   交わり-1

     俺とノウェルは今、向かい合いながら手を繋ぎ、それぞれケツを掘られている。俺はヴァニルに、ノウェルはイェールに。 俺が願った心地よい関係なんて、刹那の夢物語だったのだ。イェールが混じったことで、上手く混じり合っていた澱みが掻き乱された。「ヌェーヴェル··んんっ····こんなかたちでも、僕はね、君とこうして、愛を交える事ができて、とても幸せだよ。君はっ、んぁ····どうだい?」 嬌声混じりに幸福を語ったノウェル。そして、聞くまでもないほどバカな事を聞いてくる。「最悪だ! こんなの、どう考えても狂ってるだろ! ちょっ、ヴァニル待て!! 奥挿れるな、ぅぶっ、お゙っ、ん゙え゙ぇ゙ぇぇ」「あぁ、苦しそうに吐くヌェーヴェルも愛らしい。僕の事を少しでも好いてくれれば、僕は幸せなのだけど──ひぁっ····イェール、もう少し優しくシてくれないか。ヌェーヴェルに愛を囁けない」「ノウェルさん····貴方、今誰に突っ込まれてるかわかってます? オレですよっ!」「んあ゙ぁ゙ぁぁっ!! ダメだイェール。奥を抉らないでぇっ──」 どうしてこうなっているかって? 全部ノーヴァが悪いんだ。 遡ること数時間前。 今日も今日とて、退屈したノーヴァが俺をからかって遊んでいた。激務に追われているこの俺を、だ。本当に迷惑な奴。 ローズの教育で紳士的になったと思っていたが、それはただの余所行き用だった。俺たちの前では、依然として我儘で女王様の様な振る舞いを見せる。 書類に目を通している時だって、お構いなしに話し掛けてくるノーヴァ。何度言っても、これをやめる気はないらしい。「ボク、ヴェルの事諦めたわけじゃないからね」「は? ンな事知ってるよ。あー、待て。この書類で最後だから、あと少し黙ってろ」「やだよ。だって、ヴェルとヴァニルがずっ

    Terakhir Diperbarui : 2025-04-10
  • ヴァールス家 嫡男の憂鬱   交わり-2

     戯言ばかり言うヴァニルをはっ倒してやりたいが、力の差は歴然。俺に反抗や抵抗をする術はない。 けれど、黙って受け入れるのも癪だ。「挿れねぇって! 俺は女で童貞捨てる予定なんだよ! 何が悲しくて男で卒業せにゃならんのだ」「はは。女より、ココのほうが具合がいいですよ。格段に」 ヴァニルがガチガチに滾ったそれを、俺のケツに押し当てて言う。そして、ゆっくりと俺のナカを拡げて入ってきやがった。「んぁ····知らねぇよ。とりあえず、ノーヴァで卒業なんて、絶対に嫌だっ」「強情だなぁ。ほ〜ら、ボクのナカ、ヴェルが初めてだよ? 挿れてくれないのぉ?」 ケツを開いて誘ってきやがる。まったく、どこでこんな破廉恥な言動を覚えてくるんだ。 ····200年も生きてりゃ知ってるもんなのか?「い、挿れない····絶対挿れないからなっ!!」「残念。そもそもねぇ、ヴェルが女を抱くの許した憶えないから。はーい、いただきま~す」 後ろから俺に突っ込んでいるヴァニルが両脇を抱え、腰が引けているのに無理やり上体を起こす。「や、やめろ····ふざけるのも大概に──んぁ····」 バカみたいに元気いっぱい滾っている俺のちんこを、ノーヴァのケツがぐぷぷっと飲み込んだ。「ふっ、あぁっ····んぅっ、キツ··ちんこ痛ぇ····」「初めてなんだからしょうがないでしょ」「ヌェーヴェルの初めても、喰い千切られそうなくらいキツかったですよ」「うるせ··待て、動くな。もう出ちまう! あぁぁっ、ヴァニルも動くなぁぁ!! ひあぁぁぁっ!!

