Emerald

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last updateปรับปรุงล่าสุด : 2026-10-13
โดย:  藍沢咲良อัปเดตเมื่อครู่นี้
ภาษา: Japanese
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正規採用の小学校教師を辞めた美咲は、山あいの小学校で非常勤講師として働き始める。そこで出会ったのは、花屋を手伝う研究員・悠。恋人の浮気、元彼のストーカー騒動を経て、次第に悠へ惹かれていく美咲。しかし幸せな日々の中、悠が大手製薬会社社長の息子であり、婚外子だと判明する。さらに二人の結婚を阻む悠の実母まで現れて――。傷ついた教師と秘密を抱えた彼が、本当の居場所を見つける恋物語。

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บทที่ 1

Prologue

全てが嫌になった。

嫌味しか言わないお局。

八つ当たりがジメジメしてる上にいらぬ説教超長時間な男性上司。

そのまた上司は何も言えない。言うべき事が言えない上司なんていらない。

助けてあげたいという空気は出すけど何も出来ない立場の弱いおば…おねえさま方。腹なんて立ちませんよ。ただひたすら申し訳ない。

パワハラに全く気付かない校長。

上司は常にヘコヘコしてたからね。

持ち上げられれば機嫌良くなっちゃう鈍感さん。

嫌いじゃなかったけどね。

プライベートに口出す保護者。何であんたらに私のプライベート語られなきゃいけないのよ。

PTAの強制飲み会もほんと勘弁して欲しかった。

私らが楽しんでるとでも思ってるわけ?

んな訳ないじゃん。

部活は強制労働。バスケの経験無い私にバスケ語られる子ども達、可哀想。

てか部活始まって30分以内に勤務時間が終わるんですけど?当然サービス残業。教員は残業代なんて出ませんからね。私ら奴隷なの?

部活の指導を拒否してもスルーされるし。寧ろ拒否なんて許されない空気。「皆やってきたんだからやれよ」な空気、それが私らを奴隷化させてるって何故気付かない?

やってもいいけどね、部活。部活やってすぐ帰れるならね。帰れる訳ないよね。提出物のチェックやら授業準備やら成績付け。更に他の仕事も大量。

ワークライフバランスって何?幻想?

人間関係が問題無ければいいけどね。

でも八つ当たりされてサンドバッグにされて、その上激務。

このままでは私の心か体、どっちか病む。

病みたくない。

うん、逃亡しよう。

というわけで逃げてきた。

ここは鷺山市にある、私の叔母の家。

暴言吐いて辞表叩き付けて辞めてやりたかったのだけど。

そんな勇気は無い私。

2学期の途中辺りから離れて暮らす母が倒れたことにして。ちょいちょい早めの退勤(それでも18時過ぎてたけど)をかましてやって。

母が入院したことにして、看病に行かなきゃいけないアピールをして。

実家の家業を手伝わないといけないことにして(私の実家は家業なんて無いけど)年度末で退職する旨を校長に伝えておいた。

3学期に入ってから年度末に退職することを職員には公表。担当してた校務分掌の引き継ぎも無事完了。

ゴミ達の嫌味や八つ当たりは変わらずあったけど。辞めるとなったらもうどうでも良かった。

最後の出勤を終えて学校の門を出た瞬間は最高だった。

そして今。

叔母の家で居候している。

実家になんて帰ったら母が口煩く仕事復帰を迫ってくるのが目に見える。

のんびりダラダラと過ごして。

お金が足りなくなったらバイトして。

「人生の夏休み」と称して羽を伸ばしていた。

「ねぇ美咲。広報に非常勤講師の募集があったよ」

バラエティ番組の再放送を観ているときだった。

母の妹である美香子叔母さんがコーヒーとドーナツをテーブルに持ってきてくれていた。

『広報さぎやま』の職員募集ページをテーブルに広げる。

「色々バイトやってるみたいだけど。非常勤講師の時給、悪くないみたいよ?」

『広報さぎやま』の該当ページを覗き込む。

時給…以前教師をやっていた頃は時給なんて考えた事が無かった。「時給に換算するとやってられなくなる」と聞いた事があるからだ。

非常勤講師の時給…悪くない。

非常勤講師か…。色んなアルバイトを経験したけど、どの職種も非常勤講師の時給よりは低かった。お水や性を扱った仕事は選択肢に入れなかった。なんだかんだ私に出来る最高額の仕事はこれなのかもしれない。

