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第5話

Author: おやき
清華があの家を受け取らなかったことで、宗司は本気で腹を立てた。

帰り道、彼は清華に一言も口を利かなかった。

家に帰ると、息子の不機嫌な様子を見て、慶子はすぐに清華を睨みつけた。

清華は慶子など意にも介さず、二階へ服を着替えに上がった。

夕食時、階下に降りると、敏と宗司は二人とも家で食事をとらず、慶子が一人で食卓に座っていたが、清華の分の食器はなかった。

「あなた、随分とご立腹のようだったから、お腹も空いていないでしょうと思って。恵美さんにはあなたの分は用意させなかったわ」

「そうですか」

清華は、恵美が大皿料理をキッチンから運んでくるのを見ると、さっとそれを受け取りに行った。

以前は清華も恵美と一緒に夕食の準備を手伝っていたため、恵美は清華が手伝ってくれるものと思い、何気なく皿を渡した。

だが清華は、わざとそれを受け取り損ねたふりをして手を引いた。大皿はガチャンと音を立てて床に落ちた。

それを見た慶子は、すぐに清華に向かって怒鳴った。「あなた、何してるの!皿を運ぶなんて簡単なことさえできないなんて、私たち高遠家はあなたを嫁にもらって本当に大損だわ!」

「わざとじゃありません」

清華はひどく恐縮したふりをし、慌ててキッチンに駆け込んで新しい皿を持ってくると、床に落ちた料理を素手で掴んで皿に戻し、それを慶子の前に叩きつけた。

「あ、あなた、何てことをするの?」

「どうぞ、召し上がれ。無駄にしてはもったいないですわ」

「私に床に落ちたゴミを食べろっていうの!」

「ゴミこそが、あなたのお口に合うのではなくて?」

「あなた!」

あなた自身が、そもそもゴミなのだから!

慶子が怒りで顔を真っ青にしているのを見て、清華は手を洗い、楽しそうに二階へ上がっていった。

翌日、会社に着くと、文佳がエレベーターホールで彼女を待っていた。

「リーダー、一体どういうことですか、私、心配で死にそうです!あの白石若菜って、リーダーの友達じゃなかったんですか?どうしてリーダーのプロジェクトを横取りするんですか。しかも、もうすぐ契約っていう、まさに成果を手にするって時に!これって、いじめじゃないですか!」

文佳は清華が手ずから育て上げた部下で、彼女と一心同体だ。

清華は彼女の肩をぽんと叩いた。「安心して。準備はしてあるから」

「何の準備です?」

清華は彼女に向かって悪戯っぽく笑ったが、説明はしなかった。

文佳は清華の腕に抱きついた。「とにかく、私を見捨てないでくださいね!」

文佳は清華より三つ年下で、清華にとっては妹のような存在だ。よくこうして甘えてくる。

清華は文佳の額をこつんと叩いた。「わかってるわよ」

プロジェクト部へ入ると、彼女が足を踏み入れた途端、同僚全員の視線が彼女に集まった。何が起こったのか知りたくてたまらない、といった顔だ。

清華は彼らに微笑みかけ、安心させるように頷いた。

「清華、やっと会社に来てくれたのね。早く、私と一緒に社長のところに行きましょう」

若菜はキャリアスーツを着こなしていたが、足元はフラットシューズだった。そのため、清華の前に立つと、随分と背が低く見える。

彼女は清華の手を掴むと、社長室へと向かおうとした。

「社長が突然、私にこのプロジェクトを引き継げなんて言うの。あなたの功績を横取りするわけになんていかないわ。私、断ろうとしたんだけど、社長の態度がすごく強硬で。仕方なく、一旦は引き受けたけど、あなたが会社に来たら、もう一度二人で社長のところに行って、はっきりさせましょう」

若菜は明らかに、これらの言葉をわざと他の同僚たちに聞かせるために言っていた。

この白石若菜は友達を裏切るような人間ではない。利益を捨ててでも、友達の側に立つ、と。

若菜がそう言うのを聞いて、他の同僚たちは案の定、感心したような表情を浮かべた。

清華は若菜を見つめた。

自分の一番の親友は、いつから変わってしまったのだろう。今のような、偽善的な姿に。

あるいは、もしかしたら、自分は若菜の本当の姿を、これまで一度も見たことがなかっただけなのだろうか……

もし若菜の言う通り、自分と一緒に敏のところへ行けば、結果は敏が断固として自分をプロジェクトから外し、若菜に「やむを得ず」このプロジェクトを引き継がせることになるだけだ。