    Terakhir Diperbarui : 2025-04-11
  • ヴァールス家 嫡男の憂鬱   嫁取り-1

     快楽にしか興味のない吸血鬼共。奴らとの乱れた関係に休止符を打つべく、俺は嫁探しに本腰を入れようと決意した。 翌日、早速父さんに嫁を探すと言ったら、既に見繕っていたのだと候補のリストを渡された。どれも、名家の令嬢ばかり。名と権力にしか興味がないような女ばかりなのだろう。 そう思うとウンザリするが、1人くらい俺自身を好いてくれる女がいるかもしれない。理想は捨てきれん。できれば、相思相愛となりたいのが本音だ。けれどこの際、高望みなどしていられない。 俺は、リストの中から数人にチェックをつけて返却した。それを見て鼻で笑われたのは癪に触ったが、跡を継ぐ準備の為だと思いグッと堪えた。 見合い当日。 ダメだと言ったのに、朝方まで機嫌の悪いヴァニルに犯されていた。その所為で腰がめちゃくちゃ痛いのだが、これしきの事で倒れているわけにはいかんのだ。 俺は腰とケツの痛みに耐え、長々と喋る父さんと相手方の母親に愛想笑いを返す。互いの紹介を終えると、俺は見合い相手と2人きりにされた。 1人目の候補者は、お偉い政治家《オッサン》の娘。名は確か、ジョジュリーン。見た目はかなり美しいが、どうにも所作が気に入らない。きっと、普段はステーキも自分で切らないのだろう。そういう感じだ。 当たり障りのない話をしてくるので、適当に返事を返す。よく喋るこの女は、家の自慢話とヴァールス家の話ばかり。俺に興味が無いことなど、話し始めて数分で悟った。「ヌェーヴェル様は、ご兄妹とは仲がよろしいのですか?」「ええまぁ、それなりに。すぐ下の弟と末の妹は、僕に懐いていて可愛いですよ。だから、つい甘やかしてしまって」「そうなのですね。是非一度、お会いしてみたいですわ」「はは。そうですね、是非一度····」 最後は兄妹仲の確認。結局、俺個人についての質問などひとつも無かった。 きっと、残りの候補たちも似たり寄ったりなのだろう。そう思うと流石に心が折れそうだ。 俺だって、人並みに夢を見ていた。いつかフワフワした愛らしい女性に愛されたいと願っていたは

    Terakhir Diperbarui : 2025-04-12
  • ヴァールス家 嫡男の憂鬱   嫁取り-2

    「貴方は本当に女運がないというか····。めげずに希望を探すのは勝手ですけど、そんなに焦らなくてもいいんじゃないですか? まだ若いんですし」 しれっと隣に座り、さりげなく腰を抱く。こんなところ、人に見られたら言い訳のしようがない。 なのに、今はこいつに触れられているのが心地良いと思ってしまう。「人間が若いのなんて一瞬なんだよ。それと、お前に若いなんて言われると子供扱いされているようで腹が立つ」「まぁ、私からすれば人間なんて、老人と言えど子供のようなものですからね。ヌェーヴェルなんてまだまだひよっ子ですよ」 俺を気遣っているのか、いつもより軽い口調で話すヴァニル。今は、その優しさに絆されていたい。「そのひよっ子相手に変態かましてんじゃねぇよ。はぁ····流石、300超えてるジジイは年季が違うな」「喧嘩売ってます? あ、そうだ。こんなしょうもない話をする為に来たんじゃないんですよ」「どうした、何か問題でもあったのか?」 ヴァニルは深刻そうな顔をして、振り出しにもどるような事を聞いてきた。「いえ、確認しておきたくて。ヌェーヴェルは嫁を迎えたら、私達との関係を終わらせるつもりですか?」「あぁ····その事か。一時的に中断って感じだな」「終了ではなく中断··ですか。ご希望の期間は?」 終了ではないとわかりホッとしたのか、中断と聞いて腹を立てたのか。あるいはその両方か。なんとも複雑そうな表情をしている。「これは俺の我儘だ。俺が吸血鬼になるって話も併せてな」 はて、と顔に書いている。キョトンとした間抜けな顔も美しいのが、実に腹立たしい。 だからと言うわけではないが、俺は堂々たる態度で俺の希望を伝える。「俺の子供が独り立ちしてから··とかでもいいか? 子供ができたら、それに対しての責任は果たさにゃならんだ

