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第359話

Author: アキラ
三拝の儀を終え、新郎新婦は住所へと送られる。

章清暖はそのまま赤い紐を手に前を歩き、喬念を閨房へと導いた。

章何が人嫌いだと知られていたせいか、あるいは章衡の方が頼りがいがあると見なされたせいか、喬念の後ろには凝霜を除いて、他の者は誰もついてこなかった。

そして、少し歩いたところで、章清暖は手にしていた赤い絹の紐を喬念の懐に押し付けた。「よくもまあ、かのようななことを思いつかれたものじゃ。わたくしに代わりを務めさせるとは!」

章清暖がそう言う時の表情は、どこかぎこちなかった。

何しろ、彼女と喬念は幼い頃から喧嘩ばかりの間柄だった。かつて、喬念が洗濯番に入れられた時はしばらく喬念の不幸を喜び、喬念が出てきてからはさらに冷ややかな嘲笑を浴びせていた。

あの時、水に落ちたところを喬念に助けられて初めて、喬念に対する嫌悪感が少し和らいだのだ。

だが、結局のところ、二人の仲が良いわけではなかった。

喬念はそれを聞いて微笑むと、手にしていた赤い絹の紐を丸めて後ろの凝霜に渡し、それから言った。「わたくしも愚かではないゆえ、当然、自分にとってより良い選択をするまでよ」

章衡より、章清暖の方が適任だったのは間違いない。

その言葉を聞いて、章清暖はしかし、いぶかしげに尋ねずにはいられなかった。「されど喬念、昔は衡兄上が一番好きではなかったか?」

それがどうして今は、これほど嫌うようになったの?

若い頃の想いについて、喬念は否定するつもりはなかった。あれほど熱烈だったのだ、心にやましいことは何もない。

すぐさま、彼女はただ軽く肩をすくめて笑った。「そなたも言うたであろう、それはかつてのことじゃと」

喬念があまりにもあっけらかんと笑ったせいか、章清暖はそっと眉をひそめ、足を止めて彼女を見つめた。

「喬念、衡兄上に代わって詫びらせて」

章清暖も、もし章衡が勅命を願い出なければ、喬念はすでにもっと広い世界へと旅立っていたはずだと知っていた。

それなのに今、喬念は章家に閉じ込められるだけでなく、何殿に嫁がねばならない......

もちろん、何殿もまた良い人であることは知っている。しかし、喬念は生涯、未亡人同然の生活を送る運命なのだ!

彼女に言わせれば、章衡が喬念を不幸にしたのだ。

喬念は章清暖が突然そんなことを言い出すとは思ってもみなかったので、一瞬、どう
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