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第4話

Author: 霧の世
どれくらい時間が経っただろうか。私は床の上で、あまりの痛さに目が覚めた。

真白は、私の傷を何度も踏みにじった。

「豪さんが帰る前に、私の面倒を見ろって言ってたじゃない。さっさと起きなさいよ!」

私は目を赤く腫らし、嘲笑うように言った。「だとしても、豪は離婚してくれないよ。離婚しない限り、あなたはただの不倫相手だよ」

「何を!」

真白は足に力を込め、一瞬、怒りで顔が歪んだ。

やがて彼女は、不気味な笑みを浮かべた。

「豪さんが離婚届にサインしなくても大丈夫よ。あなたが死ねば、それで済む話だから」

私が反応する間もなく、後ろから誰かに口をふさがれ、意識が遠のいていった。

次に目が覚めたのは、廃ビルの屋上だった。

視界がかすむなか、なんとか体勢を立て直した瞬間、ドアが蹴り開けられた。

「睦月!」

豪の、怒りに満ちた声が聞こえた。

はっと我に返ると、自分の手にはメスが握られていた。

真白がボロボロの姿で床にうずくまり、目を真っ赤に腫らして泣いていた。

「石井先生、私が悪かったんです。お願いだから、許してください!」

真白は私の足に抱きつき、何度も土下座をして許しを乞うた。

私は頭を振り、さっき嗅がされた薬に幻覚作用があることに気づいた。

「睦月、落ち着け!」

私と真白は、屋上の縁からすぐのところにいた。

豪の位置からは、ちょうど私がメスで真白を脅しているように見えただろう。

真白が突然、顔を近づけてきて、悪意のある笑みを漏らした。

「焦らないで。あなたのために、とっておきのプレゼントを用意したの」

真白が言い終わると、階下から突然たくさんの記者がなだれ込んできた。

彼らはカメラとマイクをこちらに向けていた。

「睦月さん、石井社長と結婚される前、ご自身がレイプ被害に遭われたことを隠していたというのは本当ですか?」

「睦月さん、長年お子さんに恵まれないのは、その時の後遺症なのですか?」

記者たちはスマホを掲げ、あの日の屈辱的な動画を再生していた。

若い私の悲鳴が、これまで毎晩のように見てきた悪夢と重なった。

全身の血が、一瞬で凍りつくような感覚に襲われた。

豪も顔色を変え、そばにいた部下の胸ぐらを掴んで怒鳴った。「いったい誰が記者たちを呼んだんだ!」

混乱の中、震える私の手は、突然掴まれた。

手の中のメスが、向きを変え、そのまま私の腹に突き立てられた。

「豪さん、助けて!」

真白は泣きながら、豪の方へ駆け寄ろうとした。

だが数歩も行かないうちに、私は彼女の髪を掴んでいた。

豪が驚きと恐怖の目で見つめる中、私は真白の腹部にメスを突き立てた。

「ここを刺されてこそ、一番痛いんだよ!」

私は目を真っ赤にしながら、涙をこぼした。

「私が地獄を見るなら、あんたも一緒よ」

真白が私を刺した傷は、致命傷ではなかった。でも、私は容赦しなかった。

床一面に血が広がり、頭がくらくらしてきた。その隙を突いて豪が駆け寄ってきた。

彼は真白を私から奪い取るように引きはがすと、抱きかかえて去っていった。

私は腹部を押さえて、その場に膝から崩れ落ちた。

意識を失う直前、豪の骨まで凍りつきそうな冷たい声が聞こえた。

「こいつはもう狂ってる。精神病院にぶち込め!二度と出てきて誰かを傷つけないようにな!」

「石井社長、精神病院に入れるにはご家族のサインが必要です」

豪は急いで真白を病院に連れて行きたかったので、書類に目も通さず署名した。

……

真白は目を覚ますと、取り乱して泣きわめいた。

「豪さん、お医者さんからもう妊娠できない体になったって……全部、あの女のせいよ!」

豪は必死に真白をなだめた。

しかし心には、なんとも言えない焦燥感で満たされていた。

さっき、睦月も大量に出血していたからだ。

睦月は頑固だから、治療を拒否しているかもしれない。

そう思うと、豪は居ても立ってもいられなくなり、立ち上がって外へ向かった。

だがドアに手をかける前に、向こうからドアが開かれた。

「母さん?」

豪が呆然とする中、莉子は冷たく口を開いた。

しかし、その言葉を聞いて、豪の顔は一瞬で血の気を失った。
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