    Terakhir Diperbarui : 2025-04-13
  • ヴァールス家 嫡男の憂鬱   嫁取り-3

     流石に、本気で俺を睨むヴァニルにはビビった。調子に乗り過ぎたかもしれない。「お前、眼がシャレになってないぞ····。わかった、なら吸血だけは──」 ヴァニルは俺の後ろ髪を鷲掴むと、大きく見開いた目で見つめながら、ポツリポツリと言葉を刺してきた。「念の為、はっきり伝えておきますが。貴方が他の誰かを愛するなんて、私は嫌なんですよ。どれほどの衝動を抑え耐えているか····ましてや、貴方の子なんて見たくもない。なんなら嫁をくびり殺してやりましょうか?」 そう言ったヴァニルの顔は、怒りつつもとても哀しそうだった。申し訳ない気持ちと共に、こいつを裏切ってしまうような罪悪感が湧き上がった。おかげで、いつもの憎まれ口も叩けない。 何もかもがどうでもよくなって、ただヴァニルにこんな顔をさせたくないと思うだけだった。本心の知れない女や俺に関心を持たない女より、俺を求めてくれるこいつらと生きるほうが幸せなのかもしれない。そう思わざるを得なかった。「嫁····そんなに嫌か?」 ヴァニルの頬を指で撫でながら問う。俺から触れるなんて、随分心が参っているようだ。 俺から触れた事に驚いたのか、いつもの胡散臭い穏やかな目に戻ったヴァニルは俺の手を握って言う。「嫌ですよ。貴方は、慕う相手が目の前で他の誰かに奪われるのを、指を咥えて見ていられるんですか?」「そんな事··できるわけ、ない····よな」 俺は自分の事ばかり考えて、こいつらの気持ちを軽んじていた。今更だが、己の身勝手さに辟易する。「悪かった。俺は父親への復讐ばかり考えて、跡を継ぐ事に固執していた。何より、お前たちの気持ちに甘えて蔑ろにして、俺が一番なりたくない人間になっていた」 俺自身が過ちを認め詫びたからとて、こいつらを傷つけた事実は変わらない。だから、これから誠意を持って向き合う

    Terakhir Diperbarui : 2025-04-14

Bab terbaru

  • ヴァールス家 嫡男の憂鬱   事件は闇に-2

     粗方の処理を終え、俺は今回の件についてタユエルから聴取する。 暴走した吸血鬼には見覚えがあり、以前は人間として生活していたと言う。ところがここ数ヶ月は、どうも様子がおかしかったらしい。虚ろな目をして、拘束具を数点買いに来た事があったそうだ。 それから暫く経った数日前の早朝。少年が1人、今回と同じ様な状態で店の前で倒れていた。それを保護した事から、今回の事件が幕を開けた。 俺が訪ねた時、タユエルは少年の血にアテられていた。しれでも俺を襲わないよう、必死に理性を保っていたらしい。それは、調書には書かないでおこう。「俺たちは、少年らの容態を確認して聴取もせにゃならん。タユエル、今回の件は不問とする。だが、また同じような事があればお前だとて処罰することになる。報告、ちゃんとしろよ」「わーったよ」「大事にしたくないなら直接俺に報告しろ。それくらいの面倒は見れるつもりだ」「へいへい、頼りになる坊ちゃんだねぇ。ったく、立派になりやがって」 タユエルは俺の頭をグリグリと撫で回し、嬉しそうな面で俺たちを見送った。 俺の頭を撫でて褒めるなんて、母さんが居ない今ではタユエルくらいのものだ。まぁ、悪い気はしないが、まだまだガキ扱いされているようで悔しさも否めない。 俺とヴァニルは、病院で少年達に話を聞く。皆、一様に記憶が欠落していた。だが、最初の被害者だけは、吸血鬼と出会った時の事を覚えていた。 少年は森で遊んだ帰り、友人とはぐれてしまった。森を|彷徨《さまよ》っているうち夜になり、何かに誘われるような感覚で廃墟に辿り着いた。 そこは、レンガ造りの小さな家。中から微かに歌声が聴こえた。恐る恐る覗くと、ロッキングチェアに座った美しい男が、綺麗な歌を唄っているのが見えた。 男は少年に気づき、家へ招き入れた。そして、首に噛み付かれた所で記憶は途切れたそうだ。 結局、吸血鬼が何をしたかったのかも、動機も覚醒したきっかけもわからず終いだ。こんなあやふやな結末では、父さんにネチネチ嫌味を言われるのだろう。 しかし、これにて調査は終了とする。傷も癒えない少年達に、これ以上覚え

