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第5話

作者: 叶ちゃん
今度は優璃が凍りつく番だった。

ずっと隠し通してきた秘密が、こんな形で暴かれるなんて、思ってもみなかったからだ。

慌てて弁解しようと口を開いた途端、大量の血が彼女の口からあふれ出し、そして目の前が真っ暗になり、意識は完全に途切れた。

「優璃!」

意識を失う最後の瞬間、目に映ったのは、我を失って狼狽する陽一の顔だけだった。

救急救命室の外で、陽一は血に染まった両手を見つめていた。

その目には、恐怖しかない。

人がこれほど大量の血を吐けるなど、今まで知らなかったのだ。

救急救命室に運び込まれてから丸ひと晩が過ぎたが、それでも優璃は出てこなかった。

激しい不安が茨のように心臓に絡みつき、じわじわと締めつけていく。息もできないほどの重苦しさだった。

ついにじっとしていられなくなり、陽一は勢いよく立ち上がって救急救命室へ向かった。

扉に手をかけたとき、頭の中にいくつもの光景が次々と浮かんだ。

医師たちに必死の救命処置を受けている優璃の姿を、直視できる自信がなかった。

扉に添えた手が激しく震え出し、一瞬、押し開ける勇気さえ失った。

石像のようにその場に立ち尽くし、ずいぶん経ってからようやく扉を開けた。しかし思い描いていたような光景は、そこにはなかった。

それどころか、優璃は何事もなかったかのように、主治医の前に座っていたのだ。顔には先ほどまでの衰弱した様子も青白さもなく、血色のいい頬には笑みさえ浮かべている。

その手には分厚い札束が握られていた。昨日、酒を飲ませるために叩きつけたあの金だ。

その光景を見て陽一の胸に安堵が込み上げた。

よかった。無事だった。

様子を尋ねようと歩み出しかけたとき、優璃が札束を医師の前に差し出し、こう言うのが聞こえた。

「先生、先ほどは合わせてくださってありがとうございます。

あの人、まんまと騙されてくれましたね。このあとも私の病状をもう少し重く伝えてもらえませんか。まだ信じてくれるようならもっとお金を出すかもしれません。そのときは山分けにしましょう」

医師は嬉しそうに笑い、金を受け取りながら何度もうなずいた。

「任せてください、お安い御用ですよ」

陽一の足がその場で凍りついた。胸の奥で怒りの炎が燃え上がった。

勢いよく駆け寄ると、机の上の札束をまとめて優璃の顔に叩きつけた。

「羽村優璃、また俺を騙したな!そんなに金に困っているのか!」

陽一の顔に浮かぶ怒りは、優璃を呑み込んでしまいそうなほど激しかった。心臓に鈍く重い痛みが広がる。

けれど最後まで優璃は何も言わなかった。陽一の言葉を黙って認めたかのように。

ドンッ!

凄まじい音を立てて閉まった扉に、心臓がびくりと跳ねた。もう限界だった。優璃は床に崩れ落ち、一口、血を吐いた。

傍らの医師が慌てて優璃を支え、薬を飲ませながら、やるせなさそうな声で言った。

「どうしてこんなことを?本当のことを話せばいいじゃないですか」

優璃は泣きながら首を横に振った。

「私はもうすぐ死ぬ。でも、あの人にはこれからの長い人生があるんです」

優璃は嘘をつくほうを選んだ。

そうすれば、たとえ本当に死んだあとでも陽一は憎しみを抱くだけで、自分のために悲しむことはないから。

もうすぐ死ぬ人間は、どうしたって死ぬ。

でも、生きている人は、この先も生きていかなきゃいけない。

陽一。

あなたには結婚して、子どもを持って、仕事でも成功して――そうやって、穏やかに幸せに暮らしてほしいの。

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