教師という仕事自体は嫌いじゃなかった。寧ろ好きだったかも。働く環境が最低だっただけだったのかもしれない。

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Prologue
全てが嫌になった。嫌味しか言わないお局。八つ当たりがジメジメしてる上にいらぬ説教超長時間な男性上司。そのまた上司は何も言えない。言うべき事が言えない上司なんていらない。助けてあげたいという空気は出すけど何も出来ない立場の弱いおば…おねえさま方。腹なんて立ちませんよ。ただひたすら申し訳ない。パワハラに全く気付かない校長。上司は常にヘコヘコしてたからね。持ち上げられれば機嫌良くなっちゃう鈍感さん。嫌いじゃなかったけどね。プライベートに口出す保護者。何であんたらに私のプライベート語られなきゃいけないのよ。PTAの強制飲み会もほんと勘弁して欲しかった。私らが楽しんでるとでも思ってるわけ?んな訳ないじゃん。部活は強制労働。バスケの経験無い私にバスケ語られる子ども達、可哀想。てか部活始まって30分以内に勤務時間が終わるんですけど?当然サービス残業。教員は残業代なんて出ませんからね。私ら奴隷なの?部活の指導を拒否してもスルーされるし。寧ろ拒否なんて許されない空気。「皆やってきたんだからやれよ」な空気、それが私らを奴隷化させてるって何故気付かない?やってもいいけどね、部活。部活やってすぐ帰れるならね。帰れる訳ないよね。提出物のチェックやら授業準備やら成績付け。更に他の仕事も大量。ワークライフバランスって何?幻想?人間関係が問題無ければいいけどね。でも八つ当たりされてサンドバッグにされて、その上激務。このままでは私の心か体、どっちか病む。病みたくない。うん、逃亡しよう。というわけで逃げてきた。ここは鷺山市にある、私の叔母の家。暴言吐いて辞表叩き付けて辞めてやりたかったのだけど。そんな勇気は無い私。2学期の途中辺りから離れて暮らす母が倒れたことにして。ちょいちょい早めの退勤(それでも18時過ぎてたけど)をかましてやって。母が入院したことにして、看病に行かなきゃいけないアピールをして。実家の家業を手伝わないといけないことにして(私の実家は家業なんて無いけど)年度末で退職する旨を校長に伝えておいた。3学期に入ってから年度末に退職することを職員には公表。担当してた校務分掌の引き継ぎも無事完了。ゴミ達の嫌味や八つ当たりは変わらずあったけど。辞めるとなったらもうどうでも良かった。最後の出勤を終えて学校の門を出た瞬間は最高だった。
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辞令
『4月1日付けで、鷺山市立柿山小学校の非常勤講師に任ずる』『広報さぎやま』に載っていた電話番号に連絡して面接を受けた。その3日後。市の教育委員会から勤務先が決まったと電話があった。あっさりと決まり過ぎでしょ。どんだけ人手不足なのよ。数日後、柿山小学校の校長から電話があり、校長室で辞令を受け取った。白髪を全く染めないというのも、却って綺麗なものなんだな…と呑気なことを考えていた。総白髪に眼鏡のロマンスグレーという言葉が似合いそうなこの人が私の勤務先の校長だ。平成の大合併で鷺山市となった柿山地区。市になる前は柿山村だったそうだ。市になってもこの地区にコンビニというものすら無いらしい。特に目立った産業は無く、キャンプ場やバーベキュー場、あとは農地が少しあるぐらいだ。最近出来たチェーン店のドラッグストアは地区唯一のもので、この地区の人達がほぼ全員買い物に来るといわれている。お陰で全国有数の売上だそうだ。この地に来て驚いたのは川の水の綺麗さだ。