  • ヴァールス家 嫡男の憂鬱   事件は闇に-1

     ウトウトしながら、1人で心細く留守番をしていた深夜3時頃。内側から板を打ち付けていた扉が、物凄い轟音と共に蹴破られた。 俺は驚きすぎて声も出ず、座っていた椅子から転げ落ちた。慌てて体勢を整え、物陰から様子を窺う。 扉を蹴破ったのはタユエルで、どうやら獲物を捕まえて戻ったようだ。タユエルの後ろで、ヴァニルが縛り上げて繋いだ男を引き摺っていた。「そ、そいつが犯人か?」「そうだ····って、なんだヴェル、んなトコに隠れて。はははっ、チビってねぇか?」「チビるわけあるか! それより、やはり吸血鬼だったのか?」「あぁ、純血じゃねぇがな。どれだけ入り混じってんのかもわからねぇ。あとはまぁ、見ての通り覚醒しちまってる」 どうやら会話はできそうにない。涎が垂れ流しで、牙も仕舞えないらしい。極めつけは紅黒に染まった瞳。以前のノウェルが、これの一歩手前の状態だった。だから俺は焦ったのだ。 ここまでキてしまっては、奇跡でも起きない限り正常に戻ることはない。故に、奇跡など起こりえない今、殺処分という形を取らざるを得ない。 墓穴を掘り、そこに縛った状態で寝かせる。そして、銀の杭で一息に心臓を貫き、地面深くまで打ち込んだ。 胸の当たりが燃え、耳を塞ぎたくなるような断末魔が響く。こうして、心臓が灰になるまで待ち、確実に息絶えた事を確認する。 十字架と弾丸をモチーフにしたヴァールスの家紋。それを銀の糸で刺繍した、無駄に煌びやかな布を被せてから埋める。 これが決まりなのだから、俺は手順通りにこなす。人知れず命を終える吸血鬼への弔いだ。手を抜くわけにもいかない。 それにしたって、ヴァニルとタユエルの顔が見られないなど、我ながら感傷に浸るようで吐き気がする。「少年達は、よく殺されなかったな」 俺は思わず、ポツリと呟いた。「えぇ。けれど、それは理性が残っていた訳ではなく、彼の性癖だったんだと思いますよ」「俺もそう思う。あんま気にすんな」「あぁ、気になどしていない。さぁ、そろそろ帰るか」

  • ヴァールス家 嫡男の憂鬱   変化してゆくもの-2

     俺はすぐさまヴァニルを連れタユエルの店へ向かう。 最悪の事態──それはきっと、タユエルが食料としてではなく無作為に人間を殺めた、という事なのだろう。「ヌェーヴェル、大丈夫ですか?」「あぁ。こういう事態に備えて最低限の訓練はされている。お前に説明するまでもないだろうが、ヤツが暴走していればその時は····」「それは私が。貴方が太刀打ちできる相手ではありません。それに、彼を手に掛けるのは辛いでしょう」 俺とタユエルが長い付き合いだと知って、ヴァニルなりに配慮してくれたのだろう。しかしそれを言うならば、ヴァニルのほうが関係としては深い。「お前の方がやりにくいんじゃないのか。師匠みたいなものだったんだろう? ましてや、同胞を手にかけるなんて気持ちの良いものではないだろ」 ヴァニルは俺に口付けて、それ以上言うなと黙らせる。仕事だと割り切っている····そういう事なのだろう。 俺は気の利いた言葉を見つけられず、黙って銃の確認をした。あくまで念の為だ。 タユエルの店の前に立ち、腰に忍ばせた銃へ手を添える。息を殺し、ゆっくりと扉を開く。 隙間から中を覗くが、真っ暗で何も見えない。しかし気配はある。耳を澄ませると荒い息遣いが聞こえた。 思いきって一歩踏み入れた瞬間、耳を劈くような怒声が響く。「来るな!! ヴェルなんだろ? 絶対に入ってくるなよ!」 明らかに様子がおかしい。手遅れだったのだろうか。「····そうだ、俺だ。タユエル、何があった。何故、立ち入るのを拒む」 タユエルからの返答がないので、ゆっくりと扉を開ききる。陽の光が差し込み、その奥にタユエルの姿を目視した。「入るぞ」 俺はまた一歩踏み込む。タユエルの出方を窺いながら、一歩一歩慎重にカウンターへ向かう。 古い木造の匂い。その中に、血の様な鉄っぽいにおいを感じる。 胸騒ぎ

