亡き先代の番に囚われたΩ宰相は、息子である若きα摂政に夜を暴かれる

亡き先代の番に囚われたΩ宰相は、息子である若きα摂政に夜を暴かれる

last updateLast Updated : 2025-10-27
By:  悠・A・ロッサUpdated just now
Language: Japanese
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αである帝国宰相セイランは、かつて亡き英雄アレクシスと番(つがい)を結んでいた。 その死を経て、彼が育てたのは――英雄の息子であり、皇帝の後継者となる少年・カイ。 養父として与えた庇護と教養。だが成長したカイ(β)は、番の刻印を刻むことで、今度はセイランを手に入れようとする。 「父上、あなたのすべてを、俺にください」 重なる罪と愛、政と欲望。 帝国の運命を背負いながらも、ふたりは背徳の境界を越えて、番《つがい》として結ばれる。 ――これは、育てた子に番として奪われた男と、父の影を超えて愛を誓う青年の、血と罪にまみれた永遠の恋の記録。 ※本命以外との関係描写あり(最終的に本命と結ばれます)。

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Chapter 1

第1話 金の宰相と黒の跡継ぎ

 静かな寝室に、甘く重い香が満ちていた。

 肌に触れた舌先が、ぞくりとした痺れを残していく。

 セイランは目を伏せたまま、肩をわずかに震わせた。

「……痕、疼くだろ?」

 囁きと共に、アレクシスの唇が首筋へと降りていく。

 熱を帯びた吐息が番《つがい》の痕に触れるたび、そこだけが脈打つように疼いた。

 舌が、ゆっくりと痕をなぞる。繰り返し、円を描くように。

 そのたび、セイランの背が弓なりに反る。

 「や、っ……あ……」

 喉奥から洩れた声は、甘く震えていた。

 まるで、痕が記憶していた疼きを呼び起こされたように、身体が熱にきゅっと縛られる。

 そして──ふいに。

 その痕を、アレクシスの唇がやさしく噛んだ。

 「……っ♡」

 セイランの身体が跳ね、腰が浮く。

 瞬間、脚の奥まで痺れるような衝撃が走った。

 甘噛みはすぐに、名残を惜しむように舌へと変わる。

 ぬるりと、濡れた舌が傷跡を撫で上げ、唇がその痕に吸いつく。

 ちゅ、……ちゅぷ、と濡れた音が静寂に落ちた。

「やめ……そんな、そこばかり……っ♡」

 肩を震わせながら、セイランは抗おうとする。

 けれど、抗うほどに熱が深く染みこみ、腰の芯まで疼きが達していく。

 首筋を刻まれながら、すでにその身体は──

 愛と罪の記憶に、ゆっくりと溺れはじめていた。

***

 それは、カイが五歳の頃だった。

 帝都ラティナスの東端に佇む、ひとつの私邸。

 帝国宰相セイラン=ミラヴィスが静かに暮らすその屋敷に、ひとりの幼子がいた。

 名は、カイ=アレクシオン。

 戦乱のさなかに両親を失い、幼くして天涯孤独となった。

 彼を引き取ったのが、かつてカイの父と共に戦場を駆けた、ひとりの英雄――セイラン=ミラヴィスだった。

 その夜、私邸の灯りはすでに落ち、子ども部屋ではカイがぐっすりと眠っていた。

 ……はずだった。

 廊下に微かな物音が響く。

 ぱた、ぱた、と小さな素足がカーペットを踏む音。

 カイは目を覚ましていた。

 眠りの淵から何かに呼ばれるように目を開けた彼は、胸の奥に妙なざわめきを覚えていた。夢を見ていたような気がするが、内容は思い出せない。

 そのまま部屋を抜け、廊下を歩く。

 ──ふと、寝室の方に、わずかな光を見つけた。

 扉は、かすかに開いていた。

 そっと近づき、隙間から覗いたその先。

 そこには、大人の男が二人いた。

 一人は、セイランだった。

 カイにとって、父のような人。

 いつも冷静で、優しくて、凛としていて──何があっても守ってくれる存在。

 けれど、その夜のセイランはどこか違って見えた。

 ゆるくほどけた金の髪が、頬にかかっている。

 襟元は少し乱れて、白い肌が夜灯に淡く浮かび上がっていた。

 伏せた睫毛が長く、目元はどこか潤んで見える。

 頬がほんのりと赤い。

 それは熱のせいなのか、それとも、隣にいる男のせいなのか──

 その姿があまりにも綺麗で、胸がどきん、と跳ねた。

(……セイラン、なのに……)

