LOGIN「おめでとうございます。妊娠されてますよ」診察台のカーテン越しに聞こえる産婦人科のお医者さまの声。壁に設置されたモニター画面は、私の子宮の中に小さな袋を映していた。それは私のお腹に、また新たな命を授かったことを意味していた。今度こそ、100%嵐の子だ。瑠岳を産んで以来、嵐としかしていなかった。次回の予約をして、産婦人科の1階にある託児室に向かう。この産婦人科で瑠岳を取り上げてもらった。ふたり目のこの子も、この産院でお世話になるつもりだ。入院中はずっとこの託児室で瑠岳を預かってもらえる。一般的な保育園と同じ時間に開所して、同じ時間に閉所するそうだ。ありがたい。生理が来ていなかったこと。尿検査が陽性だったこと。もう既に悪阻のような症状があって、産婦人科医の太鼓判も出た。頭の中から、岳のことはすっ飛んでいた。ふたり目を妊娠したとわかった途端にこれだ。母親の本能というものだろうか。あれ以来、あのショッピングモールに近付いていない。岳に会う危険性があるからだ。我が家から反対方向に同じぐらいの距離にショッピングモールがあるから、必要な買い物や気晴らしはそちらですれば良い。悪阻と闘いながら、家事と瑠岳の育児の両立は大変だ。私の支えになっていたのは嵐と瑠岳と、SNSを通じて再会した地元の友達だ。その友達も時を同じくして妊娠していた。それもふたり目。同じ境遇の友と愚痴を言い合って励まし合っていた。それから数ヶ月の後。私は男の子、湊《みなと》を出産した。嵐にも私にも、どちらにも似ているもう既に相当なやんちゃ坊主だ。絶賛イヤイヤ期の瑠岳の世話と湊の世話。そして家事。日々時間に追われていく。岳からはあれから何度かLINEが来ていた。ブロックした。そもそもブロックしていなかったから、岳に希望を持たせてしまった。岳はまだやり直せる。あの若さで弁護士になっていた。モテないわけがない。だって私も惚れてしまったぐらいなのだから。湊を授かったおかげで、私は岳を解放する決心がついた。変わらないままだったら、きっと修羅場になっていただろう。岳は望まない結果だったと思うけど、私に関わる全員が、湊の存在に救われたんだと思う。岳、どうか、私のことなんて忘れてください。私はもう、岳に何もしてあげられない。どうか岳が私のことなんか早く忘れて、違う誰かと幸せになれますように。fin.
遺伝子が、俺たちを祝福している。『あなた達は、結ばれる運命なんだ』また超時空的な声が聞こえた。俺、今日は飲み過ぎたな。レッドブルは冷蔵庫に冷やしておこう。プリンだけ家で食べて、シャワー浴びてさっさと寝よう。真夜中は人間の思考は偏るという。理性が効かずに男女の事件が多々起きるのはそのせいだ。そうか。麻子さんの理性を失わせればいいのか。でもどうやって?何とかして、また麻子さんを抱いてみようか?俺無しではいられない身体に、彼女の身体を教育すればいい。しかしその最中、あの子はどうしようか。麻子さんのえろい声って結構大きいんだよな。折角寝かせていても起きてしまうかもしれないから、麻子さんの口は優しく塞ぐか。何で塞ぐかって?決まってる。俺の唇だ。身体の中心に血液が集まる。この硬さ、すぐに麻子さんに味わわせて彼女を骨抜きにしたいのに。今、俺の目の前に彼女はいない。不便だな。やっぱり麻子さんを家に呼び寄せよう。小さな娘は早いところ寝かしつけて、麻子さんをとろとろに抱いてしまえ。あの小さな子でも、何度か会えば俺の顔を覚えるだろう。ああ、楽しみだな。麻子さんの身体。あれからどの女を抱いても、あの高揚感は無かった。麻子さんの肌、柔らかさ、膣内《なか》の締めつけ。あの極上の身体は、俺専用でなければいけない。──来ない。何故だ。麻子さんから、連絡が来ない。おかしい。彼女は俺に会いたくてたまらなかったはずだ。何故言い切れるのかって?だって俺の子産んでるじゃん?旦那よりも俺と一緒にあの子を育てたかったはずだ。それが生き物の本能だろう?俺から麻子さんにLINE送ってみるか。