  • ヴァールス家 嫡男の憂鬱   変化してゆくもの-1

    「ヴェル、起きて。ねぇ大丈夫?」 いつの間にか子どもの姿に戻っていたノーヴァに、柔らかく頬を抓られて目が覚めた。「ん····大丈夫··だ。ぁ、は、腹····」 腹の痛みが消えている。けれど、あの熱さだけは残っている感じがしてズクンと疼く。きっとこれは腹じゃなく、脳にこびりついた感覚なのだろう。 そして、熱さの理由はもうひとつ。ヴァニルが申し訳なさそうに俺の腹をさすっているのだ。こいつの手は冷たいのだが、気持ちは伝わってくる。「ヴァニル、大丈夫だ。もう痛くない」「いえ、そういう事では····。優しくするという約束だったのに、すみません」 ヴァニルは眉間に皺を寄せ、なんとも苦しそうな表情《かお》をしている。 まだ身体を起こせないが、俺はそっとヴァニルの頬に手を添えて微笑んだ。「ヌェーヴェルが私に優しい顔を向けてくれるなんて、出会って随分経ちますが初めてですね」「俺だって、こんなに穏やかな気持ちになったのは初めてだ」 ノーヴァが俺の額を撫で、啄むようにキスを落とす。「ノーヴァ、くすぐったい。なんだ?」「気絶する前に言ったこと、憶えてる?」 そう言えば、とんでもない事を口走った記憶がある。「······憶えてない」 俺は、ふいと目を逸らして言った。耳まで熱い。「嘘だ。憶えてるでしょ」「憶えてねぇよ。あの時は頭の中が真っ白だったからな」 必死に誤魔化したが、下手な嘘など通用しなかったようだ。 ノーヴァにじっと見つめられ、俺は観念して白状する。跡を継いで、全て終わらせてからにしようと思っていたのだが、あんな事を口走った後なのだから仕方がない。「俺は、お前たちを大切に想ってる。ずっと身

  • ヴァールス家 嫡男の憂鬱   優しくとは言ったが····-2

     ほんの数秒で唇を離し、ノーヴァの目を見ながらそっと離れる。ノーヴァの唇へ視線を落とすと、自分でわかるほど瞬時に頬が紅潮した。「次は舌、絡めて」 そう言って、ノーヴァはベッと舌を出して見せた。触れるだけのキスで心臓がイカれてしまいそうなのに、そんな破廉恥な事を自分からできるのだろうか。 このヤワな心臓が根性を見せてくれることを期待して、少し開けて待っているノーヴァの小さな口に、ええいままよと舌先を差し込んだ。 いつもはされるがまま舌を絡めていたが、自分で絡めにいくとなると想像以上に難しい。「ヌェーベル····ソレ、後で私にもシてくださいね」 振り返ることができないので確証はないけれど、きっと嫉妬に歪んだ顔で言っているのだろう。 「ん、んぅ····」 俺のたどたどしい舌遣いに焦れたのだろう。ノーヴァは俺の両頬を手で抱え、こうやるのだと言わんばかりに激しいキスをしてきた。 いつも通りの、息ができなくなるやつだ。酸欠で意識が朦朧としてくる。「ふ、ぅ····ノー、ヴァ····待へ、ぅふ、は、ぁっ····ふぇ゙····」「アナタたちのキスを見てるだけで、なんだか苛つきますね····もう動きますよ」 突くのを待ってくれていたヴァニルだが、堪らずに動き始めた。 突かれるリズムに合わせ身体が前後する。けれど、頭が固定されている所為で衝撃を逃がしきれず、腹の奥に快感となって留まって苦しい。 ヴァニルが結腸口を叩く度に噴いてしまうので、ノーヴァとベッドがびしょ濡れだ。いつもなら、ぶっ掛けてしまうと嫌味の一つや二つ言うくせに、今日はお構いなしにキスを続ける。「ノ

