LOGIN「──は?」「だから、例の人妻。俺の子、産んでた」中学からの悪ガキ仲間で今は商社勤務の蓮。その蓮が、バーボン片手に固まった。「岳の、子?人妻?人妻が産んだ?えっ?えっと?」俺たちのブレーン、学力オバケの蓮ですら、俺の今置かれた状況を理解するのに苦しんでいる。そうか。やはり理解し難い状況か。「大学生のときの、不倫か」「不倫って言うなよ」「いや不倫だろ。受け入れろよ」わかっている。俺たちの恋には、いや愛には、被害者がいる。麻子さんの旦那だ。麻子さんの旦那よりも早く麻子さんに出会えなかったのが、俺たちの罪だ。もっと早く出会っていれば、その旦那を傷つけることも無かっただろう。「元不倫相手が、岳の子を産んでた。そうだな」「そう」さすが蓮。理解が早い。「どうやってわかった?連絡取ってなかっただろう?」「ショッピングモールでベビーカー押してる彼女が俺見て固まってた」「まじか。んであれか。あなたの子よ、とか言われたってか」「言われてない。でも彼女の娘は……俺の妹にそっくりだった」蓮が本日2度目の石化だ。よく固まるな。「妹、そっくり?岳の、妹……海《うみ》ちゃんに?」「そう。時空がそこだけおかしいのかと思ったよ」蓮が黙り込んだ。何か、考えてるのだろう。それとも、思考停止してるだろうか。「……で、お前、どうすんの」「取り返す」「取り返す?」怪訝そうな顔をしているが、俺は何か変な事を言ったのだろうか。「取り返すのは、奪われた側、だよな?」「ああ」「お前さ」わかっている。奪われた側は、麻子さんの旦那だ。「俺が言いたいこと、わかる?」「わかるよ。でも、麻子さんの子が俺の子なら、麻子さんは俺とともに、その子を育てるべきだ」「べきって。それって本当に正
──連絡なんて、出来るわけない。名刺だけ渡して、岳は去っていった。そのまま呆然と立ち尽くしていた私を、瑠岳が急かした。その後は瑠岳の服を見ても、私の服を見ても。化粧品を見ても私はうわの空だった。プレイマットで遊ぶ瑠岳をぼんやりと見ながら、岳の言葉が頭の中でずっとぐるぐる回っていた。瑠岳が、岳の妹さんの幼少期にそっくりだという事実。そして、嵐には全く似ておらず、私にも似ていない。それは岳が瑠岳の父親であることを意味していた。話し合いを……求めるよね。私達、別れたくて別れたんじゃない。強引に、一方的に、私から岳に対して冷たくして終わらせた。瑠岳の父親が岳であったとしても、岳には伝えずに、ひっそりと生きていくつもりだった。瑠岳から父親を奪うことにはなるけど、嵐は本当に瑠岳を可愛がっているから、問題無いと思っていた。ああ、つくづく私って身勝手だ。でも身勝手にならないと瑠岳を育てていくことが私には出来なかった。嵐にとって、私は最早妻ではなく、ただの害悪なんだろうな。でも言えない。瑠岳が、嵐の娘じゃなくて、違う男の娘だっただなんて。そんな台詞、死んでも言えない。私が天国に行けないことは確定したな。──side.岳麻子さんが、俺の子を産んでいた。あの子は、俺の娘なんだ。家電量販店での用事を終えて駐車場へと急いでいた。ふと視線を右に向けた。向けたというより、吸い込まれたという方が相応しい。ベビーカーを押したまま、俺を見て立ち尽くす彼女がそこに立っていた。ずっと、会いたかった。会いたくて会いたくて。でも会えなくて。他の女がどうしても視界に入らなかった。仕方なくそのもやもやを司法試験の勉強に向けたら、まさかの一発合格。俺の麻子さんへの執念は、司法試験一発合格レベルだったらしい。今なら──。俺を選んでくれないだろうか。あの小さな子は、どう見ても俺の娘だ。妹の幼少期にそっくりなのが、その証拠だ。そこだけ時空がおかしくなったのかと思ったぐらいだ。
