Share

第189話

Author: 北野 艾
「いつの間に、そんなに私の好みを把握したの?」

詩織が尋ねると、密は「観察です!」と胸を張る。

「ボスの好みを把握するのは、秘書として一番大事なことですから。その方が、もっときめ細やかで効率的なサービスができますし、いい仕事の関係も築けますしね」

「密の成長には本当に驚かされるわ」

詩織が素直に褒めると、密は少しだけ得意げに笑った。「私が仕えてるのが、最高のボスだからです!」

「ささ、早く食べてください。冷めたらおいしくなくなっちゃいますよ」

密に急かされ、詩織は食事を始める。密はソファの隅に座ってスマホを眺めていたが、何かを見つけたらしく、ぷんぷん怒りながら呟いた。

「っ、よくもまあ、どのツラ下げてこんな賞もらえるんだか!」

「何のこと?」仕事の手を止めずに、詩織が聞き返す。

「柏木志帆ですよ!エイジアの年間最優秀社員賞、本当に彼女が受賞したみたいです!」

詩織はぴしゃりと言った。「大げさよ。……ごちそうさま。みんなに連絡して、すぐ会議だって伝えて」

言い終えると、詩織は再び仕事に没頭した。

その日も、残業は夜十一時過ぎまで続いた。家に帰り着いたのは、もう十二
Continue to read this book for free
Scan code to download App
Locked Chapter

Latest chapter

  • 七年の恋の終わりに、冷酷な彼は豹変した   第937話

    彼らに指示を出していた不良グループのリーダー格こそが、龍二だった。彼はまだ分別もつかない未成年をそそのかし、窃盗、暴力、わいせつ行為などを繰り返させていたのだ。調書を確認すると、龍二の足の骨折は「逃走時の転倒」によるものと記録されている。だが、彼が負った怪我は足だけではなかった。腹部の睾丸も同時に激しく損傷しており、救急搬送された時には組織の大部分が壊死。修復不可能と診断され、切除手術を受けていたのだ。そしてもう一つ。彼らが襲おうとした女子高生の名前は、「江崎詩織」と記載されていた。聴取を終え、取調室から出てきた柊也に、詩織が真っ先に駆け寄る。「終わった?」「ああ、終わったよ」頷く柊也の横に立つ警察官に、詩織は尋ねた。「私たちはもう帰ってもよろしいでしょうか?」「ええ、結構ですよ」その時、同じく聴取を終えた龍二が、二人の警察官に両脇を抱えられて出てきた。無傷で立っている柊也の姿を見るなり、彼は激昂する。「賀来柊也!このまま済むと思うなよ!絶対にぶっ殺してやるからな!」「大人しくしろ!黙らないか!」警察官が厳しく叱責しても、龍二は狂ったように喚き続けた。「死ね!殺してやる!」だが、その視線が隣に立つ詩織を捉えた瞬間、彼はピタリと動きを止めた。驚愕と憤怒が入り混じった顔になる。「お、お前……!なんでお前が!」その反応に、詩織は戸惑った。彼女の記憶に龍二の顔はない。これまで接点があったとも思えなかった。だが、彼は明らかに詩織を知っていた。パニックを起こしたように、龍二は身を捩って叫ぶ。「お前のせいだ!お前がいなけりゃ、俺の足がこんなことにはならなかったんだ!」「暴れるな!」警察官が力ずくで頭を押さえつけ、そのまま奥へと引きずっていった。警察署を出ても、詩織の頭からは疑問が離れない。「どうして彼は、あんなことを言ったの?」横を歩く柊也に問いかける。「奴は頭が狂ってる。気にしなくていい」「本当にそれだけ?もしそうなら、十二年も前の恨みであなたを執拗に狙ったりしないはずよ」聴取の内容こそ知らされていないが、警察が「十二年前の事件」と口にするのだけは聞こえていた。「あなたが教えてくれないなら、直接彼に面会して聞くから」そう言い切った詩織に、柊也は少し黙り込み、やがて俯いて観