  • ヴァールス家 嫡男の憂鬱   優しくとは言ったが····-1

     ノーヴァは優しいキスを繰り返す。徐々に激しさを増し、早速約束を破って大人の姿になった。 そして、大きくなった手で俺の頬を包み口内を隈無く舐めまわす。「んっ、おま····大人になるなって··んんっ」「ん······ふぅ。こっちだと、ずっと奥まで犯せるもん。それと、血···もうガブ飲みはしない。これからは、ヴェルを危険な目に合わせるのは控えるよ」 優しさを見せているつもりなのだろう。俺に譲歩すると言いたげなノーヴァを愛らしいと思う。「控えるという事は、やるときゃやるんだな」「だってヴェル、好きでしょ? 死ぬほど犯されるの」「······嫌いじゃない」「あははっ。素直じゃないなぁ」 ノーヴァは再び俺の口を塞ぐ。ケツを弄っていたヴァニルは、潤滑油《ローション》が乾かぬうちに滾って反り勃ったモノをねじ込んだ。「んぅ゙っ、ん゙ん゙ん゙っ!!! んはぁっ、デカ····待っ、デカ過ぎんだろ······」「デカいの好きでしょう? ほら、もうイきそうじゃないですか。まだ挿れただけですよ」 確実にいつもより大きい。圧迫感が凄いのだ。なのに、容赦なく奥へ進んでくる。「ひぅっ、あぁっ!! ふっゔぁん····アッ、やだ、奥待って」「大丈夫。まだ奥は抜きませんよ。もう少し、ここを解してからです」 ヴァニルは下腹部を揉みながら、期待を持たせるような事を言う。そして、ぱちゅぱちゅと音を立てて俺を煽る。「ヴァニル····

  • ヴァールス家 嫡男の憂鬱   黙って聞いてろ-3

     集まった視線に、俺は直観的な苛立ちを覚えた。「な、なんだよ」「お前がそれ言うの? ヘタしたら、ヴェルが誰よりも我儘だし欲深いよ」「そりゃまぁ、俺だしな。それくらいの気概がないと、ヴァールスの名を継ごうなんて思わないだろ」 俺の言葉に、全員が耳を疑ったらしい。揃いも揃って、イイ面がマヌケに口を開けている。「貴方、もしかしてまだ継ぐ気なんですか? てっきり、私たちを選んだ時点で諦めたものとばかり····」「諦めてたまるか。嫁の件は父さんに上手く言って白紙に戻した。子供の事は追々考えるからいいんだよ」「そういえば、よくあのパパさんを言いくるめられたよね。なんて言ったの?」「····内緒だ」 うまい言い訳が思い浮かばず、バカ正直に『好きな人ができたから見合いは無かったことにしたい』と、子供の駄々みたいな理由を告げただなんて言えるか。しかし、あのクソ親父がよくそれで許してくれたなと俺も思う。 正直、もう出家覚悟で言ったのだ。それだけは、絶対にこいつらにはバレないようにしなければ。「貴方が言いたくないのなら聞きません。私達を優先してくれた事実だけで充分です」「そうだね。まぁ、ボクは暇だし、我儘坊やの復讐手伝ってあげてもいいよ」「私も、協力しますよ」「あぁ、頼りにしてるよ。って··おいこらノーヴァ、誰が我儘坊やだ!」 ノーヴァとヴァニルに手伝ってもらえば、いとも容易く父さんを屈服させられるだろう。勿論、物理的に。ヴァニルの場合、まずは容赦なく精神的に殺《ヤ》りそうだ。 協力してもらえるのは助かるし、頼りにしているのも本心だ。けれど、なんだこの漠然とした不安は。 この2人の際限のなさ故だろうか。あまり関わって欲しくないのが正直なところだ。「あの、ちょっといいですか。ヌェーヴェルさんに聞きたいんですけど」「なんだ、イェール」「その復讐ってのを達成したら、アンタは吸