「あんまんまん、あんまんまん!」「えーっと……良かった、あったよ!」大急ぎでアンパンマンのキャラカートの椅子部分に娘の瑠岳《るか》を乗せた。「ふう……」瑠岳は一心不乱にキャラカートのハンドルを回している。良かった、しばらくこれで機嫌が良いだろう。平日のショッピングモール。家にいると瑠岳としか会話出来ないから、散歩も兼ねてやってきた。瑠岳の服を見て、私の服も見て、おもちゃを見て、フードコートで軽くお昼を食べて帰る。今日はうどんにしようかな。KALDIを出て歩いていた。その先の家電量販店から、スーツを着た長身の男性が出てきた。──岳だ。その場で私は固まった。固まったまま、私は動けない。急にカートが止まったからか、瑠岳は私を振り向いて「まま?」と怪訝そうに尋ねる。「ねえ、ままー?ままー?うごかしてよう?」瑠岳の声に、岳がこちらを向いた。そのまま、わずかに目を見開いて彼も動きを止めた。顔は強張ったまま。でも岳は私と瑠岳に近づいてきた。「麻子さん。お元気そうですね」「ん。岳も……元気そう」「あれからしばらくは、元気じゃなかったですよ」目を細め、でも彼は私を責めない。私も元気じゃなかったよ。あなたがいなくて、あなたが足りなくて、泣き叫びたかった。でも出来なかった。それをしたら、嵐に全てを知られてしまう気がした。瑠岳の名前に岳の名を貰ったのは、これから生きていくのに私の支えにしたかったから。はい、最悪の妻ですね。ええ、夫の嵐には口が裂けても言えません。瑠岳の父親である可能性は、私の中では嵐が9割、岳が1割。たぶんちゃんと嵐が父親だと思う。それでも私のお腹を痛めたこの子は岳の子である可能性が欲しかった。我ながらゲスいな。はい、私はゲスです。きっと私は天国には行けないでしょう。不倫に溺れた女のなれの果てって、こんなものなのね。岳の視線が
■横恋慕する女子生徒Sが“つきまとい”——授業妨害からSNS匂わせへ だが、物語はそこで終わらない。 Kさんに想いを寄せる女子生徒Sの存在が、事態を一気に不穏な方向へと加速させた。 Kさんに拒まれても引き下がらないSさん。Kさんの反応が芳しくない一方で、教師であるRさんは強く突き放しきれず、結果的にSさんは授業や校務の場面にまで介入するようになったという。 そして決定打となったのがSNSだ。 Sさんが、RさんとKさんの関係を“それとなく匂わせる”投稿を行い、学校側の耳にも入った。 「学校としては看過できない。Rさんは上司から厳重注意を受けたと聞いています」 校内の空気は一変した。 ■怒りのKさん、“友人と共謀”して仕掛けた「ハニートラップ」…停学処分へ 追い詰められたのはRさんだけではなかった。 “匂わせ”によりRさんが責任を問われたことに憤ったKさんは、友人を巻き込み、Sさんに“ハニートラップ”を仕掛けたというのだ。 罠に落ちたSさんは、施設関係者の通報によって発覚し、停学処分に。 問題は、その罠が「性を伴う形だった」とされる点である。ここでRさんは、取り返しのつかなさに心を痛めた。 「自分が始めた歪みが、別の生徒を傷つけた。Rさんは相当参っていた」 そう語る人物もいる。 以降、RさんとKさんの関係は急速にぎくしゃくし、修復不能となっていった。 ■破局後も消えぬ執着——「新しい恋人の指輪のまま、唇を…」証言まで 結局、二人は別れた。 しかし、ここで終幕とはならなかった。 「Kさんは新しい恋人がいるのに、指輪をはめたままRさんに迫った」 そんな衝撃的な証言すら飛び交う。真偽の確認は取れてい
