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67食目

مؤلف: はるくぼ
last update تاريخ النشر: 2026-08-16 18:00:53

 終業式の後、校門を出たところで蓮は一度だけ足を止め、グラウンドから断続的に響いてくるボールの音と掛け声に短く視線を向けた。

 ボールの音が、一定の間隔で響いている。もう、部活は始まっているらしい。

 しばらくそのまま見てから、何も言わずに視線を外し、そのまま歩き出した。

 自宅に戻ると玄関には既にスーツケースが置かれていた。

 リビングの扉の向こうからは、「遅い」と椿の声が飛んでくる。

「準備は?」

「終わってる」

 短く返してそのまま自室に入り、あらかじめ用意していた服に着替え、シューズとノートをバッグに詰めて口を閉じる。

 余計な確認はせず、そのままリビングに戻った。

「行くわよ」

「ああ」

 二人はそのまま家を出た。キャリーケースの車輪が路面を擦る乾いた音だけを背後に引きながら、駅までの道を並んで歩く。

 会話らしい会話は交わさないまま改札を抜けて電車に乗り込み、空いた席に並んで腰を下ろすと、流れていく景色の中で見慣れ
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  • 俺だけの献立 〜隣のスポーツ栄養士志望が俺の食事を管理するらしい〜   78食目

     正月三日目の午後。  朝から梓は掃除機をかけていた。 リビングの窓からは穏やかな陽光が差し込み、昨日までの初詣の賑わいが少し遠く感じられる。 蓮はソファの端に座り、膝の上で開いたノートにペンを走らせていた。 昨日は休息日。  今日からトレーニングを再開している。 賢崇から教わった動きを一つずつ確認し、その感覚を記録していく。  まだ完全ではないが、同じ動きを繰り返した時のズレは少しずつ小さくなっていた。 すると、インターホンの音が室内に響いた。「はーい」 梓の声。  続いて玄関の扉が開き、聞き慣れない男性の声が聞こえてくる。「失礼いたします。天根でございます」 蓮はノートを閉じ、立ち上がった。 隣にいた椿も手にしていた布巾を畳み、姿勢を正す。 少ししてリビングへ案内されてきたのは、蓮の面影をそのまま一回り大きくしたような男性と、蓮とよく似た涼やかな目元を持つ女性だった。「父さん、母さん。……遠かっただろ」「いや、いいドライブだったよ。それより蓮、橘家の皆様に粗相はなかったかな?」 父・正臣は蓮へ短く言葉を返すと、すぐに賢崇と梓へ向き直った。「天根正臣です。こいつが冬休みの間、かなり無理を言ってお邪魔していると聞きまして。家内共々、本当にありがとうございます」「母の志保です。急に押しかけてしまってごめんなさいね。これ、よかったら皆さんで」 志保が差し出した手土産を、梓が笑顔で受け取る。「まあ、ご丁寧にありがとうございます。どうぞどうぞ、座ってください」 そのまま全員が席につき、年始の挨拶や近況の話が始まった。 正臣と賢崇が蓮のトレーニングについて話し、梓と志保がそれを横から補う。  最初こそ少し硬かった空気も、しばらくすると自然にほぐれていった。 椿はその輪の端に座りながら、膝の上で指を組んでいた。 やがて会話が一段落したところで、椿も姿勢を正す。

  • 俺だけの献立 〜隣のスポーツ栄養士志望が俺の食事を管理するらしい〜   77食目

     朝の空気は昨日よりも少しだけ鋭く、外に出た瞬間に頬に触れる冷たさがはっきりと分かる。蓮はマフラーを軽く整え、靴紐を締め直してから玄関を出た。空は澄んでいて、遠くの音がいつもよりよく通る。 賢崇の車で、目的地の神社に向かう。「やっぱり、人、多いわねぇ」 車の中から、梓がそうこぼした。  神社の手前の道路にはすでに人の流れができていて、同じ方向へ向かう足取りが自然と揃っている。  付近の駐車場に車を停めた四人は、そのまま人の流れに合流する。 参道に入る前から密度は上がり、歩幅は自然と制限される。前との距離を詰めすぎればぶつかり、離せば流れから外れる。蓮は周囲の速度を見ながら位置を合わせる。「はぐれないようにね」 梓はそう言うと、賢崇の腕に軽く手を回す。  二人はそのまま並んで進む。 蓮と椿はその後ろに位置を取る形になる。距離は詰まりすぎず、離れすぎず。流れに合わせて歩く。  鳥居をくぐる頃には、人の密度が一段上がる。横からの流れも混ざり、足元の自由がさらに減る。 前方で一度、流れが詰まる。「おっと」 止まるほどではないが、速度が落ちる。  その隙間に、横から人が入ってくる。 椿の位置が、わずかに後ろへずれる。  蓮は、視界の端でそれを捉えた。腕を伸ばし、椿の腕を掴むと、そのまま引き戻した。 椿を引き戻したことを確認した蓮は、すぐに手を離した。「前、詰まってるな」 それだけ言って、視線を前に戻す。  流れはそのまま続く。 椿は蓮のすぐ後ろに続くように、歩幅を合わせる。 二人の間に会話はない。  人の流れに押されながら、進む。 少し進むと、今度は後ろから圧がかかる。前に詰まり、横の人と肩が触れる。  足元の自由はさらに減り、周囲と距離を保つこと自体が難しくなる。 蓮は前方の空きと横の動きを見て、位置を微調整する。  椿はその後ろをついてくる。 また横から人が入り込みそう

