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第57話

Auteur: みそ煮
last update Date de publication: 2026-03-29 10:57:48

「兄さん、私に一体何の用ですか」

瀬奈は泰西を見上げた。顔は父親にそっくりで、身長も百八十を超えている。そして性格は、冷酷で残忍だった。何の利益ももたらさない出来損ないの妹一人、切り捨てることなど彼にとっては容易いだろう。

昔はそんな兄が恐ろしくて、顔を見て話すことすらできなかった。だけど今は違う。守るものができると、人は変われるのだ。

「……」

泰西は瀬奈を見下ろしたまま、何も言わなかった。今は父親の会社の役員として働いていると聞いていたが、口数が少ないところは昔から変わっていないようだった。

「用が無いなら、私たちは行きます」

「待て」

この場を立ち去ろうとする瀬奈を、泰西は引き留めた。

「せっかく二十年ぶりに妹の顔を見に来てやったんだ。今日はお前の誕生日だろう?」

「……覚えていたんですか」

瀬奈は泰西が自身の誕生日を記憶していたことに驚いた。もしかすると、兄は多少なりとも自分を気遣ってくれていたのか。一瞬そんなことが頭をよぎったが、すぐにかき消した。

もし気にかけていたとしたら、二十年間一度たりとも連絡してこないのはありえない。今回ここへやって来たのも、ただ自分をからかいたい
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