そうなれば、同僚たちは、若菜が親友のプロジェクトを横取りしたとは思わないだろう。自分自身に何か問題があって、社長が頑として自分を外したのだと思うはずだ。

家族ぐるみで、実に息の合った連携プレーだ。

「はあ。会社が私を『用済み』にしようとするんだもの、当然、私も納得いかないわ。でも、あなたが引き継いでくれるなら、いくらか気も休まるわ」清華は若菜の手を握った。「だって、私たちは親友だもの。私の『果実』をあなたが摘んでくれるなら、あなたは当然、私のこの恩を覚えておいてくれるでしょう」

「用済み」という一言で、この件の本質がはっきりした。

そして、「私の果実をあなたが摘む」とは、この成果は清華が苦労して作り上げたものであり、若菜はただ、果実が熟すのを待って摘みに来ただけの人だ、ということだ。

ただ果実を摘むだけの人間に、同じチームの同僚たちが心から悦服するわけがない。

若菜の顔から笑みがこわばった。「わ、私、このプロジェクトを引き継ぐなんてできないわ」

「じゃあ、退職する?」

「私……」

「もちろん、あなたが辞めたくないのはわかってるわ」

清華はにこやかに、あくまで寛大な態度を見せ、それによって若菜の器の小ささを際立たせた。

彼女は若菜を伴わせず、一人で敏のオフィスへ向かった。

敏は彼女が来ることをわかっており、対応策も考えてあった。

「清華。お前も知っての通り、俺は常々お前を高く評価している。いずれ俺が退いて、宗司が会社を継いだ時、お前は間違いなく内助の功を発揮し、あいつの右腕となる存在だ。

今、俺がまだこの会社に睨みを利かせているうちに、お前には高遠家のために新たな地平を切り開いてもらいたい。若いうちこそ、多くの経験を積まねば、大任は務まらん」

新入社員の大学卒業生を洗脳するにはうってつけの言葉だ。だが残念なことに、自分はとっくにこの世界の酸いも甘いも噛み分けた「古株」だ。

「社長。何をおっしゃりたいのか、私にはよくわかりかねますわ」

「海州市(かいしゅうし)にプロジェクトがある。お前にそこへ行って、指揮を執ってもらいたい。あのプロジェクトも同様に重要で、俺はお前しか信頼していない」

はっ。自分を地方に追いやって、その隙に若菜を高遠家に戻して安胎させるつもりだ。

彼ら一家は仲睦まじく、一方で自分は何も知らされぬまま、高遠家のために馬車馬のように働かされる。

この算段、見事すぎて親指を立ててやりたいくらいだ。

「海州市だか何だか、私は行きません。お話はこの前と同じです。金森のプロジェクトを諦めろと言うなら、私に盛大な結婚式をくださいな」

敏は眉をひそめた。「俺が今、こうしてお前に好意的に話をしているのは、ひとえにお前が息子の嫁だという面子を立てているからだ。そうでなければ、ふん!」

清華は眉を吊り上げた。「そうでなければ、どうなさるおつもりで?」

「お前を即刻クビにすることとてできるんだぞ!」

自分をクビに?

「へええ、結構ですわ。でしたら、どうぞ私をクビにしてください!結婚式は、宗司に要求します。ですが、このプロジェクトのボーナスは、きっちりいただきますわ。さもなければ、引き継ぎはいたしません!」

敏は重々しくため息をついた。「清華、お前はいつからそんなに自己中心的になったんだ。実にがっかりだ」

清華は立ち上がった。「私は、働いた分だけの報酬を得る、それは自己中心的ではなく、私が受け取るべき正当な権利だと考えておりますわ」

プロジェクトの引き継ぎをスムーズに行うため、敏は財務部に指示し、その場で清華にボーナスを振り込ませた。

これは決して少なくない金額だ。敏の顔色は非常に悪かった。

だが、敏の顔色が悪くなるにつれ、清華の顔色は実に良くなった。

社長室を出ると、清華は屋上へ行き、金森側でこのプロジェクトを担当しているマネージャーに電話をかけた。

「金森さんから話は聞いているわよね?」

「はっ。今後はあなたがこのプロジェクトの総責任者でいらっしゃると。我々部門一同、あなたの指示に従います」

「明日、天城グループの人間が契約書にサインしに行くわ」

「契約書はすでに作成済みです」

「破棄してちょうだい」

「は?」

「彼らの設計プラン、まだいくつか問題があると思うの。適当にいくつか細かい点を指摘して、修正させて」

「かしこまりました。ご意向、承知いたしました。そのように手配します」

電話を切り、清華はフッと笑った。

やはり、人を馬鹿にするのは、実に面白い。

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