 そう思ったときには、もう目が離せなかった。

 なぜか喉が渇いて、息がしづらくなって。

 けれど怖くはなかった。ただ、胸が苦しかった。

 ふたりは、触れ合っていた。

 肩を、胸を、額を寄せ合い、何かを言葉にせず伝えているようだった。

 それは、カイがこれまで見たことのない親密さだった。

 肩を寄せ、指が首筋をなぞる。額が触れそうなほどの距離で、息が重なる。

 ふたりの間に漂っていたのは、愛しさだけじゃない。

 なぜか、ほんの少し──こわさと、いけなさが混ざっていた。

 ──何か、見てはいけないものを見ている気がした。

 でも、目を離せなかった。

 ふいに、鼻腔に香が流れ込んだ。

 少し甘くて、花でも果実でもない、不思議な匂い。

 胸がきゅうっと締めつけられるような感じがして、カイは息を詰めた。

 その時、背を向けていたもう一人の男が、ゆっくりと振り返った。

 漆黒の髪が揺れ、銀の筋を宿した瞳が、まっすぐにカイを射抜いた。

 空気が止まり、鼓動の音だけが耳の奥に響く。

 その顔には──見覚えがあった。

 アレクシス=アレクシオン。

 カイの、死んだはずの父。

 そして彼は、笑った。

 静かに、確かに、ゆっくりと。

 それは安らぎでも、懐かしさでもなかった。

 自信と、支配と、悦びが滲んだ笑み。

「これが俺のものだ」と、まるで見せつけるような──

 すべてを知っている者の、勝者の笑みだった。

 次の瞬間。

 彼はセイランの肩に手を添え、ゆっくりと顔を寄せ──

 その白い首筋に、迷いなく歯を立てた。

 ……それが「つがいの証」だと、カイが知るのは──もっと、ずっと大きくなってからのことだった。

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第2話 幼き誓い
 朝の陽が、私邸の書斎を斜めに照らしている。  広くはないが整えられたその部屋の中、セイランは静かに書き物を続けていた。 卓上には、整然と並べられた書類と封蝋済みの報告書。  私邸での朝も彼にとっては「執務の延長」であり、  公務と報告が、日々絶え間なく届く。 ペン先が紙を滑る音だけが、静けさの中に響いていた。 そんなとき──  襖の向こうから、小さな足音が近づいてくる。 ぱた、ぱた、と。  寝起きの足取りで、まっすぐに。 セイランは、ペンを止めた。 やがて、そっと扉が開かれる。 そこに立っていたのは、寝間着姿のカイだった。  目元は少し眠たげで、髪はまだ寝癖で跳ねている。  けれど、どこか不安げに、足元に小さな枕を引きずっていた。 セイランは何も言わなかった。  ただ、手元のペンを静かに置いて、椅子を引いた。 そして、無言のまま、腕を広げる。 カイは一瞬だけ躊躇い、けれど次の瞬間には飛び込んでいた。  すとん、と胸元におさまる。  小さな手が、服の裾を握る。「……おはよう、セイラン」 「おはよう、カイ」  セイランの声は、いつもより少しだけ低くて、柔らかかった。 しばらく何も言わず、ただ抱かれていた。  小さな手が、セイランの服をそっと握る。  髪が揺れ、鼻先が襟元に沈んだ。    ─昨夜と同じ匂いがした。  むせかえるほど甘く、微かに熱を帯びた香りが、胸の奥を揺らす。  それは、ざわざわと、身体の内側を目覚めさせる匂いだった。「……ねえ、セイラン。きのうの夢、変だった」 「どんな夢だった?」 「セイランが……誰かにつれていかれる夢」 その言葉に、セイランの手が一瞬だけ止まる。 目に見えて動揺したわけではない。  けれど、ごくわずかに瞳が細められた。「……誰に?」 カイは、セイランの胸に顔を押しつけたまま、小さく息を吸った。  ──言おうとして、言葉が止まる。(アレクシス。僕のほんとのお父さん) でも、それを口にしてはいけない気がした。 夢だと思っていたはずなのに。  本当は、知っている。  昨夜、あの光の中で見たものは── けれどカイは、ただ小さく首を振って言った。「わかんない……でも、すごくこわかった」 「……怖がらなくていい。俺はお前を置いていかない。そう約束した
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第3話 還るべきは、この腕
 その夜、宰相官邸の書斎には、まだ明かりが灯っていた。 帝国宰相セイラン=ミラヴィスは、執務机の前にひとり、手帳を閉じていた。 日付は、明日──「将カイ=アレクシオン」が帰還する予定の日だった。 ──七年ぶり、か。 その言葉を胸の内で繰り返したとき、手のひらがわずかに震えた。書き終えた手帳を閉じる指が、いつになく慎重になる。ふと、七年前の春を思い出していた。 送り出したのはカイが十六歳の時だった。あどけなさが残っていた。剣の握り方も、軍靴の歩き方もぎこちなかった。父親とは違う──どこか暖かみのある漆黒の瞳だけは、いつもまっすぐだった。 あの時、自分は言った──「無理をするな。背を預けられる指揮官になれ」と。  カイは「はい、父上」と笑った。  幼さの残るその笑みに、どこかホッとした自分がいた。(まだ、似ていない) そのことに、安堵していたのだ。 けれど、七年。  戦場にいた。  剣を交え、人を導き、血を浴び、そして生き延びた。  あの子が大人になっていることは、当然で、当然なのに── 怖いと思った。 もしも、あの男に似ていたら。表情が、声が、背の傾け方が、指の動かし方が。思いがけないところで、記憶の亡霊が揺れるのではないかと。 ……怖い。けれど、それでも。 あの子が「父上」と呼んでくれるなら。  俺はまた、明日を信じられる気がする。 ずっと、待っていたのだ。 小さなころは、毎朝書斎に来て膝に乗ってきた。抱きしめれば、ふわっと太陽のような髪の匂いがした。寒い日には布団から出たがらず、熱を出せばこちらを呼び、叱れば唇を噛んで耐えた。 泣くことはほとんどなかった。強い子だった。けれど眠る前、そっと手を伸ばして服の裾を掴む夜が何度もあった。 守りたかった。すべてを賭けてでも。あの子は、あの男が残した命で──でも、それだけじゃない。セイランが育ててきた。  目を見て、声を聞いて、抱きしめて、名を呼んできた。 愛していた。  自分の子として、大切に、大切に、愛してきたのだ。 手帳を閉じ、灯りを落とす。  明日、あの子が帰ってくる。  ──けれど、出迎える言葉は、まだ決まっていない。  何を言えばいいのか。どう迎えればいいのか。  「父」としてか、「宰相」としてか、それとも── 宰相セイラン=ミラヴィスは
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