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第785話
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交際0日婚のツンデレ御曹司に溺愛されています 第788話
「年が明けたら、H市の子会社に行かせて、数年間仕事の経験を積ませよう。内海さんのことを完全に諦めて、男としての自覚がちゃんとできたら、また本社に戻すことにしよう。それから二年ほど耐えて、ちゃんと責任が持てるようになったら、金城グループを継がせるんだ。もし立ち直れず、自分の責任も持てないなら、金城家の将来のために、後継者を変えるしかないな」健司はもちろん自分の息子に金城グループを継いでほしいが、それは息子がその責任をきちんと持てる場合の話だ。もし息子が愛を自分の将来より優先させるなら、彼は多くの甥の中から新たな後継者を選ばざるを得ない。すると、伊織の顔色が変わった。彼女は唇をすぼめてから、口を開いた。「じゃあ、年が明けて、四日からあの子をH市に行かせましょう。それから、小遣いも一切あげないことにするわ。琉生はもう仕事をし始めたから、ちゃんと働いてもらって給料で生活させるわ。じゃないと、甘えが残るでしょ。唯花ちゃんが結城家の若奥様だってことも三日に教えたら、きっとちゃんと諦めてH市に行くでしょうし」健司は妻の提案に納得し、頷いた。「H市の子会社で平社員として一からやらせよう。そこの社長さんにちょっと世話を頼むんだ。危険な目に遭わせることも、楽もさせないようにする。カードも全部止めよう。給料を受け取るために、H市で新しい口座を作らせるんだ」夫婦二人は琉生に唯花を諦めさせるため、金城グループの重任が担える後継者を育てるため、心を鬼にすることにした。一方、琉生は親に遠く離れたH市へ送られることなど知らなかった。唯花も同じだった。彼女は隣に湯たんぽのように温かいものに抱きつき、心地よくぐっすりと眠っていた。美味しいものを食べる夢を見ているのか、時々口をパクパクしていた。翌日目覚めると、すぐ隣に理仁がいるのに気づいた。唯花は片手で頬杖をつき、理仁の寝顔を眺めた。しかし、思い返したのは、夢の中のご馳走だった。夢の中で、誰かにご馳走になり、テーブルに美味しい料理がいっぱい並べられていた。彼女は遠慮なく美味しくいただいた。最後にどうしても食べきれなかった唐揚げが二つ残り、理仁に持って帰ろうとした。しかし、手にそれを取ろうとしてもどうしても取れず、やがて彼女は目が覚めた。手を伸ばし、理仁の顔を一撫でして、唯花は独り言をつぶやいた。「あな
交際0日婚のツンデレ御曹司に溺愛されています 第787話
「あなた、もう遅いから明日にしましょう。娘が起きてしまうわ」伊織は夫を阻止し、これ以上ドアを蹴らせないようにした。「琉生は落ち込んでいるから、部屋でお酒でも飲んで酔いつぶれているかもしれない。ドアを叩く音も聞こえないんでしょう」琉生は最近よく部屋で飲んでいた。部屋に小さなバーカウンターがあるから、父親のコレクションの高級酒は全部持ち込まれていた。お酒で神経を麻痺させようとしたから、昼間の仕事に集中できず、だんだんミスが多くなっていた。健司は怒りを抑えきれなかったが、妻になだめられて自室に戻ることにした。部屋に入ると、伊織は夫に聞いた。「あなた、結城社長は唯花ちゃんが彼の奥様だと教えてくれたけど、このことを秘密にすべきかしら。どうやらまだ公にしていないようね」彼女の姪は唯花と親友なのに、理仁の正体を知らないのだ。健司はソファに腰をかけ、暫く黙ってから口を開いた。「結城社長は内海さんと結婚したことをずっと秘密にしていたっておっしゃったし、まだ完全に公表してないから、私たちも知らないふりをした方がいいかな。じゃないと、また面倒事が起こるかもしれないぞ。それに、やはりちゃんとした原因があるんだ。じゃなければ、結城グループが突然提携関係を打ち切るはずがない。この提携関係は、私が長年努力した結果なんだ。契約を結んだ後も、決して不良品が出ないように注意を払っていた。偶にパーティーで結城社長に会ったことがあっても、わざとらしくおだてるようなお世辞など言わなかったし、かといって失礼な真似も絶対しないようにしていた。あの方は確かに冷徹な方だが、ちゃんと理屈の通じる方なんだ。無暗に私らに難儀をつけるようなことなどするはずがない。今になってようやくわかった。原因は琉生だったのか。あの子は結構前から内海さんに惚れていたんだろう？彼女がまだスピード結婚していなかった時に告白しないで、結婚してから告白しても、何の意味もないだろう？」「はぁ」伊織は深くため息をついた。「そうよ、何の意味もないわ。私も彼が唯花ちゃんと付き合うことは反対なのよ。彼女は明凛とずっと仲が良くて、私も彼女が成長するのを見守ってきたわ。嫌いではないけど、嫁にするのはさすがにちょっと違うわ。私の理想的な息子のお嫁さんは名家のご令嬢なのよ。唯花ちゃんは美人だけど、特に優れ