  • 俺だけの献立 〜隣のスポーツ栄養士志望が俺の食事を管理するらしい〜   76食目

     夕食の時間。テーブルの上には出来たばかりの皿が並び、味噌汁の湯気が静かに立ち上っていた。  蓮は、椿が小鉢を運ぶ様子を見ながら、どこか落ち着かない様子だった。「……どうしたの、そんなそわそわして」「いや、やっぱりなにか手伝えないか?やってもらいっぱなしは落ち着かなくって」「まだ慣れてないの?もうここに来て五日でしょ」 蓮にとっては、夕食の調理から配膳までやってもらうのは、落ち着けなかった。短期間とはいえ居候の身であるならなおさら。  椿が味噌汁のお椀を人数分運び終えて席につく。「ほら、食べましょ」「あ、ああ。いただきます」 揃った声に合わせて食事が始まる。蓮も同じように箸を取り、最初の一口を運ぶ。「どう? 今日の」 梓がそう言って蓮たちを見る。  蓮は口の中のものを飲み込んでから顔を上げて答える。「今日も、とても美味しいです」 簡潔だが、素直な気持ちだった。「ならよかったわ。蓮くんが来て食べてくれる量も増えたから、作りがいがあるわぁ」 梓は機嫌よく笑い、そのまま椿にも視線を向ける。「椿は?」「……うん。おいしい」 短く返して、椿は視線を皿へ戻す。その様子に内心で首を傾けながらも、蓮は何も言わずに食事を続ける。 賢崇が味噌汁に口をつけながら「今日も出汁がよく効いてるね」と穏やかに言うと、梓が「そうでしょ?今日のお味噌汁は椿が作ったのよ、ねぇ?」と嬉しそうに返し、食卓の空気はそのままいつものように流れていく。 そして食事が半分ほど進んだ頃、梓が思い出したように声を上げた。「そういえば、もうすぐ年末じゃない?」「そうですね」 蓮は短く返す。「今年の初詣、どうする?」 問いの形だが、梓は間を置かずに続ける。「うちは毎年皆で行ってるのだけど……初詣、蓮くんも一緒に行くでしょ?」「いいんですか? ご一緒しても」 蓮は箸を止め、

  • 俺だけの献立 〜隣のスポーツ栄養士志望が俺の食事を管理するらしい〜   75食目

     朝、目を覚ましたとき、空気の冷たさは昨日と変わらなかった。  蓮は布団から起き上がり、室内の温度を一度だけ確かめてから立ち上がる。外はまだ明るくなりきっておらず、窓の外に見える空もいつも通りの色で、日付が特別であることを示すものは何もない。 洗面を済ませ、着替えを終え、時間を確認する。予定通りだ。  ドアを開けて廊下に出ると、家の中は静かで、キッチンの方からかすかに水の音が聞こえる。 そのままトレーニングルームへ向かう。  扉を開けると、賢崇はすでに中にいて、マットの位置を整えていた。「おはようございます」「おはよう。今日は大晦日だね」「はい」「とはいえ、やることは変わらない。整えて終わろう」「お願いします」 いつもと変わらない、一日の始まり。  マットの上に立ち、足の位置を確認する。股関節の可動域を確かめ、重心を移し、体幹を固定したまま動作をつなげていく。  賢崇は少し離れた位置から見て、必要な箇所だけを短く指摘する。「戻しを急がない。そこを揃えよう」「はい」 一度止めて、最初からやり直す。  速さではなく、同じ形で通すことを優先する。昨日までに整えた動きを崩さないこと。それだけに意識を置く。 繰り返す。  同じ動きが同じ位置に収まるかを確認しながら、無駄な力を抜き、次へつなげる。 呼吸を合わせ、負荷のかかり方を揃える。「今の形でいいよ」 賢崇が言う。「深く入れようとしなくていい。そのまま維持することがまず大事だよ」「分かりました」 その状態を数回繰り返し、最後にもう一度通す。  賢崇は一度だけ頷いた。「今朝はここまでにしよう」「ありがとうございます」 マットを離れ、軽く呼吸を整える。  窓の外は少しだけ明るくなっていた。 器具を元の位置に戻し、床を整えてから部屋を出る。 リビングに入ると、出汁の匂いが広が