  • 七年の恋の終わりに、冷酷な彼は豹変した   第936話

    いくら松田不動産が成長したとはいえ、賀来グループの足元にも及ばない。だからこそ、浩司は踏み切れずにいた。しかし、復讐心に囚われた龍二にそんな理屈は通用しない。彼は制止を聞かず、容赦なくバットを振り上げた。狙うは柊也の膝だ。自分と同じように、惨めな障害を抱えて生き恥を晒せばいい!浩司が慌てて止めに入ろうとした、その瞬間だった。バンッ!凄まじい音と共にドアが蹴り破られ、長身の男が飛び込んできた。男の足が、一直線に龍二の腹を捉える。「ぐはっ!」吹き飛ばされた龍二は、背後の鏡張りの壁に激突し、くぐもった悲鳴を上げて崩れ落ちた。続いて、室内に男たちの絶叫が次々と響き渡る。柊也を押さえていた四人の男たちだ。彼らは次々と湊にねじ伏せられ、ゴミ袋のように龍二の足元へ投げ捨てられていった。浩司は腰を抜かしたように膝を震わせ、その場にへたり込んだ。部屋に飛び込んできた詩織は、倒れそうな浩司を避けて柊也のもとへ駆け寄る。その手は微かに震えていた。「大丈夫? 怪我はない?」「平気だよ、心配いらない」さっきまでの氷のような冷徹さは消え失せ、柊也の顔には優しい色が浮かんでいる。それでも詩織は気が気ではなく、怪我がないか念入りに彼の体を調べた。必死な彼女の様子を眺めていた柊也は、ふっと満足げな笑みをこぼす。「そんなに俺のことが心配かい?」道中ずっと生きた心地がしなかった詩織は、その問いにカッとなった。怒りと安堵が混ざり合い、言葉にならない感情をぶつけるように、彼女は柊也の首筋にガブリと深く噛みついた。そうでもしなければ、今にも体から飛び出しそうなほど高鳴る心臓を抑えられなかった。柊也は「痛っ……」と顔をしかめたが、避ける素振りも見せず、されるがままになっている。むしろ、その口角はさらに上がっていた。「よほど心配なんだな。いっそ別の部屋をとって、二人きりで隅々まで検品するか?」「……馬鹿なこと言わないで!」顔を真っ赤にした詩織が、彼の胸をポカポカと叩く。柊也はそのまま詩織を抱き寄せ、なだめるように優しく抱きしめた。一触即発の危機から一転、室内には甘酸っぱい空気が流れ始める。その様子をドアの外から覗き見ていた太一は、黙ってその場を離れた。なんだ、俺の出る幕はないか。これじゃ『美女が野獣を救う』って

  • 七年の恋の終わりに、冷酷な彼は豹変した   第935話

    「アシスタントの方?ああ、確かにうちに来ていましたが……今日は私が接待に出ていたもので、気にかけておりませんでした。今すぐ確認させますね」その時だった。電話の向こうの騒音に混じって、別の男のくぐもった鋭い声が聞こえてきた。「妙な真似はしないことだな!」「賀来柊也、お前にもこんな日が来るとはな!」「俺がこの日をどれだけ待ちわびたか、分かるか!」デスクを叩いていた詩織の指先が、ぴたりと止まった。電話の向こうで浩司がマイクを塞いだのだろう。騒がしかった背景音が数秒だけ途絶えた。やがて、再び浩司の白々しい声が響く。「江崎社長、確認してからまた折り返しますよ」詩織は息を潜め、努めて冷静に返した。「ええ、よろしくお願いします、松田社長」通話を切るなり、詩織は密に車の手配を命じた。行き先は高級クラブ『クラウン』だ。先ほどの電話の奥で、「クラウン」という単語が怒声に混じって聞こえた。浩司は今、そこにいるはずだ。密はぽかんとしている。たかが確約書一枚のために、なぜ社長自ら足を運ぶ必要があるのか。車中。「今後、松田不動産絡みの案件は他の人に振って。彼にはやらせないで」密は理由が分からないまま、ひとまず頷いた。確約書の回収など、本来ならアシスタントがこなすただの雑務だ。新人の柊也に任せるのは、業務としてごく自然なことだった。だが問題は、浩司と柊也の間に過去の深い因縁があることだ。だからこそ、柊也が松田不動産へ向かったと知るや否や、詩織は真っ先に電話を掛けたのだ。詩織は柊也のスマートフォンにも発信した。だが、コール音が虚しく響くだけで誰も出ない。「運転手さん、もっと急いで!」胸のざわめきを抑えきれず、詩織はたまらず声を荒らげた。高級クラブ『クラウン』。詩織との通話を終えた浩司は、スマートフォンを懐にしまい、VIPルームへ戻ってきた。その顔には陰湿な笑みが張り付いている。彼は嘲るように言い放った。「あの賀来社長がヒモに成り下がるとはな。女の尻に敷かれてアシスタント気取りとは、世間が聞いたら腹を抱えて笑うぜ」柊也は数人の男に両肩を押さえつけられ、椅子に座らされていた。それでも、彼が放つ圧倒的な威圧感は少しも衰えていない。浩司を見据える瞳には、虫ケラでも見るような冷酷な軽蔑が宿っていた