交際0日婚のツンデレ御曹司に溺愛されています 第786話
「結城社長、琉生はもう結構長い間内海さんに会っていませんよ」伊織は説明した。「内海さんが結城社長の奥様だとは知りませんでした。ただ数ヶ月前に結婚されたことだけ知っていました。それでも、琉生が人の奥さんにしつこくつきまとうのはもちろん彼が悪いですので、私は強引に制止していたのです。店へ行かせないようにし、電話もさせませんでした」理仁は声を低くしながら警告した。「今晩、息子さんは新しい電話番号で妻に電話をかけてきました。彼が妻と十数年の付き合いで、私より先に妻に出会ったことは知っていますが、妻は私を選んだのです。唯花さんは私の妻なので、誰にも触れさせるつもりはありません。妻もきっぱり拒絶して、息子さんに一切恋愛感情がないと伝えていました。妻は彼のことを弟のように思っていた。しかし、息子さんはあの手この手を使って妻に近づこうとする。私は妻のことを信じていますが、お宅の息子さんのそのような行動は許せません」健司は慌てて誓った。「結城社長、ご安心を。帰ったら厳しくしつけておきます。二度と奥様に近づかせません。結城社長、息子は内海さんがあなたの奥様だと知りませんので、あんなことをしてしまったんです。もし最初から知っていれば、あんなことをするはずはなかったんです」理仁は冷たく言った。「私は妻と結婚してもう三ヶ月になりました。確かにこのことを最初は秘密にしていたんですが、妻は牧野さんに結婚したことを隠していませんでしたよね？息子さんも妻が結婚したことを知っていたはずです。彼は以前、妻に告白したことはなく、結婚したのを知ってから、逆に告白する選択肢を選ぶとは。これは全般的に彼が悪いのではありませんか。仮に、唯花さんが私の妻でなければ、息子さんが彼女につきまとって、他人の婚姻を壊そうとする行為をしても許されると思っているんですか」健司「……せがれが間違っています。私の教育不足です。結城社長、大変申し訳ございません」理仁は淡々と言った。「これが今晩お会いした理由です。金城社長、もうおわかりですよね」「はい、もちろん、十分理解できました」金城夫妻はすぐ立ち上がり、辞去した。一刻も早く家に帰り、あのバカ息子をしっかり叱りつけたかった。理仁の言った通り、もし唯花が結城家の若奥様でなければ、息子の行為が許されると思っているのか。それは間違ってい
交際0日婚のツンデレ御曹司に溺愛されています 第785話
理仁は迷いもなくホテルの一番上にあるペントハウスへ向かった。数分後、金城夫妻はボティーガードの後ろにつき、部屋に入った。理仁は二人を座らせた。「ありがとうございます」夫婦二人は礼を言ってから、ようやく理仁の向こうの席に腰を下ろした。座っても何を話せばいいかわからないので、口を開くことができなかった。理仁が何のために彼らに会っているのか、全く見当がつかなかったのだ。理仁はこのことにあまり時間を費やすつもりはなく、自ら口を開いて単刀直入に言った。「金城社長、今回呼んだのは、ただ息子さんの管理をきちんとしていただきたいと伝えたかったからです。これ以上私の妻に近づかないようにさせてほしいですね」それを聞くと、金城夫婦は顔色を変えた。伊織はしどろもどろに言った。「結城社長、こ、これは……誤解では？息子にはちゃんと好きな人がおりますので、奥様につきまとうことはありませんよ」結城家の若奥様という肩書だけで十分に威圧感があるのだ。彼女につきまとう度胸のある人なんて本当に存在するのか。健司も続けて言った。「そうですよ。せがれには好きな人がいます。そんなこと絶対しませんよ……結城社長、失礼ですが、奥様はどこのご令嬢でしょうか」理仁が結婚したことは、上流社会の人間と結城グループの社員しか知らなかったのだ。しかし、その社長夫人が一体誰なのか、上流社会の人間は誰も知らなかった。健司は最初、息子が結城家の若奥様につきまとう度胸はないと思っていたが、ふっと気づいた。誰も若奥様の正体を知らないのだ。そして、琉生が好きなのは内海唯花だと思い出し、健司は嫌な予感がした。そこで伊織も気づいたようだった。彼女は呆気にとられ、信じられないような顔をした。内海唯花が、結城社長の奥様なのか。そんなはずはないだろう？理仁はすでに特別な日に唯花に自分の身分を打ち明けるつもりなので、今、金城夫妻に知られてもかまわないと思っていた。彼は落ち着いて言った。「私の妻は内海唯花です。金城夫人はよく知っているでしょう」やはり唯花だったのだ！伊織は顔色が悪くなった。健司はこの時ついに理解したのだった。どうりで結城グループが突然金城グループとの取引を打ち切り、プレシャーをかけて、ライバル企業に金城グループを陥れる隙を与えてしまったわけだ