  • 俺だけの献立 〜隣のスポーツ栄養士志望が俺の食事を管理するらしい〜   74食目

     夕食の時間。テーブルの上には出来たばかりの皿が並び、味噌汁の湯気が静かに立ち上っていた。  蓮は、椿が小鉢を運ぶ様子を見ながら、どこか落ち着かない様子だった。「……どうしたの、そんなそわそわして」「いや、やっぱりなにか手伝えないか?やってもらいっぱなしは落ち着かなくって」「まだ慣れてないの?もうここに来て五日でしょ」 蓮にとっては、夕食の調理から配膳までやってもらうのは、落ち着けなかった。短期間とはいえ居候の身であるならなおさら。  椿が味噌汁のお椀を人数分運び終えて席につく。「ほら、食べましょ」「あ、ああ。いただきます」 揃った声に合わせて食事が始まる。蓮も同じように箸を取り、最初の一口を運ぶ。「どう? 今日の」 梓がそう言って蓮たちを見る。  蓮は口の中のものを飲み込んでから顔を上げて答える。「今日も、とても美味しいです」 簡潔だが、素直な気持ちだった。「ならよかったわ。蓮くんが来て食べてくれる量も増えたから、作りがいがあるわぁ」 梓は機嫌よく笑い、そのまま椿にも視線を向ける。「椿は?」「……うん。おいしい」 短く返して、椿は視線を皿へ戻す。その様子に内心で首を傾けながらも、蓮は何も言わずに食事を続ける。 賢崇が味噌汁に口をつけながら「今日も出汁がよく効いてるね」と穏やかに言うと、梓が「そうでしょ?今日のお味噌汁は椿が作ったのよ、ねぇ?」と嬉しそうに返し、食卓の空気はそのままいつものように流れていく。 そして食事が半分ほど進んだ頃、梓が思い出したように声を上げた。「そういえば、もうすぐ年末じゃない?」「そうですね」 蓮は短く返す。「今年の初詣、どうする?」 問いの形だが、梓は間を置かずに続ける。「うちは毎年皆で行ってるのだけど……初詣、蓮くんも一緒に行くでしょ?」「いいんですか? ご一緒しても」 蓮は箸を止め、梓を見

  • 俺だけの献立 〜隣のスポーツ栄養士志望が俺の食事を管理するらしい〜   73食目

     夕方、窓の外がまだ明るさを残し、机に落ちる影は伸び切らないまま止まっている頃。  公園から帰宅した椿は、ノートとプリントを揃えて設問の条件を追い、ペン先を止めずにいた。  次々と問題をとき進め、途中で一度だけ見直してから次へ流している。 ふいに、スマホの通知音が響いた。通知を開くと、陽菜からメッセージがきていた。【つばきー、宿題助けてー】 表示を確認した椿がすぐに通話を開始すると、二回の呼び出し音で繋がった。「反応はやっ、暇してたの?」「私も課題やってる最中よ。ちょうどよかったわ」「そうなの?天根くんのご飯作ってる時間かと思ってたよ」「……今は実家に帰省中だから」「そっかー。まぁたまには羽伸ばしなよ」「そうね」「それはそうとさ、天根くんから離れると不安になんないの?ちゃんとご飯食べてるかなー、とか」「彼、最低限の調理はできるから。……レシピも置いてきたし大丈夫のはずよ」「へぇ、手料理食べたことある?」「ないわよ。最初のころは作ったものの写真送られてたから」「へー」「……聞いといてそれ?」「いいじゃん別にー」「はぁ……それで?どこで詰まってるの?」 通話をつなげてから、椿はペンを持ち直し、プリントの問題を解き進めていく。「栄養学のエネルギー換算のとこー。なーんか途中でズレるんだよね」「単位揃えてる?」「たぶん……」「たぶんでやらない。最初に揃えてから計算」「はーい」 軽く流す声に対して、椿はそのまま続ける。「炭水化物と脂質の係数、途中で混ぜないで。入れ替えると合わなくなるわよ」「あ、それかぁ。ちょっと待ってね」 紙をめくる音が入り、その間に椿は一行進め、途中で一度だけ式を見直して係数の位置を確認し、そのまま最後まで通す。「……できた、これで合う?」「見せて」「カメラ向け

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