  • ヴァールス家 嫡男の憂鬱   黙って聞いてろ-2

     説明を終えるなり、ノーヴァとイェールに笑われた。ノウェルはふんぞり返って鼻を高くしている。「ヌェーヴェルには僕が色々教えてあげるよ。心の機微を、こいつらが教示できるとは思えないからね」「ボクだってできるよ! 人間の事はローズに教えてもらったからね」「こら、人様の母君を呼び捨てにするんじゃない。失礼だろうが」 やはり、ノーヴァはノーヴァだ。まだまだ礼節を弁えきれていない。所詮、余所行き用の付け焼き刃と言ったところか。「ちぇー····人間ってなんでそういうトコ煩いの? 面倒だなぁ」「ノーヴァがガサツ過ぎるんですよ。誤解のないように言っておきますが、吸血鬼が皆、ノーヴァのようにガサツな訳ではありませんから」 知っている。ローズやブレイズ、ヴァニルのように礼儀正しい者が多い事は。 それは人間とて同じ事だ。住む環境や性格によるところだろう。「お前を見てたらわかるよ。ノーヴァのもまぁ、度を越さなきゃ可愛いもんだしな」「えへへ。ねぇヴェル、ひとつ聞いておきたいんだけど」「なんだ?」「ヴェルはさ、子供のボクと大人のボク、どっちが好き?」 究極の選択じゃないか。愛らしい子供の姿で背徳感を感じるか、大人の姿でヴァニルとは違った美形に支配されるか····なんて言うと図に乗るのだろう。とてもじゃないが、正直な気持ちは伝えられない。「子供で充分だ。大人になるのは禁止だしな。お前ら3人に血を吸われる俺の身にもなれよ」「それぞれ遠慮してるじゃありませんか。ちゃんと“不死の吸血”の約束は守っていますよ」「当然だ。俺が死んだら元も子もないだろうが。そうだ。イェールはノウェルの血を飲むのか?」「許した憶えはないんだけどね、興奮すると時々吸われるよ。嫌かい?」「嫌だな。けど、ヤッてる最中だけは許してやる」「随分と寛大なんだな。ノウェルさんがアンタに執心してるからって余裕じゃないか」「あぁ

  • ヴァールス家 嫡男の憂鬱   黙って聞いてろ-1

     約束の夜。全員が俺の部屋に集まった。「結論から言う。俺は、お前たちの中から1人を選ばん。全員、俺のモノでいろ」 俺が高らかに言い放つと、ヴァニルとノウェルは予想通りと言った顔で項垂れた。ノーヴァは呆気にとられた顔で口をパクパクしている。餌を待つ魚か。 そして、黙って聞いていると約束していたイェールが喚き始めた。「アンタ本当に狂ってんのか!? どれだけ欲張りなんだよ! ふっざけんなよ····ノウェルさんだけは渡さないからな!!」「イェール、黙って聞いてろ。できないなら追い出すぞ」 俺の言葉を受けて、ヴァニルがイェールを睨む。「······クソッ!!」 なんと説明すれば良いものか、俺だってそれなりに悩んだのだ。しかし、ノウェルに言われて“恋”だと知った時点で、俺の中では結論が出ていたのだと思う。 結論が出ているものに、思い悩むのは性に合わない。「お前らが俺を想ってくれている事は、正直嬉しかった。けど、俺はノウェルに言われるまで、恋というものが分からなかったんだ。その····症状に当てはまっていて初めて、お前らに抱いていた感情に“恋”という名がある事に気がついた」「症状って、ヴェル····病気か何かだと思ってたの?」 ノーヴァが憐れむような目で俺を見て言った。 「恋なんて病気みたいなものだろう。鼓動が早まったり身体が熱っぽくなったり、息苦しくなったり情緒が不安定になるんだぞ。まともな状態じゃない」 俺の意見に首を傾げるノーヴァ。俺は、何かおかしな事を言っているのだろうか。「そう····だね? ねぇ、人間って皆こんなにバカなの? ノウェルは人間の中で生きてきたんでしょ? 人間っ

Jelajahi dan baca novel bagus secara gratis
Akses gratis ke berbagai novel bagus di aplikasi GoodNovel. Unduh buku yang kamu suka dan baca di mana saja & kapan saja.
Baca buku gratis di Aplikasi
Pindai kode untuk membaca di Aplikasi
DMCA.com Protection Status