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第6話

Penulis: 時慢
修司は彼女の言葉の裏を読み取れず、確信を持って頷いた。「もちろん」

静葉は笑ったが、それ以上話を続ける気はなかった。

浴室に入って身支度を始めた。

修司はドア枠にもたれ、隠さない優しい眼差しで彼女を見つめていた。

かつて何度もそうしてきたように。

しかしふと、修司は眉をひそめると、彼女の背後に回り、ますます細くなった体をそっと抱きしめた。柔らかな肉の一片もない細い腰に触れながら、「静、ずいぶん痩せたんじゃないか……」

かつてとは全く異なる彼女の体に、修司は理由もなく胸がざわついた。「顔色も悪い。病院に連れて行こう」

「結構よ」と静葉は断った。

自分の身体は自分がよく知っている。

病院へ行って修司が彼女の病状を知っても、何が変わるというのか。

浮気した男の偽りの愛情に向き合う気力など、彼女には残っていなかった。

無意味だ。

彼も疲れるし、彼女も疲れる。

修司が返事をする前に、彼の携帯が突然鳴り出した。

電話を見た瞬間、彼の目に一瞬浮かんだ喜びを、静葉は見逃さなかった。しかしそれはすぐに心配と緊張に変わった。

電話を切ると、修司は彼女を抱き上げて階下へ向かい、決断を下した。「駄目だ。病を恐れて医者を避けるなんて許さない。僕が付いていく。

怖がるな。何があっても僕がいる」

その言葉に、静葉の視界が一瞬かすんだ。

本気にしそうになった。

だが彼女はもう拒否しなかった。

いずれ彼は知ることになる。それに、斉藤医師からは昨日連絡が来ていた。

彼女の心臓を待つ少女がいるのだ。

死ぬ前に、書類にサインする必要があった。

今日ついでに済ませてもいいだろう。

病院に着くと、斉藤医師は二人を見てほっとした表情を浮かべた。

修司が臓器提供のことを知っていると思ったのだ。

「結城様、ご夫人のサインに……」

「彼女が最近ずいぶん痩せたんです」

修司は静葉の体調のことしか頭になく、話を遮った。「すぐ検査をしてください」

斉藤医師は答えた。「結城夫人の体調を考慮すると、痩せていくのは当然ですが、できるだけ栄養を取るよう心がけてください」

修司は静葉を見て頭を抱えた。「また僕に内緒でダイエットしてたのか?」

「……してない」静葉はもう隠すつもりはなかった。「修司、実は私病気なの……」

彼女の言葉が終わらないうちに、修司の携帯が再び鳴った。

今度は電話ではなく、メッセージだ。

苛立ちながら画面を見た修司の表情に、抑えきれない興奮が浮かんだ。

携帯を持つ手さえ震えていた。

気持ちを隠したつもりで、静葉に向き直った。「静、今何て言った?」

「……」

静葉はもう真剣に話す気を失っていた。「会社の急用でしょ?」

彼女は笑って逃げ道を作った。

これまで社交界で彼と共に他人とやり取りしてきた時のように、完璧なタイミングで。

彼女は相変わらず完璧な結城夫人だった。

ただ、今や偽りの笑顔を向ける相手は、彼女の夫になっていた。

修司は意外そうに、そして申し訳なさそうに彼女を見た。「どうしてわかった?確かに急用で、行かなきゃいけないんだ。一人で大丈夫か?」

「大丈夫」静葉は頷いた。

最近では、夜中に痛みで目が覚めても、家にはいつも彼女一人だった。

修司は彼女の言葉の深い意味に気づかず、髪を撫でて言った。「用事が済んだら迎えに来るから、医者の言うことを聞いて検査を受けてな」

結城。

私の体は、もう検査など必要ないの。

臓器提供に必要な検査は全て終わっているのに。

だが修司は彼女に声を出すの機会を与えず、そう言うと待ちきれないように走り去った。

彼女を追いかけていた頃、デートのたびに走ってきたあの頃のように。

彼の後ろ姿を見ながら、静葉はふと、あの白いシャツの少年を思い出した。真冬に焼き芋を手に彼女の前へ走り寄り、宝物のように差し出した。「静、一口食べてみろよ」

ただ今回は……