エメラルドグリーンの川なんて初めて見た。以前私が住んでいた所は所謂《いわゆる》都会だ。川には基本、生き物はいないものとして育ってきたのだ。職員室に案内される。私が予想していたよりもはるかに狭い…というより小さい職員室だ。この小学校の子ども達は各学年1人から6人程度。それ故、1・2年、3・4年、5・6年のクラスという複式学級というものになっているらしい。児童の人数は全校で20人だ。20人て。…となると、担任は3人だけ。プラス、特別支援学級の先生と養護教諭、事務さん、非常勤講師の私に同じく非常勤の図書室の司書さんや他の学校と兼務の栄養職員さんやスクールカウンセラー。少数精鋭と言えば聞こえは良い。ただ単に貰える人数が少ないが故のアットホーム感らしい。「結城《ゆうき》先生の机は…こちらです」非常勤でも専用の席がある事に驚く。私が以前勤めていた小学校では、非常勤の先生の机は共用のものだった。市内でも中心部はそこそこ栄えている。所謂「郊外」と呼ばれる土地だ。コンビニもスーパーも本屋もある。ショッピングモールも勿論ある。この柿山小はコンビニよりもキャンプ場の方がよっぽど近い。「鈴木先生、結城先生との打ち合わせですが…」教務の呉林《くればやし》先生が鈴木先生と呼ばれた、30代前半と思われる男性に声をかけ
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東風(こち)①
美香子叔母さんの家から柿山小までは車で通勤する。電車がある山奥もあるが、この地域に線路なんて皆無だ。柿山小を出て叔母の家に向かう。運転しつつもエメラルドグリーンの美しい柿野川が視界の端に入る。清流と呼ばれる柿江川の上流らしい。行きは無事に学校に到着するまで気が気じゃなかった。片道31kmだ。地図アプリで40分の距離だ。念の為1時間前に家を出たら、約束の15分前に着いてしまっていた。帰り道は気楽なものだ。家と柿山小との中間地点に神社がある。神社の隣の池は絵画のような写真が撮れると有名で、観光客がよく来るらしい。今日は平日だからか観光客は少ないけど、駐車場の車は県外ナンバーが目立つ。私、観光客じゃないけど。絵画のような写真が撮れるという池、通称ゴッホの池には興味があった。柿山小に勤務するなら道中の交通安全も祈っておきたい。事故起こして川にでも落ちたら一発アウトだ。車を停めて先に神社に向かう。神社への階段はなかなか急だ。職場への初訪問であった為スーツにパンプスだった私は、階段の隙間にパンプスのヒールが挟まらないよう下を向いて階段を登った。タイトスカートだったらきつかっただろう。パンツスーツで良かった。お参りを終えて階段を降りる。ここでもやはり階段は急だから下ばかり見つめて階段を降りた。神社の隣の池へと歩く。立ち止まってスマホのカメラを池に向けている人ばかりだ。同じようにスマホを取り出し、池に向ける。シャッター音が響く。撮った画像を見てみる。成程まさに絵画のような写真が撮れた。折角撮れたので桜汰《おうた》に送ってみる。『柿山小の近くのゴッホの池で撮ってみたよ。午後も仕事頑張って!』桜汰は最近メッセージの返信が遅い。既読になるのが翌日になるのはザラだ。きっと忙しいのだろうけど。桜汰とは付き合って2年が経つ。私が辞表を出した自治体での初任者研修で出会った。荒れていると有名な中学校で社会科教師として勤務している。私が辞めるまで、桜汰はアパート、私は実家から職場に通っていた。地下鉄ですぐに会いに行ける距離だったから桜汰のアパートには仕事帰りに寄ってご飯を作ることもあった。鷺山市に来てから、桜汰と会えることは少なくなっていた。ゴッホの池の近くには温室がある。『柿山フラワーパーク』と書かれた幟《のぼり》が立っていた。ふらりと入ってみる。どうやら大き