  • 七年の恋の終わりに、冷酷な彼は豹変した   第934話

    詩織がオフィスに入るなり、密が温かいハーブティーを持ってきた。「コーヒーをもらえる? 昨夜はあまり寝付けなくて」詩織が眉間を揉みながら言うと、密は首を横に振った。「賀来さんから止められてるんです。疲労で体がストレスを感じている時にカフェインを摂ると、神経が刺激されて動悸や手の震え、不安感を引き起こすからって。だから、わざわざリラックス効果のあるお茶を用意するように言われて」密はカップを詩織の前に押しやり、意味ありげにウィンクした。「さあどうぞ、特製の愛情ティーですよ。賀来さんが朝一番に会社に来て淹れてくれたんですから。お店じゃ絶対買えませんよ」「……あんた、最近ちょっとおしゃべりすぎじゃない?」密は「おっと」という顔をして、口にチャックをするジェスチャーを見せた。詩織はパソコンを立ち上げ、黙々と仕事に取り掛かる。手元の愛情ティーは……意外にも、ホッとする美味しい味だった。昼。会議を終えてオフィスに戻ると、また密が昼食を運んできた。高級割烹『花月』の特製ランチ。以前、詩織がよく通っていた店だ。当然ながらデリバリーなどはやっておらず、前もって特別に手配しなければ手に入らない代物である。詩織がジロリと密を見ると、密は自分の口を指差し、「おしゃべり禁止期間なので」とアピールした。聞くまでもなく、答えは分かっている。誰あろう『花月』の裏のオーナーは、太一なのだから。詩織はスープを一口飲んだ。じんわりと温かく、奥深い味わいだ。ただ旨味を押し付けるのではなく、体に染み渡るように、食材の良さが静かに調和している。なぜか、このスープから柊也の姿が連想された。今の彼は、なんだかこのスープに似ている。今朝、マンションまで朝食を届けてくれてから、一度も彼の姿を見ていない。それなのに、彼が常に自分のそばにいるような気がする。いつの間にか、すっかり彼のペースに絡め取られていた。二口目を飲む前に、詩織は柊也にメッセージを送った。【お昼、食べた?】即座に返信がきた。【食べたよ】【何してるの?午前中ずっと姿を見なかったけど】そう打ちかけて、詩織は手を止めた。これでは、まるで自分が彼のことを気にしているみたいではないか。結局、打った文字をすべて消去し、スマホを置いて昼食に専念した。午後。