れいなさんの話を要約するとこうだ。 やはり絢斗さんは、白石さんたちにハニートラップを仕掛けた。れいなさんには内緒で。でも、そのハニートラップの中身がれいなさんが思っていたよりも重かった。 れいなさんは、白石さんが他の男性に惚れて、そのまま幸せな恋をしてくれればいいと考えていた。しかし、絢斗さんが菅原くんと企てたハニートラップは性を伴うものだった。救いは……救いなのか?これ。白石さんがその白鷺学院の男子生徒との行為に関してはむしろ積極的だったこと。ただそのせいで、白石さんは停学処分を喰らってしまった。 白石さんのご両親は厳格な方々だったらしい。停学処分が明けた夏休みの最中も、ずっと監視されているとれいなさんは鈴木先生から聞いた。 避妊はしていなかったらしい。よくそこまで聞き出せたな。でも白石さんが望まない妊娠をしていなかったのは、不幸中の幸いだったと思う。 れいなさんが甘かったのか。絢斗さん達がえげつなかったのか。彼ら高校生の基準がこういうものなのか?わからない。れいなさんに近い考えを持つ人がいるようにも思うし、絢斗さん達のようなエグさが現実なのかもしれない。 ひとつ言えるのは、私はこんなえぐい世界にはいなかった。改めて私、平々凡々な世界にいたのだと実感する。 れいなさんと絢斗さんはお別れしたという。別れを告げたのはやはりれいなさんから。絢斗さんは泣いて縋った。その度にれいなさんは絆された。絆されて、交わって。何度目かの別れ話で、絢斗さんはとうとう諦めた。 絢斗さんは現在、2年生の女子と付き合っているらしいとれいなさんは生徒達の噂話から知った。やはりれいなさんは胸を痛めた。なのに、絢斗さんは隙をついてれいなさんに近づいてくることもあるという。現在の彼女との指輪をしておきながら、れいなさんの唇を奪おうとしたとか。けしからん。 自分から振ったとはいえ、れいなさんは絢斗さんの行動に疲弊していった。れいなさん、現在はまさかの横井先生と
明けて、日曜日。昨日は連絡をしなかった。絢斗からもこなかった。逃げてはいけない。向き合わないといけない。絢斗があのとき、あのカラオケ屋にいた理由を、直接絢斗の目を見て聞かないといけない。現実に目を背けたままでは、絢斗に向き合えない。それは絢斗が私に対するものだって同じだろう。『今日忙しい?会いたいの』すぐに既読がついた。『夕方からなら。れいなちゃんの家行くわ』塾かな。今度こそ。……本当に?もう疑うの、嫌だ。疑いたくないのに。一度嘘をつかれると、何も信じられなくなる。私、今絢斗を信じられないんだ。こんな日が来るなんて。絢斗は、私の安全基地だった。一番信じられる人だった。なのに、どうして?どうして絢斗は、私に嘘をついたの?答えは薄々わかっていた。私に言えない何かがある。それも、私に知られたら都合が悪くなる何かが。それが昨日のあの一件だとしたら?絢斗は不問だった。菅原くんも、ただ居合わせただけ。そう扱われた。でもあの時の、絢斗の青ざめた表情。あれが全てを物語っていたとしたら。嫌だ。聞きたくない。聞かずに、真実を暴かずに、ただ抱き合っていたい。目を背けたい。全力で目を背けて、何も知らなかった、何も無かったことにしたい。──でもできないんだ。──夕方、18時。「れいなちゃん」ドアを開けてすぐ、絢斗は玄関先で私を包んだ。そのまま唇を塞がれ、強く吸われる。気が遠くなるような快楽に、頭の奥が痺れる。「待って……鍵……」絶え絶えの息で、やっと言えた。絢斗は後ろ手に鍵を掛けた。もう何度も見た手つき。その手つきさえ、愛おしい。流されちゃだめ。でも、もしかしたら、絢斗と抱き合えるのが、これが最後かもしれない。そう思うと絢斗を拒むことなんてできなかった。最後になんかしたくない。でもきっとこれが最後になる。脚をもたつかせながら、寝室のベ