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第612話

Author: 北野 艾
小春をようやく寝かしつけた詩織は、ふとスマホの画面に目を落とした。ミキからメッセージが届いている。

【ねえ詩織、私また資産増えちゃった?】

【へっへっへ、私もいよいよ小金持ちの仲間入りね!】

【ていうかさ!ゲス帆の会社、上場審査落ちたってマジ!?】

その後に続くのは、六十秒いっぱいに吹き込まれたボイスメッセージが三連発。

再生する勇気はなかった。うっかり押せば、苦労して寝かしつけた小春が起きてしまう。それに聞かずとも、内容は想像がつく。

ミキのふざけたアカウント名『六十秒の美少女戦士』は伊達じゃない。彼女のエネルギーは今日も健在だ。

詩織は慣れた手つきで文字を打った。

【あんた今、山奥で撮影中じゃなかったの?よくそんな暇あるわね】

送信から二秒も経たないうちに、ミキからビデオ通話がかかってきた。

マナーモードにしておいて正解だった。

詩織はスマホを握りしめ、そっとバルコニーへ出て窓を閉めてから応答ボタンを押した。

「詩織ィィィ!愛してるーっ!!」

開口一番の絶叫に、詩織は思わず顔をしかめる。「ちょっと、まともに喋って」

「これ以上ないくらい本心からの叫びよ!
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