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第1222話

Author: リンフェイ
涼太はどうしても明凛に一体何事なのか話そうとしなかった。「姉ちゃん、携帯を唯花姉さんに渡して、俺からちょっと話すから」

明凛はぶつくさと呟いた。「私があんたの姉でしょ。それにうちの事情なのに、私には言わないで唯花には話す気?クソガキ、この私に秘密にできるとでも思ってんの?」

そうグチグチと言ったものの、明凛はやはり携帯を唯花に渡して言った。「涼太のあのクソガキが私を裏切るのよ。私に秘密にしようとすんの。一体何があったのかわからないけど、あなたに話すんだってさ」

唯花は笑ってその携帯を受け取り、電話の向こうにいる涼太に尋ねた。「涼太君、どうしたの?話してちょうだい、秘密にするから。お姉さんには絶対に教えないわ」

実際は、明凛はすでにその携帯にピタリとくっついていたのだ。涼太が話してしまえば、明凛もその内容を聞くことができる距離だ。

彼女は弟の話を聞いて好奇心をくすぐられ、自分の家で一体どんな面白いことがあったのか知りたくて知りたくてたまらないのだ。面白いし、いい事だと言うので、彼女はどうしてもそれがどんなことなのか予想することができなかった。

「唯花姉さん、姉ちゃん今近くにピッタリくっついて盗み聞きしてないですか?外に出てください。うちの姉ちゃんに聞こえないなら話しますから」

涼太は自分の姉のことをよく理解している。

唯花は親友を見つめた。

「信じらんない。このガキ、千里眼でも持ってるわけ?」

明凛は弟を罵った。

唯花は笑いながら立ち上がると店の外に出た。明凛にはついてこさせないようにした。

明凛は唯花が何があったのか知れば、きっと自分に教えてくれると考え、一緒に外には出ていかなかった。

涼太が唯花に何を話したのかわからないが、数分後、唯花が店の中に戻ってきて、ニヤニヤしながら携帯を明凛に返して言った。「明凛、店のことは私に任せて、今すぐ家に帰りなさいよ。

ここにはボディガードの田村さんと中野さんもいるから、彼らが手伝ってくれるわ。安心して帰って」

「一体何があったのよ、おかしいわね。唯花、あの子なんて言ってたの?教えてよ」

明凛は答えがわからずソワソワした気持ちで、どうも痒いところに手が届かないようなむずがゆさに襲われていた。親友と弟が何があっても彼女に教えてくれないのだ。

「帰ればすぐわかることよ。今教えたら喜びが半減しちゃうでし
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