交際0日婚のツンデレ御曹司に溺愛されています 第784話
しかし、伊織はあくまでも強い態度を貫き、息子が唯花に近づくことを頑なに許さなかった。今は息子はきっと苦しんでいるだろう。しかし、時間が経てば必ずその絶望の深淵から這い上がり、無意味なことに気を取られることなどなくなるはずだ。時間こそが失恋の傷を癒す一番の薬なのだ。「一体何があったんだ？」健司は普段仕事が忙しくて、息子が唯花を想っていることを知らなかった。伊織は自分で息子のしつけがちゃんとできると思って、夫にこのことを話していなかったのだ。伊織はため息をついた。「あなたの大切な息子はね、好きな人ができたのよ」健司はまだ事情を理解していないらしくこう言った。「もう成人したんだから、好きな人くらいできておかしいことじゃないだろう。思春期で恋を覚える子もいるのに、あの子はこれまで無関心で、むしろ心配していたぐらいだ。相手は誰なんだ？その子の家柄が悪いとか？そうでもなければ、君が反対したりしないだろう」妻がこのような態度を取るということは、息子の恋愛対象に満足できないのだと健司はわかっていた。伊織はまた深いため息をついた。「あなたも知ってる人だわ。しかも、十数年以上よ」健司は不思議そうに言った。「……俺が十数年以上知っている娘さんか？琉生はいつも明凛にあちこちいついて遊んでいた……まさか、あのバカ息子、自分の従姉に惚れちまったのか？あの馬鹿め、本当に大学まで入って、一体何を学んだんだよ」「何を考えてるの、明凛じゃないよ。明凛の親友の唯花ちゃんよ」健司は呆気にとられた。伊織は続けた。「唯花ちゃんはもう結婚してて、既婚者でしょ。仮に本当に独身だとしても、あの二人は釣り合わないの。金城家の家柄を考えると、彼女を嫁としてもらうのはあり得ないもの。たしかに、神崎夫人という伯母がいても、実の親じゃないから、何の意味もないじゃない」神崎夫人にも実の娘がいるのだ。「それに、彼女は琉生のことをずっと弟のように思っていて、全く恋愛対象として考えてなかったの。琉生が彼女に恋をしていたのを知って、冷たく当たっているのに、琉生が全然諦めず、しつこく唯花ちゃんに会いに行ったのよ。だから、私はこれ以上彼女に近づくなら、内海姉妹を星城から追い出すと脅したわ。それで、琉生は唯花ちゃんに会いに行けなくなったけど、彼なりの方法で私に反抗的な態度を示し
交際0日婚のツンデレ御曹司に溺愛されています 第783話
理仁さんは嘘つきなの？夢の中で、唯花は理仁に問いかけた。理仁はただ彼女をじっと見つめて、何も言い返さなかった。「結城理仁、あなたは本当に嘘をついているの？」唯花が声を張り上げて彼に詰め寄った瞬間、ハッと目が覚めた。目覚めた唯花は暫くぼんやりとしていて、ようやく我に返り、ぶつぶつと呟いた。「なんだ、夢だったんだ」振り向くと、さっきわざと彼女を寝かしつけようとしていた男の姿はそこにはなかった。「私を寝かしつけようとするなんて、やっぱり他の目的があったのね。悪夢を見るのも当然よ」唯花は携帯で時間を確認してから、再び眠りについた。今度は悪夢を見ず、ぐっすり眠れた。スカイロイヤルホテルにて。金城社長である金城健司は一階のロビーで座り理仁を待っていた。突然悟から連絡を受け、結城社長が時間を作って会ってくれるので、スカイロイヤルホテルで待つように言われたのだ。それで、彼は急いでホテルに来たのだった。ホテルで二時間待っても理仁はまだ現れなかった。それでも焦る様子もなく、大人しくソファに座って待っていた。一緒に来たのは金城夫人である伊織だった。伊織は時折時計を確認したり、ホテルの外へ出たりして、理仁の専用高級車がまだ来ていないのを確認し、夫の隣に戻って座った。「あなた、結城社長は本当に来るのかしら？」「九条さんからの連絡だから間違いないだろう。結城社長はちゃんと約束を守る人だから、ここで会うと言った以上、絶対来るはずだ。もう少し待ってみよう。もし急用ができたら、きっと連絡をくれるさ、ずっと俺たちを待たせることなどしないはず」結城グループからかなりのプレッシャーをかけられているとはいえ、健司はまだ理仁の人柄を信じていた。伊織は心配そうに言った。「一体うちは結城社長に何をして怒りを買ったのかしら？前のパーティーでは、結城社長は琉生に挨拶してくださったのに、たった数ヶ月で、提携を取りやめるし、商売も横取りされるなんて。あなた、誰かに陥れられたんじゃないの？」伊織はどう考えても、結城社長を怒らせるようなことは一度もしていないと思っていた。健司は長い沈黙の後、口を開いた。「調べたけど、誰もそんなことしてないそうだ。おそらく、俺たちが知らない間に結城社長の逆鱗に触れたんだろう」「そんな、結城社長に会え
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