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第7話

Author: 白金 将
last update publish date: 2026-09-03 05:00:20

燐はしばらくインターネットの海で情報を集めていった。

公開されている範囲で、集会やパーティーにまつわる様々な話を揃えていく。

『今日は経営者同士の交流会です。あの御堂財閥のCEOもいらっしゃって、早速話を聞いてきました。私が若い頃はもっとチャランポランだったなぁ・・・』

『九条財閥のお嬢さん、やはり美しい! よくお酒を嗜まれるそうで話が弾みました。事業者としての一面もあるようで、これは将来に期待ですね!』

『周りが凄い人多すぎて、自分まで凄い人になったような錯覚に陥る』

『このイケメンを見て!御堂財閥の恭司さん。そこに居るだけで場が浄化される。。。彼女さんいるのかな?気になる~‼』

そして、燐の中で結論が出る。

――恭司の傍に、いつもあの女がいる。

(なんなの、あの女……まるで既成事実を積み上げているみたい。恭司さんは気がついているのかしら)

(それとも、知っての上で……?)

(……“私”がいるのに?)

家の中で恭司と会う頻度も多くはない。

不満を募らせていた燐は、恭司が早帰りすると分かった日にわざと食堂で遅めの夕食を取った。

それから恭司が帰ってきたタイミングでちょうど食事を終えたように振る舞い、玄関で彼を出迎える――

「おかえりなさい、恭司さん。ちょうど夕食を終えたところだったの」

「燐か。体調はどうだ?」

「……問題ないわ。あの、恭司さん」

恭司の、仕事とプライベートの間に存在する間隙のような時間。

ここを逃したら次はいつ話せるか分からない――夫婦なのに? 

燐は若干の悔しさも滲ませながら、聞こうと思っていたことを尋ねた。

「恭司さんは、私のことを本当に心配してくれてるの?」

「そんなことを聞いて、どうした?」

「ごめんなさい、一人の時間が長いから、つい不安になってしまって」

「お前は何も心配しなくていい。あらゆる問題に対応できるよう専門家を揃えているから、安心してくれ」

「……そうね」

安心できれば、どんなに良かったことか。燐はひそかに一人自嘲する。

「待って、恭司さん。もう一つだけ。九条財閥のお嬢さん、華さんと会ったの」

「……華と?」恭司の眉が上がった。

「私の部屋までやって来て、“挨拶”をしにきたようなのだけど。恭司さん……華さんはどういう人なの?」

「華は、御堂財閥の出資者の一人だ。今は九条財閥との合同プロジェクトをするための橋渡し役をしている」

「……それだけ?」

燐はそう聞いてから、自分があまりにも冷たい声色をしていたことに気がつく。

恭司は少しの間、口を閉じて言葉を選んでいる様子を見せて……やがて質問に答える。

「幼馴染だ。だが、それだけだ」

「幼馴染……」

答えは得られたが、どうしても疑心が募っていく。進む度に、周りの霧が濃くなっていくような気がする。

結局、燐は話をそれだけにした。あまりにも質問を続ければ、変なことでムキになったと思われてしまうからだ。

しかし……ムキになってでも質問できればどれだけよかったことだろう?

燐は、なるべく理性的に育てられた過去を恨めしいとさえ思っていた……

それから、一日、一日と過ぎていく。

そんなある日、燐は離れのベッドで身体を休めながら、御堂家の玄関に見慣れない車が止まるのを見た。

「……あっ!」

車から降りてきたのは、赤いドレスの女――華だ。

彼女は全身から勝者のオーラでも放っているような、堂々とした様子で玄関に入っていく。

そう言えば。燐は今朝聞いたことを思い出した。

恭司は今日、珍しく、家の仕事場で本を読んで過ごすのだと……

(どうして華さんが家に?)

(まさか……いや、そんな……)

疑惑が胸を膨らませ、今にも口から出てきてしまいそうだった。

離れを出る。身体の調子は安定していたから、そのまま恭司がいるであろう仕事場へ向かっていく。

(いったい何をしに来たの?)

(ここは私と恭司さんの家よ。それなのに何度も何度も家に上がってきて……)

件の女性の姿を探して部屋の一つ一つを探して回る燐。そこへ――背後から声が小さく声をかけられた。

「あら、奥様。“誰か”お探しかしら?」

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