彼が走っていった先は、彼女とは正反対の方向だった。

静葉はうつむき、一瞬目を閉じて、涙を地面に落とすに任せた。

斉藤医師はためらいがちに尋ねた。「結城夫人、結城社長はご病状をご存じないのですか……」

「関係ありません」

静葉は気持ちを落ち着かせると、静かに言った。「病院に当たり散らしたりしませんから、安心してください」

彼女が修司の机に置いたあの贈り物の中には、もう一言書き添えてあった。

医師はそれ以上詮索せず、書類へのサインが終わると、彼女の体調を気遣った。「この数日、調子はどうですか?鎮痛剤は足りていますか?」

末期癌。

最も辛いのは、死が近いと知ることではない。

耐えがたい痛みだ。

経済的に余裕のある患者は、痛みを和らげるため入院を選ぶ。

静葉のような患者は珍しい。

「良くないです」静葉は苦笑した。「あと数日だと思います」

医師を見上げて続けた。「荷物をまとめて、明日入院します。そうすれば……必要な患者さんに、早く臓器を提供できるでしょうから」

若い女性助手は目を赤くした。「結城夫人……」

だが斉藤医師は冷静に、彼女の状態の悪さを理解し、頷いた。「今すぐ入院するのがベストです」

だが目的は、彼女の苦痛を和らげるためだった。

静葉は首を振った。「一度家に帰りたいです」

これだけ長く愛し合ったのだから。

あの世とこの世に引き裂かれる前に、きちんと、正式に、修司と別れを告げたかった。

彼に願いたかった。平穏な日々を、願いが叶うようにと。

静葉はエスカレーターで降り、家路につこうとした。

携帯が鳴った。

妊娠検査の結果と、刺々しいメッセージが表示された。

【静葉さん、私妊娠したわ。修司の子供よ。いつの間にかできてたかもわからないくらい、修司の欲望が強すぎて、毎日求められるの。会社でも机の上でされたわ】

静葉は吐き気を覚えた。

喉に鉄臭い味が込み上げてきたが、必死に飲み込んだ。

視界もぼやけ始めていた。

携帯はまだ鳴り続ける。

【修司はずっと子供が欲しがってたわ。不妊の女はさっさと離婚して、少しは体裁を保ったら?】

【あの人がまだあんたを愛してると思う?演技は男の本能よ。本心は欲望に現れるの。静葉さん、あの人と最後にしたの、いつだっけ?】

【あんたに愛の言葉を囁くあの唇で、私の体の隅々まで舐められてるのよ】

ブシャッ。

静葉はもう堪えきれず、血を吐いた。

鮮やかな赤だった。

周囲の慌ただしい声が聞こえる中、静葉はぼんやりと、修司が鈴と手を繋ぎ、産婦人科から出てくるのを見たような気がした。

しかしはっきり見えない。

まばたきをして、もう一度確かめようとしたが、身体がもう支えきれなかった。

赤い血の海に倒れ込んだ。

自分の身体を過信しすぎていた。

修司に直接別れを告げることさえ、叶わぬ望みだったのだと。

最後の力を振り絞り、目を見開いて、修司と別の女が去っていく方向を見つめた。

冬の柔らかな日差しが差し込む中、一筋の光が、彼女と修司を決定的に二つの世界へと引き裂いた。

彼女はもう、修司が迎えに来るのを待つことはない。

あの、ただ彼女だけの修司は、とっくに消えていたのだ。

外は冷たい風が吹き荒れていた。

修司はふと、今年の冬は格別に寒いと感じた。

風が肌を切り裂くようで、心臓まで少し苦しくなっていた。

鈴が修司のカシミアコートに潜り込んだ。「修司、寒いわ。私を抱いて歩いて」

「……」

修司は深く息を吸い、胸の不快感を和らげようとした。

周りに人がいないのを確認すると、彼女を押しのけずに言った。「屋敷の前まで送る。すぐ病院に静を迎えに行くから、調子に乗るな」

鈴は甘えた声で答えた。「わかったわ」

二人は抱き合うように車に乗り込んだ。

病院内では、医療スタッフが必死に静葉を救急室へ運んでいた。

あらゆる処置を施した。

だが結局、死亡が宣告された。

静葉は死んだ。

修司の願いが叶ったまさにその日に。

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