  • 七年の恋の終わりに、冷酷な彼は豹変した   第933話

    ある重要な会話が脳裏をよぎったのだ。『十二年前、江ノ本第一高校の校門前にある売店だったよな。お前と詩織、付き合ってるって周囲に公言してたじゃないか』当時のことを、なぜ柊也がそこまで詳しく知っているのか。その疑問は一時間以上経っても解けず、ついには目覚まし時計が鳴り響いた。結局、一睡もできないまま洗面所へ向かう。いつもより早く起きてしまったため、まだミキの朝食は用意されていない。ゆうべ遅くまで付き合わせてしまった負い目もあり、詩織は下の店で何か買ってこようと考えた。上着を手に取り、玄関へ向かおうとしたその時、柊也からメッセージが届く。【起きたか?】靴を履きながら、短く返した。【うん】【ドアを開けてくれ】詩織の手が止まった。片方の靴を履きかけのまま、慌ててドアを開ける。そこには、いつからいたのか、朝食の包みを下げた柊也が立っていた。「自分で作る時間はなかったから、店で買ってきた。とりあえずこれで済ませてくれ」柊也は声を潜めて言った。まだ寝ているであろうミキを気遣ったのだろう。彼女に気兼ねしているというよりは、詩織を板挟みにさせたくないという配慮だった。「あなたは?」詩織が包みを受け取りながら尋ねると、柊也は微かにほころんだ顔で答えた。「俺はもう済ませた」彼女が気遣ってくれたことが、たまらなく嬉しかったのだ。それでも、いつまでもここに居座るわけにはいかない。名残惜しそうに視線を彷徨わせた後、彼はそっと手を伸ばし、詩織の頭を軽く撫でた。「ほら、戻れよ。熱いうちに食え。冷めると美味くないからな」詩織は何か言いかけたが、奥の部屋からドアの開く音が聞こえてきた。これ以上の長居は危険だ。彼女は慌てて扉を閉める。ほぼ同時に、寝室からミキがあくびをしながら現れた。「あー、今朝ごはん作るから、五分だけ待って」「いいよ、朝ごはんならあるから」詩織はずっしりとした包みを手に、ダイニングテーブルへ向かった。五人分はあろうかという、かなりの重さだ。「えっ、あんた買いに行ったの?」テーブルに広げられた豪華な朝食の品々を見て、ミキが目を丸くする。「……うん。ミキにはもう少し寝ててほしかったし」詩織は視線を逸らしながら答えた。「それにしても買いすぎじゃない?」「どれも美味しそ

  • 七年の恋の終わりに、冷酷な彼は豹変した   第932話

    冬を迎えた明け方の空気は、肌を刺すほど冷たかった。部屋着の上にカシミヤのコートを羽織って降りてきたが、それでも凍てつくような夜の冷気を防ぎきれない。しかし近づいてみて初めて、詩織は息を呑んだ。柊也は上着すら着ていなかったのだ。おそらく、詩織が店を飛び出した後、個室にコートを取りに戻る時間すら惜しんで、あの薄着のままここまで追いかけてきたのだろう。ふつふつと怒りが湧いてきた。自分の体をちっとも労ろうとしない彼に対する怒りだ。もし私が途中で目を覚まさず、そのまま朝まで寝ていたらどうするつもりだったの?この寒空の下、夜明けまで立ち尽くしているつもりだったのだろうか。本当に、この人は馬鹿じゃないの!?つい最近大病をしたばかりで、やっと少し回復してきたというのに、またこんな無茶をして。自分を、血の気の多いハタチそこそこの若者だとでも思っているのだろうか。もう三十四歳なのに。その上、腎臓だって一つないというのに……その「失われた腎臓」のことを思い出すと、詩織はツンと鼻の奥が痛くなった。怒りは跡形もなく消え去り、どうしようもない切なさが胸を締め付ける。彼女は自分のカシミヤのコートの前を広げ、冷え切った彼をその中に包み込むようにして、自らギュッと抱きついた。冷たい。厚手のコートを着ているというのに、彼がまとっている夜の冷気が、肌を刺すように伝わってくる。柊也もそれに気づき、慌てて彼女の肩を軽く押しとどめようとした。「離れろ。……俺の体、冷え切ってる」本当は、狂おしいほど彼女を抱きしめたかったはずなのに。「いいから」詩織は彼の腕を振り切り、さらに強く抱きついた。自分の体温を、少しでも彼に与えようと必死だった。深夜の静まり返った通りで、二人は冷たい風に吹かれながら抱き合っている。その光景は、かつて出張先の北国で、吹雪の中に閉じ込められた夜の記憶を呼び覚ました。ただあの時、凍えるほど冷え切っていたのは詩織の方だった。あの時のライター。柊也が凍えた彼女を温めるために、自分の掌を何度も炎で炙り、その熱を移してくれた。熱さに耐える彼の、あの苦悶に満ちた表情。「……説明なら、明日だってよかったじゃない」詩織は小さく息をついた。「メッセージでも電話でもよかったのに。こんな夜中に下まで来て、ずっと