麻子さんが俺をブロックしているわけが無い、何故かって?あの子は俺の子だからだ。ブロックなんてしたら俺と連絡取れなくなるからな。そんなの、麻子さんの身体の疼きも我慢できないだろう。『麻子さん。連絡ずっと待ってます。俺と一緒に子育てしましょう』LINEの文章を作った。あとは送るだけだが、少々重たいか?『麻子さん。俺はいつでも会えます。今の俺なら、麻子さんを守れます』おっ。守るっていいじゃないか。このセンで行くか。『麻子さんを全力で守ります。精神的にも経済的にも、俺に頼ってください』精神的にも経済的にもって、何か失礼?『麻子さんと子どもを、俺に守らせてください』ほぼプロポーズ
「──は?」「だから、例の人妻。俺の子、産んでた」中学からの悪ガキ仲間で今は商社勤務の蓮。その蓮が、バーボン片手に固まった。「岳の、子?人妻?人妻が産んだ?えっ?えっと?」俺たちのブレーン、学力オバケの蓮ですら、俺の今置かれた状況を理解するのに苦しんでいる。そうか。やはり理解し難い状況か。「大学生のときの、不倫か」「不倫って言うなよ」「いや不倫だろ。受け入れろよ」わかっている。俺たちの恋には、いや愛には、被害者がいる。麻子さんの旦那だ。麻子さんの旦那よりも早く麻子さんに出会えなかったのが、俺たちの罪だ。もっと早く出会っていれば、その旦那を傷つけることも無かっただろう。「元不倫相手が、岳の子を産んでた。そうだな」「そう」さすが蓮。理解が早い。「どうやってわかった?連絡取ってなかっただろう?」「ショッピングモールでベビーカー押してる彼女が俺見て固まってた」「まじか。んであれか。あなたの子よ、とか言われたってか」「言われてない。でも彼女の娘は……俺の妹にそっくりだった」蓮が本日2度目の石化だ。よく固まるな。「妹、そっくり?岳の、妹……海《うみ》ちゃんに?」「そう。時空がそこだけおかしいのかと思ったよ」蓮が黙り込んだ。何か、考えてるのだろう。それとも、思考停止してるだろうか。「……で、お前、どうすんの」「取り返す」「取り返す?」怪訝そうな顔をしているが、俺は何か変な事を言ったのだろうか。「取り返すのは、奪われた側、だよな?」「ああ」「お前さ」わかっている。奪われた側は、麻子さんの旦那だ。「俺が言いたいこと、わかる?」「わかるよ。でも、麻子さんの子が俺の子なら、麻子さんは俺とともに、その子を育てるべきだ」「べきって。それって本当に正
──連絡なんて、出来るわけない。名刺だけ渡して、岳は去っていった。そのまま呆然と立ち尽くしていた私を、瑠岳が急かした。その後は瑠岳の服を見ても、私の服を見ても。化粧品を見ても私はうわの空だった。プレイマットで遊ぶ瑠岳をぼんやりと見ながら、岳の言葉が頭の中でずっとぐるぐる回っていた。瑠岳が、岳の妹さんの幼少期にそっくりだという事実。そして、嵐には全く似ておらず、私にも似ていない。それは岳が瑠岳の父親であることを意味していた。話し合いを……求めるよね。私達、別れたくて別れたんじゃない。強引に、一方的に、私から岳に対して冷たくして終わらせた。瑠岳の父親が岳であったとしても、岳には伝えずに、ひっそりと生きていくつもりだった。瑠岳から父親を奪うことにはなるけど、嵐は本当に瑠岳を可愛がっているから、問題無いと思っていた。ああ、つくづく私って身勝手だ。でも身勝手にならないと瑠岳を育てていくことが私には出来なかった。嵐にとって、私は最早妻ではなく、ただの害悪なんだろうな。でも言えない。瑠岳が、嵐の娘じゃなくて、違う男の娘だっただなんて。そんな台詞、死んでも言えない。私が天国に行けないことは確定したな。──side.岳麻子さんが、俺の子を産んでいた。あの子は、俺の娘なんだ。家電量販店での用事を終えて駐車場へと急いでいた。ふと視線を右に向けた。向けたというより、吸い込まれたという方が相応しい。ベビーカーを押したまま、俺を見て立ち尽くす彼女がそこに立っていた。ずっと、会いたかった。会いたくて会いたくて。でも会えなくて。他の女がどうしても視界に入らなかった。仕方なくそのもやもやを司法試験の勉強に向けたら、まさかの一発合格。俺の麻子さんへの執念は、司法試験一発合格レベルだったらしい。今なら──。俺を選んでくれないだろうか。あの小さな子は、どう見ても俺の娘だ。妹の幼少期にそっくりなのが、その証拠だ。そこだけ時空がおかしくなったのかと思ったぐらいだ。