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東風(こち)②
私はただ、お昼ご飯が食べたかっただけなんですけど。何ならコンビニのおにぎりと烏龍茶のペットボトルとちょっとしたサラダで良かったんですけど。…なんっで私は見知らぬおじい・おばあサマと囲炉裏を囲んで正座してお茶を飲んでいるのだろうか…?「どこから来たの?」「ゴッホの池を見に来たの?」「ここは蕎麦も美味しいけど天ぷらも美味しいよ」ひええ…!同時多発的にマシンガントークが始まる。私はどの質問から答えるべきか?っていうか私まだ注文どころかメニューも見ていない。「みんな、おねえちゃん困ってるよ」上品な印象の、貴婦人という言葉が似合いそうなおばあサマが割って入る。助かった。「あの、私注文したいのですが…」「みっちゃん、メニュー見せてあげて」みっちゃんと呼ばれた別のおばあサマからメニューを受け取る。お蕎麦もあればサンドイッチもある。天麩羅もある。この店一押しがさっぱりわからない。「お決まりですか?」店主に視線を向けるとすぐにやって来た。迷った結果「本日のランチ」を注文した。「みんな、お手柔らかにね」店主がおじい・おばあサマに向かって目を細めて告げる。目を細めている場合では無いのでは?差し障りの無い範囲でおじい・おばあサマの質問に答え、控えめに会話に参加していると店主がランチを持ってきた。この店のスタッフは店主だけなのだろうか?うーん…。お蕎麦と天ぷらは良いのだけど。小さく添えられたデザートはミニフルーツサンドというこのギャップ。やはり何が一押しなのかがよくわからない。でもどれも美味しい。よくわかんない店ではあるけど、また来ても良いかもしれない。おじい・おばあサマ方は私が半分食べ終えたあたりでセットのコーヒーを飲み終わって席を立った。「じゃあね、美咲ちゃん。またご一緒しましょ」貴婦人おばあサマ・トメさんが私に声をかけていった。「はい、また」と答えてしまうぐらいには何故か仲良くなってしまった。囲炉裏の食器を片付けると店主がコーヒーを載せた盆を持って囲炉裏の、私の向かい側に座った。「色々距離近くてびっくりしたでしょう。でも良い人達だから仲良くしてやってください」店主はふわりと笑うと私にもコーヒーを勧めた。「セットのコーヒーです。どうぞ」「どうも…。いつも、こういう感じですか?」「こういう感じ、とは?」髭の店主が不思議そうな顔
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東風(こち)③
見知らぬ男性と囲炉裏を囲んで2人きり。居心地の悪い私はコーヒーに口をつけ、その無口な男性を観察した。陽に焼けた端正な横顔。ツナギの作業着の袖を無造作にまくっていて、そこから覗く腕は筋肉質で一瞬見惚れてしまった。「……何?」彼がスマホから顔を上げて私を真っ直ぐ見つめる。「え…?」「視線、めっちゃ痛いんだけど」声を掛けられるとは思っておらず、面食らった私はそれ以上何も言えない。「君、観光客?」スーツのジャケットは車に置いてきていた。黒のパンツと白いブラウスに薄手の青いカーディガンを羽織っていた。ビジネスライクな服装だと思っていたけど、観光客に見えたのだろうか?「観光客、ではないです…」「ふーん…」それだけ言うと、彼はまた視線をスマホに向けた。居心地の悪い沈黙が続く。私の手に持っていたコーヒーカップをソーサーに置いた音が響いてしまった。そっと置いたつもりだったのに。「悠、お待たせ」髭の店主がランチを彼のすぐ横に置いた。