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第7話

Autor: 叶ちゃん
優璃は痛みで目を覚ました。

やっとの思いで目を開けると、自分が使用人部屋のベッドに寝かされていることに気づいた。

時間を確かめようとスマホに手を伸ばしたが、腕が鉛のように重くどうしても持ち上がらない。

頭は重くぼんやりしている。喉は火に焼かれたように乾ききって、唾を飲み込むたびに刃物を飲み込むようだった。

事故のせいなのか、癌の痛みなのか、もう分からない。

痛みは鋭い針のように容赦なく優璃の全身を貫き、ベッドの上で丸くなって歯を食いしばった。それでも彼女は、苦しげな呻きを堪えきれなかった。

這うようにしてベッドを降り、引き出しを開けて薬を探そうとする。

けれど薬を取り出す前に、喉の奥に鉄の味がこみ上げ、勢いよく血を吐き出した。

優璃の手の中の錠剤がぱらぱらと床にこぼれ落ち、思わず胸を押さえるほどの激痛が走った。

そのとき、すぐそばに転がっていたスマホが鳴った。

彼女は朦朧としたまま手を伸ばし、電話に出た。

電話の向こうから陽一の息遣いが聞こえてきた。

一瞬、優璃の頭がぼんやりとする。愛し合っていた頃、熱を出したり具合が悪くなったりするたびにそうしていたように、彼女は無意識のうちに、電話の向こうの陽一に甘えるように、泣き声を漏らしていた。

「陽一……痛いの……

痛い……痛くて、死んじゃいそう……」

電話の向こうの陽一は何も言わなかった。長い沈黙のあと、氷のように冷たい声がスピーカーを通して鼓膜を刺した。

「羽村優璃。そういう芝居はもうたくさんだ」

冷や水を浴びせられたように、優璃は一瞬で我に返った。

通話画面に表示された【長谷部陽一】の文字を見て、自分が何をしたのかようやく気づいた。

彼女は大きく息を吐き、痛みをどうにか抑え込んで必死に笑みを作った。

「もう騙されてくれないのね。陽一、その様子だと、本当にもう私を愛していないんだ」

愛していない。それでいい。

愛されていないほうが、ずっといい。

それから数日、陽一は一度も家に帰ってこなかった。

優璃は冷え切った部屋で丸くなっていた。捨て猫のようにやせ細り、息も弱々しい。

顔色は土気色になり、皮膚は透けそうなほどで、口元にはまだ拭いきれていない血の跡が残っている。瞳は光を失ったガラス玉のように虚ろだった。

優璃が陽一の姿を見られる方法はたったひとつ、加莉奈のSNSだった。

そこに並ぶ写真は、どれも鋭い刃のように優璃の胸を刺す。

陽一は加莉奈を連れて、かつてふたりがいちばん好きだったスイーツの店へ行っていた。

写真の中で陽一は、かつて優璃にしたのと同じように加莉奈へケーキを食べさせている。その眼差しは胸が締めつけられるほど優しかった。

ふたりは流星群も見に行ったらしい。加莉奈は陽一の腕の中に寄り添い、陽一はコートで加莉奈を包み込み、微笑みながら髪を撫でている。

いちばん痛かったのは、ふたりが観覧車の中で撮った写真だった。

陽一はかつて、観覧車のいちばん高いところでキスをした恋人たちは永遠に結ばれると言っていた。

今、陽一は加莉奈と最高点で写真を撮り、その唇に口づけている。目には愛情しかなかった。

優璃は何度も、何度もその写真を見返した。指が震えてスマホをほとんど握っていられない。

涙が止めどなくこぼれ、画面に落ちて陽一の顔をにじませた。

……

そんなある日、加莉奈が帰ってきた。

優璃の部屋のドアを開け、ベッドの上の骨と皮ばかりになった優璃を上から見下ろし、声には嘲りが満ちていた。

「ふふ。私のSNSを見ているんでしょう?だったら、ここ数日、陽一がどれだけ私を愛してくれているか、分かっているわよね?」

優璃は答えなかった。ただ黙って布団の端を握りしめる。

加莉奈は冷たく笑って続けた。

「ここ数日、陽一とはデートもしたし、肌も重ねたわ。恋人同士がするような甘いことは、一通り全部やったの。私たちの絆は十分に深いと思っていたのに、彼は結婚の話だけはどうしても進めようとしないの。

いくら考えても理由が分からなかった。でも今日、やっと答えが見つかったのよ」

最後まで言うと、加莉奈の目に恨みの色がよぎった。優璃が抵抗するのもかまわず腕をつかんでベッドから引きずり下ろし、部屋の外へ引っ張り出した。

優璃の体は弱りきってまともに立つこともできない。けれど加莉奈は容赦なく、壊れた人形のように薄暗い部屋へ優璃を放り込んだ。

パチン!

まぶしい明かりがついた瞬間、優璃は反射的に目を覆う。

光に目が慣れゆっくりと手を下ろしたとき、目の前の光景に彼女は言葉を失った。

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