「あんまんまん、あんまんまん!」「えーっと……良かった、あったよ!」大急ぎでアンパンマンのキャラカートの椅子部分に娘の瑠岳《るか》を乗せた。「ふう……」瑠岳は一心不乱にキャラカートのハンドルを回している。良かった、しばらくこれで機嫌が良いだろう。平日のショッピングモール。家にいると瑠岳としか会話出来ないから、散歩も兼ねてやってきた。瑠岳の服を見て、私の服も見て、おもちゃを見て、フードコートで軽くお昼を食べて帰る。今日はうどんにしようかな。KALDIを出て歩いていた。その先の家電量販店から、スーツを着た長身の男性が出てきた。──岳だ。その場で私は固まった。固まったまま、私は動けない。急にカートが止まったからか、瑠岳は私を振り向いて「まま?」と怪訝そうに尋ねる。「ねえ、ままー?ままー?うごかしてよう?」瑠岳の声に、岳がこちらを向いた。そのまま、わずかに目を見開いて彼も動きを止めた。顔は強張ったまま。でも岳は私と瑠岳に近づいてきた。「麻子さん。お元気そうですね」「ん。岳も……元気そう」「あれからしばらくは、元気じゃなかったですよ」目を細め、でも彼は私を責めない。私も元気じゃなかったよ。あなたがいなくて、あなたが足りなくて、泣き叫びたかった。でも出来なかった。それをしたら、嵐に全てを知られてしまう気がした。瑠岳の名前に岳の名を貰ったのは、これから生きていくのに私の支えにしたかったから。はい、最悪の妻ですね。ええ、夫の嵐には口が裂けても言えません。瑠岳の父親である可能性は、私の中では嵐が9割、岳が1割。たぶんちゃんと嵐が父親だと思う。それでも私のお腹を痛めたこの子は岳の子である可能性が欲しかった。我ながらゲスいな。はい、私はゲスです。きっと私は天国には行けないでしょう。不倫に溺れた女のなれの果てって、こんなものなのね。岳の視線が
■横恋慕する女子生徒Sが“つきまとい”——授業妨害からSNS匂わせへ だが、物語はそこで終わらない。 Kさんに想いを寄せる女子生徒Sの存在が、事態を一気に不穏な方向へと加速させた。 Kさんに拒まれても引き下がらないSさん。Kさんの反応が芳しくない一方で、教師であるRさんは強く突き放しきれず、結果的にSさんは授業や校務の場面にまで介入するようになったという。 そして決定打となったのがSNSだ。 Sさんが、RさんとKさんの関係を“それとなく匂わせる”投稿を行い、学校側の耳にも入った。 「学校としては看過できない。Rさんは上司から厳重注意を受けたと聞いています」 校内の空気は一変した。 ■怒りのKさん、“友人と共謀”して仕掛けた「ハニートラップ」…停学処分へ 追い詰められたのはRさんだけではなかった。 “匂わせ”によりRさんが責任を問われたことに憤ったKさんは、友人を巻き込み、Sさんに“ハニートラップ”を仕掛けたというのだ。 罠に落ちたSさんは、施設関係者の通報によって発覚し、停学処分に。 問題は、その罠が「性を伴う形だった」とされる点である。ここでRさんは、取り返しのつかなさに心を痛めた。 「自分が始めた歪みが、別の生徒を傷つけた。Rさんは相当参っていた」 そう語る人物もいる。 以降、RさんとKさんの関係は急速にぎくしゃくし、修復不能となっていった。 ■破局後も消えぬ執着——「新しい恋人の指輪のまま、唇を…」証言まで 結局、二人は別れた。 しかし、ここで終幕とはならなかった。 「Kさんは新しい恋人がいるのに、指輪をはめたままRさんに迫った」 そんな衝撃的な証言すら飛び交う。真偽の確認は取れてい