「お、今日は天ぷらか」私に向けた無表情とは一転して口元が綻んでいる。なんだ、笑顔は可愛いじゃん。店主が私と彼の間に着席したと同時に「いただきます」と手を合わせた。学校の職員以外で手を合わせてご飯を食べる人を久しぶりに見た気がする。「…で、この子何者?」私に対する視線が変わらず冷たいのは気のせいだろうか?「何者って…」苦笑いしかない。初対面でこれだけの塩対応もなかなか無いと思うんだけど。「一見さんって大抵テーブル行くじゃん。何で囲炉裏《こっち》座ってんの?」「テーブルが満席でさ。問答無用でトメさん達の洗礼を受けてたんだよ」「あー…トメさん達か…」冷たい表情から一転して同情を含んだものになる。「この子、美咲ちゃん。柿山には仕事で来たみたいだよ」「仕事?こんな山ん中に?観光地の取材とか?」怪訝そうな顔で私を見つめる眼は切れ長で、塩対応さえ無ければその顔にも見惚れていたかもしれない。「柿山小で、働くことになったんです」「「えっ?先生?」」彼も店主も目を丸くした。「はい…今日はその打ち合わせの帰りなんです」「そっかあ、先生か…。山ん中でも小学校、あるもんなあ…」蕎麦をすすろうとして箸を止めたまま、彼は罰の悪そうな顔をした。「何か、ごめんな。俺、てっきりミーハーな観光客かマスコミかと…」「ゴ
last updateปรับปรุงล่าสุด : 2026-10-12
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東風(こち)④/小濁り(ささにごり)①
視界が反転する。捕まるところが無い。全身に来るであろう衝撃に備えて目をぎゅっと瞑った。…あれ?いつまで経っても来ない衝撃に疑問を持った。代わりに、汗と煙草とシトラスの混ざった香りに包まれていることに気付いた。えっ?私、バランス崩れて倒れたんじゃ…?「…あっぶねぇな」耳に心地良い低音が私の鼓膜を揺らす。「大丈夫か?」見上げると悠さんの端正な顔が至近距離にあった。「は…はいっ!ありがとうございます」逞しい腕に包まれているという事実に気付き、慌てて反対側に体を離す。更にバランスを崩してまた倒れそうになるのを、また悠さんの腕が阻止した。桜汰にしばらく会っていないからだ。着任の挨拶と打ち合わせの帰りに寄ったゴッホの池。そこから車で少し走った先にあったログハウス風のカフェ『KURUMI』での出来事。あれからずっと、頭から離れない。初対面の男性に抱き止められたなんて!私の不注意なんだけど。囲炉裏を囲んで長時間正座していたのだから脚が痺れているのは簡単に予測出来たことだ。立ち上がった時には問題無かった。何とか歩けると思っていた。なのにどうしてふらついた、私。気がつけば至近距離に整った顔。汗と煙草とシトラスの混ざった匂いに包まれて。今でも思い出して赤面してしまう。慌てて体を離したのにまたしてもふらついて。悠さんに更に抱き止められて。腕の逞しさに更に驚いただなんて言えない。レジで私の会計を待っていた勝雄さんは目を丸くしていた。何とか段を降りてお会計を済ました。「脚、大丈夫…?」「大丈夫です。…お騒がせしました」「またおいでね」「はい、また来ます」それだけ言って店を出た。恥ずかしくて悠さんの顔は直視できなかった。抱き止められてる最中にも悠さんの端正な顔に見惚れていただなんて口が裂けても言えない。私には桜汰がいる。しっかりしろ、私!やっぱりしばらく会えてないからいけないんだ。気がつけばこないだ会ってから1ヶ月以上経っている。物理的な距離と交通の不便さのおかげでなかなか会いに行けてない。うん、よし!会いに行けばいいじゃない!次の勤務は入学式で。まだ2日間自由がある。明日、桜汰は勤務だろうけど。桜汰の家でご飯でも作って待っていればいい。『明日、桜汰の家行くね』メッセージを送ろうとした。昼間送ったゴッホの池の写真とメッ
