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第367話

Auteur: 星柚子
部屋を出た瞬間、ちょうど書斎から正修が出てきた。その手には、小さな箱が握られている。

何だろうと思う間もなく――

彼はすでに箱を開け、中からきらりと光るものを取り出し、彼女の指にそっとはめていた。

奈穂は目を落とす。

……指輪。

ぴったりと指に馴染み、まるで最初からそこにあるべきもののようだった。

一見派手ではないのに、洗練されたデザインで、さりげない存在感がある。

――まさに彼女の好みど真ん中だった。

「……いつ準備してたの?」顔を上げて尋ねる。

正修は微笑むだけで、質問には答えず、「気に入ったか?」とだけ聞いた。

「うん!」奈穂は大きくうなずく。「すごく好き。本当に好き」

「この指輪が完成してから、ちゃんとしたプロポーズの準備を始めた。でもさっき……」

彼女の言葉を聞いた瞬間。衝動的に、書斎の金庫から持ち出してしまった。

これまで三十年近く生きてきて、彼がここまで衝動に突き動かれることは、ほとんどなかった。

それでも――

どうしても自分で設計したこの指輪を、彼女の指に嵌めたくなった。

これじゃあ、入念に準備していた盛大なプロポーズ計画が、全部意味なく
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