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第4話

Author: みかんしずく
若くてきれいな女は、次から次へと現れた。

最初に颯がほかの女と親しくしていると知ったとき、私は泣いた。

責めもした。

自分でも手に負えないほど取り乱した。

初めのうち、颯は面倒そうにしながらも、まだ私をなだめようとはしていた。

けれどそのうち、隠すことすらしなくなった。

女を連れて堂々と人前に出るようになり、私がどんな目で見られるかなど、少しも気にしなくなった。

颯への気持ちは、失望を重ねるたびに少しずつ削られていった。

そして私は、離婚を切り出した。

けれど颯は、まるで本気にしなかった。

「俺くらいになれば、外に女の一人や二人いたところで珍しくもないだろう。

それでも俺は、お前を妻の座から下ろしたわけじゃない。金にも困らせていないし、カードだって好きに使わせている。

桜井の妻でいられるだけで、羨む女はいくらでもいるんだぞ」

それだけではない。

私の母まで、離婚だけは思いとどまるようにと言った。

「今別れたら、それこそ外の女の思うつぼじゃない。

颯さんが戻ってくる家は、あなたのところなんでしょう?

だったら、わざわざその場所を譲る必要なんてないじゃない」

あのとき、颯の口元に浮かんだ薄い笑みを、私は今でも忘れられない。

「柚菜、お義母さんの言うとおりだ。

お前も少しは大人になれ。妻なら、そのくらい受け流せるようにならないと」

けれど、妻という肩書きだけに、いったい何の意味があったのだろう。

我慢して、飲み込んで、何度も自分に言い聞かせた。

それで颯が私を大切にしてくれることはなかった。

むしろ彼は、私がどれだけ傷ついても、結局は離れられない女なのだと思い込んだ。

そして、ますます歯止めが利かなくなっていった。

「柚菜?」

颯の声で、私ははっと我に返った。

どうやら彼には、私が怖がって動けなくなっているように見えたらしい。

颯が私の肩を軽く揺らしていた。

理由はどうあれ、颯が私をかばって怪我をしたのは事実だ。

このまま放っておくわけにはいかない。

結局私は、颯を病院まで連れていった。

医師が颯の傷を手当てしている最中、診察室のドアが乱暴に開いた。

入ってきたのは、杏奈だった。

よほど急いできたのだろう。

髪は少し乱れ、息も上がっている。

その後ろには、まだ幼い二人の子どもが不安そうについてきていた。

颯の額に巻かれた包帯と、頬に残った血の跡を見た瞬間、杏奈の目に涙が浮かんだ。

「あなた、大丈夫なの?

知らせを聞いて、怖くて……あなたに何かあったら、私たち、どうしたらいいの」

そう言う間にも、杏奈の目から涙がぽろぽろとこぼれ落ちていた。

二人の子どもも颯に駆け寄り、その胸にしがみついて泣き出す。

何も知らない人が見れば、颯が命に関わる大怪我をしたのだと思ったかもしれない。

颯は困ったようにしながらも、杏奈と子どもたちをなだめていた。

颯を囲んで泣く杏奈と子どもたちを、これ以上見ていたくなかった。

私は静かに立ち上がり、そのまま診察室を出ようとした。

けれど颯は、私の動きに気づいていた。

私が出口へ向かった途端、すぐに声を上げた。

「どこへ行くんだ」

その声で、杏奈はようやく私の存在に気づいたようだった。

涙に濡れた目が、ゆっくりとこちらを向く。

「柚菜さん……?」

杏奈は一瞬だけ言葉を切り、それから傷ついたように眉を下げた。

「あなたはもう、颯さんとは離婚したんですよね。

それなのに、どうしてまだ颯さんのそばにいるんですか?」

杏奈は目を赤くし、いかにも傷ついたような顔をした。

その言い方では、まるで私のほうがあとから颯に近づいた女みたいだった。

私は内心、その図太さに呆れながら、薄く笑った。

「それ、私じゃなくて颯に言うことでしょう?」

杏奈は一瞬、言葉に詰まった。

その視線が、私の大きなお腹へ落ちる。

次の瞬間、彼女の目に冷たい色がよぎった。

杏奈は、自分の前に立っていた子どもの背中をそっと押した。

それだけで、二人の子どもは何かを察したらしい。

小さな拳を振り上げ、私に向かって駆けてきた。

「やだ!パパを取らないで!

パパはママのなの!あなたなんか嫌い!

出ていけ!出ていけ!」

子どもとはいえ、勢いをつけて叩かれれば普通に痛い。

まして今の私は、お腹に双子を抱えている。

とっさにお腹をかばいながら身をよじったけれど、避けきれず、何度か腕や肩に拳が当たった。

颯は止めるどころか、黙って見ているだけだった。

その姿に、胸の奥で怒りが一気に膨れ上がる。

「颯、いつまで黙って見ているつもり?」
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