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第4話

Auteur: 青いトマト
「二人で行けば?私、明日用事があるの」

軒也は眉をひそめて言った。「結婚写真より大事な用事なんてあるのか?

先に写真撮ってて。買い物には俺が付き合うから」

彼は強引な口調で、一切の拒否を許さない雰囲気を醸し出していた。

慧奈は甘えるように言う。「ねえ、お姉さん、もしかして、私のせいで行きたくないわけじゃないよね?」

これ以上揉めるのも面倒だったので、私は頷いて承諾した。

朝早く、軒也が慧奈の部屋で、低い声で彼女を起こしているのが聞こえた。

カレンダーの赤い数字が目に入る、あと四日。

四日後には、この生活ともきっぱりおさらばできる。

私はもう待ちくたびれてイライラし始めていた頃、やっと二人はのんびり部屋から出てきた。

軒也はやけに親切に慧奈の顔を拭いてあげていた。

昔の私、本当に馬鹿だった。ただ結婚すれば、彼も私にこんな風にしてくれると、無邪気に信じていたのだから。

ぼんやりしていると、軒也が妙に照れくさそうに近寄ってきて、小さな指輪を手にして言った。

「俺たち、正式な結婚式を行ってないじゃん。だから買ってきた」

私は受け取らなかった。前世ではそんな指輪、そもそも無かった。

慧奈が見るなり、口を尖らせて「わぁ、可愛い!私も欲しい!」と言った。

私はあっさりと「じゃあ、あげるよ」と言った。

途端に軒也の顔が真っ黒になった。「やめろよ、それは俺たちの結婚指輪だぞ!」

慧奈は指輪を奪って自分の指にはめ、軒也に手を振ってみせる。

「軒也、私似合う?」

軒也は慧奈を見て、目に甘さを滲ませながら、馬鹿みたいに頷いた。

そして、気まずそうに私の方をちらりと見て、小声で言う。

「次は、次はちゃんとお前に買うから」

私はどうでもいいという顔で頷いた。

そんな約束、何度も聞いた。けれど、一度だって守られたことはない。

写真館に着くと、まず慧奈が一人で撮影した。しかも、軒也とのツーショットもたっぷりと。

いよいよ私と軒也の番。カメラマンが一度レンズを構えたが、すぐに困ったように言った。

「すみません、フィルムがもう切れちゃって……」

内心ガッツポーズしながらも、顔には何の感情も浮かべずに言う。

「じゃあ、もういいよ」

写真館を出ると、軒也がポケットから切符を一枚差し出してきた。

四日後、京市行きの立ち席の切符だった。

「お前を置いていくつもりはない。先に俺が京市で準備して、お前を待ってる」

ここから京市までは三日三晩。彼は私が立ちっぱなしで大丈夫だと思ってるのか。

しかも、同行できる軍人家族の枠は一人だけ。

私が行ったところで、どこに住めって言うの?

今さら聞いたところで、良い答えなんて返ってこないだろう。

私が切符を受け取ると、軒也はほっとしたように息をついた。

「心配しなくていい。たとえ家族寮に住めなくても、お前は俺の唯一の妻だ。慧奈のことは妹としか思ってない」

彼がこんなに優しい言葉をかけてきたことなんて、今まで無かった。

少しだけ心が揺れる。

その時、角を曲がって一台の車が突っ込んできた。まっすぐ私たちの方へ。

軒也は慧奈を抱き寄せて、素早く身をかわした。

誰かに押されたのか、私はバランスを崩して道に飛び出す。

視界の中、車が私に向かって迫ってきた。けれど、体が恐怖で固まって動けない。

車が急ハンドルを切って、私を跳ね飛ばし、引きずっていく。

激痛で視界が暗くなり、冷たい汗が止まらない。

運転手が慌てて車から飛び出し、おろおろしながら私に尋ねる。

「お、お嬢さん!大丈夫ですか!?」

人だかりが次第にできはじめ、あちこちから指さされたり、ひそひそと噂されたりした。

私はその人混みの向こう、軒也をまっすぐ見据えた。

彼は慧奈を抱きしめ、彼女を必死に慰めている。私のことなど、まるで見えていないかのように。

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