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第489話

Author: アキラ
喬念はそう言うと外へ出ようとしたが、思いがけず章母がかえって慌てて彼女の手を掴んだ。

満面に申し訳なさそうな表情を浮かべていた。

「念々、母はそなたの成長を見守ってきたのだが、申し訳ないことをした。せめてこの腕輪を......」母はそう言いながら、自分の手首の腕輪を喬念の方へ押しやろうとした。

ところが、まだ喬念に着けさせる前に、止められてしまった。

喬念は母の手を押しとどめ、口元に笑みを浮かべた。「伯母様、かのようなことはなさらないでください。わたくしは元々去るつもりでございました。今ただ少し早まっただけでございます。この玉の腕輪、わたくしには分不相応にございます」

ましてや、彼女の手首には、とうに既に一つ玉の腕輪があった。

色合いは良くないが、彼女にとってはかけがえのない大事なものだ。

他の腕輪を嵌めれば、この腕輪を外さざるを得なかったからだ。

喬念はゆっくりと自分の手を引き抜き、それから身を翻し、立ち止まることはなく駆け出した。

凝霜は喬念が出てきたのを見て、慌てて近寄った。

だが、喬念は一言も発せず、まっすぐに外へと向かった。

凝霜はもちろん何も尋ねず、足早に後を追った。

どこへ行くのかと思いきや、なんと喬念が嫁ぐ前の小さな屋敷に着いた。

凝霜はそこでようやく堪えきれず口を開いた。「お嬢様、何事がございましたか、どうしてわたくしたちは戻ってきたのでございますか?」

喬念はそこで初めて身を翻し、凝霜を見て、静かにため息をついた。

「何殿と離縁した」

その言葉を聞き、凝霜は瞬時に目を見開いた。「どうしてでございますか?若旦那様はまだご昏睡遊ばされて......奥方様でございますか?先ほど......」

喬念は微かに頷き、凝霜の推測を肯定した。

凝霜はしかし理解できなかった。「なぜでございますか?」

若様と彼女のお嬢様はこんなにも仲睦まじいのに、章母はどうしてそんなことを?

凝霜にはどうしても理解できなかった。

喬念はしかし彼女の言葉には答えず、ただ低い声で言った。「章衡は今もまだ祠堂でひざまずいております。今は急いで支度をして、都を離れますわ」

章母の言葉は、たとえ心を傷つけるものであっても、今が確かに彼女が都を離れる絶好の機会であることは否定できない。

この十二刻の間に、遠くへ逃げなければ、二度と章衡に付きまとわれ
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