last updateปรับปรุงล่าสุด : 2026-10-12
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小濁り②/草萌え①
「んっ…佐川…くん……はあっ…んんっ!」佐川は桜汰の名字だ。家を間違えたのだと思いたかった。でも鍵は開いたし桜汰の靴はあったし桜汰の名字を呼ぶ艶かしい声。息が、苦しい…。上手く、息が、出来ない…。逃げたい!すごく、逃げたい…。でも…逃げちゃダメな気がする。このまま現場を押さえずに泣きながら帰るのは、惨めだ。それは悔しい。だったらせめて。引っ掻き回すのみ!ガラッ!出来るだけ大きな音を立ててドアを開けた。湿気と体臭が混ざった臭いがする。そこには醜い生き物が裸で絡み合っていた。そう、醜い。ただただ、醜い。この醜い生き物が、私の彼氏だと思ってた人、桜汰だ。私の、好きだった人だ。…多分。醜い男がこちらを向いた。醜い女もこちらを向いた。「美咲…なんで…?」桜汰の掠れた声が薄暗い寝室に響いた。ドアを開けて良かった。桜汰、こんなに醜い生き物だったんだ。嫌悪感が湧き上がる。逃げ帰らなくて良かった。一人で家で泣かなくて良かった。涙よりも、ショックよりも、嫌悪感が上回るだなんて。全くの予想外だ。「美咲…」全裸のまま、桜汰が私に近づく。気持ち悪い。私じゃない女と絡み合っていたであろう全裸の桜汰を見ていたら吐き気がした。「…近づかないで。吐き気がする。…桜汰。桜汰の、全てが…気持ち悪い」「美咲」肩を掴まれる。「…触らないで」「佐川くん…?」
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草萌え②
「あんなに、やらかしたのにね…?」肘を曲げた右腕で頭を支え、不敵な笑みを浮かべたまま悠さんの視線に捕らえられる。私は微動だにすることすらできない。昨日の夜、何があった…?桜汰のマンションを飛び出した。駅で電車にすぐ乗った。鷺山駅で降りて…すぐには帰る気になれなかった。桜汰の部屋で過ごすつもりだった私は、美香子叔母さんに泊まってくる旨を伝えていた。このまま帰ると、何かを察知するであろう勘の良い美香子叔母さんと気まずい夜を過ごす事になる。それは嫌だった。駅前をふらふらしてると居酒屋が目に付いた。気分を変えたい。このまま帰るのは嫌だ。お一人様上等!勢い良く居酒屋の扉を開けた。カウンターでビールと焼き鳥を頼んで。美味しく食べているところに悠さんも同じく一人で居酒屋に入ってきた。そのまま一緒に飲んでいた。何故一緒に飲むことになったのかは覚えていないけど。私が覚えているのは、そこまでだ。「えっと…昨日一緒に、飲んだところまでは…覚えてます…」くつくつと堪えきれない笑いを零す彼。「そんなに…笑うこと、なんでしょうか…?」「何も、覚えてないんだな」顔を青くする私に我慢出来ずに破顔する彼。この状況は一体、本当に何なんだろうか?「昨日君と居酒屋でばったり会って、お互いお一人様だったから一緒に飲む事になった。君はもうすっかり出来上がってて、元彼の愚痴を延々と語っていたよ」…頭を抱えるしかない。「その居酒屋を出た後も、もう一軒行こうと俺の手を離さなかった。ところが」「ところが…?」「君はすっ転んだ。膝擦りむいて痛いって君が泣き喚くから、仕方無くそこから近かった俺の家に連れて来た。で、俺が消毒準備してる間に君は俺のベッドを占領して眠って
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