  • 七年の恋の終わりに、冷酷な彼は豹変した   第228話

    まさか、柊也がこれほど暇人だったとは。確かにアポは取られていた。だが、その用件はすでにリードテックの須藤を通じて解決済みのはずだ。今さら何のためにここへ来る必要がある?まるで見当がつかない。厄介なのは、『正規の手順を踏んだ面会予約は断らない』という社内ルールを定めたのが、ほかならぬ詩織自身だということだ。ここで門前払いをすれば、自分の顔に泥を塗ることになる。「……わかったわ、通して」詩織は渋々折れた。ドアがノックされ、柊也が社長室に入ってきても、詩織はPC画面から視線を外そうともしなかった。画面上の数字を追ったまま、事務的に問いかける。「賀来社長、何か御用で?」「ま

  • 七年の恋の終わりに、冷酷な彼は豹変した   第225話

    つまり、『華栄』と『ココロ』に対する志帆の賠償金は、すべて柊也がポケットマネーで肩代わりしたということになる。昼間、志帆の前で少し脅しをかけただけで、その日のうちに即金で支払われるとは。そのあまりの対応の早さに、詩織は乾いた笑いを漏らすしかなかった。まさしく、真実の愛、というやつだ。「……詩織さん?」応答がないのを不審に思ったのか、智也の声が受話器から聞こえてくる。詩織は我に返り、スマホを裏返して机に伏せた。「ごめんなさい、ちょっと通知を見てただけ。続けて」……詩織が入札に参加しようとしている事実は、まだほとんど知られていない。『華栄』のような新興企業が巨大な官公庁案件

  • 七年の恋の終わりに、冷酷な彼は豹変した   第236話

    普段はこうした色恋沙汰には我関せずの海雲が、珍しく口を挟んだ。「その子は、息子の彼女などではない」一瞬、場が凍りつく。「えっと……、あちらにいらっしゃいますよ。賀来社長のお連れ様は」相手は慌てて釈明し、別の方角を指差した。詩織が視線を追うと、そこには取り巻きに囲まれた志帆の姿があった。奇しくも志帆も、詩織と同じ黒のドレスを纏っている。だが二人の雰囲気は対照的だった。志帆は巻き髪を華やかに散らし、メイクも鮮やか。全身にフルセットのダイヤモンドジュエリーを輝かせ、シャンデリアの光を独占していた。一目で高級品と分かる代物だ。対する詩織は、額を全て出した潔いアッ

  • 七年の恋の終わりに、冷酷な彼は豹変した   第223話

    賢は智也の名を以前から耳にしていたらしく、熱心に握手を交わしている。その光景を横目に、志帆たちの乗ったエレベーターの扉が閉まり、下降を始めた。密室になった途端、美穂が毒づく。「なんなの、あの篠宮って男!気取っちゃってさ。お姉ちゃんを口説いてる時はあんなに必死だったくせに、振られた途端に手のひら返しで冷たくするとか、マジでありえないんだけど!」「やめなさい」志帆は鋭い声で制した。「その話はもうしないで。柊也くんの前でも、もちろん彼本人の前でも、二度と言わないでね」美穂はペロッと舌を出した。「分かってるよ。柊也さんが妬いたら面倒だもんね。ここだけの愚痴だってば」「嫉妬とか、そう

More Chapters
Explore and read good novels for free
Free access to a vast number of good novels on GoodNovel app. Download the books you like and read anywhere & anytime.
Read books for free on the app
SCAN CODE TO READ ON APP
DMCA.com Protection Status