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2 夫婦って何だろう?

Author: けいこ
last update Last Updated: 2025-07-04 07:01:37

だからだろうか、こっそりその場で連絡先を聞かれ、すごく驚いたけれど、私はあっさり教えてしまった。

そんな刺激的な出会いにワクワクしたのを今でも覚えている。

今考えれば、旦那は……そういう軽い人だとわかるけれど、その時はまるでドラマみたいな展開に心が踊っていた。

それから、時々2人で会うようになり、デートを重ね、告白されて……

私はすごく幸せな日々を過ごしていた。

毎日がバラ色で、彼氏、彼女として、明るい未来を想像できる関係になれた。優しくしてくれる彼との結婚を夢見るようになってからは、わりとすぐに結婚に向かって話が動き出し、1年後には籍を入れることができた。

婚姻届を出した時、私達は夫婦になれたんだ――と、嬉しくて涙が溢れた。

結婚式はしていない。

ウエディングドレスを着ることはできなかったけれど、そんなことはどうでもよかった。

これから先、お金が貯まれば……いつか、素敵なドレスを着て簡単な式を挙げられる。そう信じていた。

私が製薬会社三井グループの娘だってことは知らなかったから、お金目当てでなかったことは間違いない。

確かにお金目当てではなかったけれど……

でも、旦那は、お金よりも女性が好きな人だったんだ。

結婚してしばらくして、旦那の態度がだんだん変わっていくことに最初はとても戸惑いを感じていた。

暴力があったわけではなく、私に冷たく当たるわけでもない。夫婦関係も……たまにはあった。

だけど、明らかに女性の影がチラつき出し、私の心はいつも動揺していた。

月日が経つにつれ、いよいよ私にもわかるような浮気が始まった。

きっと相手は1人や2人じゃない――

私にもバレているのが分かっていて、わざと遊んでいると思うと、とても悲しくて……つらかった。

胸が張り裂けそうになり、思い切って私が問い詰めた時、開き直った態度で彼は言った。

「魅力の無いお前が悪い」「結婚しているからといって、稼ぎの無いお前が俺を束縛するな」「女として終わってる」と。

子どもの頃に母を亡くしている私には、相談する相手もいなくて、ただ我慢する毎日に心が折れそうだった。

そんな私にパパは何となく気づいていたみたいで、「つらいことが多過ぎたら、いつでも帰ってきなさい」と、時々私に優しく声をかけてくれていた。

でも、私は……帰らなかった。

ううん、帰れなかった。

だって、大好きなパパにこんなことで心配をかけ
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  • 優しい愛に包まれて~イケメン君との同居生活はドキドキの連続です~   2 夫婦って何だろう?

    だからだろうか、こっそりその場で連絡先を聞かれ、すごく驚いたけれど、私はあっさり教えてしまった。そんな刺激的な出会いにワクワクしたのを今でも覚えている。今考えれば、旦那は……そういう軽い人だとわかるけれど、その時はまるでドラマみたいな展開に心が踊っていた。それから、時々2人で会うようになり、デートを重ね、告白されて……私はすごく幸せな日々を過ごしていた。毎日がバラ色で、彼氏、彼女として、明るい未来を想像できる関係になれた。優しくしてくれる彼との結婚を夢見るようになってからは、わりとすぐに結婚に向かって話が動き出し、1年後には籍を入れることができた。婚姻届を出した時、私達は夫婦になれたんだ――と、嬉しくて涙が溢れた。結婚式はしていない。ウエディングドレスを着ることはできなかったけれど、そんなことはどうでもよかった。これから先、お金が貯まれば……いつか、素敵なドレスを着て簡単な式を挙げられる。そう信じていた。私が製薬会社三井グループの娘だってことは知らなかったから、お金目当てでなかったことは間違いない。確かにお金目当てではなかったけれど……でも、旦那は、お金よりも女性が好きな人だったんだ。結婚してしばらくして、旦那の態度がだんだん変わっていくことに最初はとても戸惑いを感じていた。暴力があったわけではなく、私に冷たく当たるわけでもない。夫婦関係も……たまにはあった。だけど、明らかに女性の影がチラつき出し、私の心はいつも動揺していた。月日が経つにつれ、いよいよ私にもわかるような浮気が始まった。きっと相手は1人や2人じゃない――私にもバレているのが分かっていて、わざと遊んでいると思うと、とても悲しくて……つらかった。胸が張り裂けそうになり、思い切って私が問い詰めた時、開き直った態度で彼は言った。「魅力の無いお前が悪い」「結婚しているからといって、稼ぎの無いお前が俺を束縛するな」「女として終わってる」と。子どもの頃に母を亡くしている私には、相談する相手もいなくて、ただ我慢する毎日に心が折れそうだった。そんな私にパパは何となく気づいていたみたいで、「つらいことが多過ぎたら、いつでも帰ってきなさい」と、時々私に優しく声をかけてくれていた。でも、私は……帰らなかった。ううん、帰れなかった。だって、大好きなパパにこんなことで心配をかけ

  • 優しい愛に包まれて~イケメン君との同居生活はドキドキの連続です~   1 夫婦って何だろう?

    夜になって、智華ちゃんが帰ってきた。「おかえりなさい、智華ちゃん」「あの、健太さん知りませんか?」「え、ああ。あの人なら部屋にいると思うけど……」挨拶さえもなしに、旦那のことを私に訊ねるなんて……「ありがとうございます。今日は健太さんと食事に行くので夕食は要りません」「旦那と?」あまりに淡々と吐き出されたセリフに、思わず目が点になる。「はい。何か問題でもありますか?」智華ちゃんの高圧的な態度に驚いた。「ねえ、智華ちゃん。休日は一緒に食事しなくてもいいんだけど、食べないなら、もう少し早く知らせてくれるかな?連絡がなかったから、智華ちゃんの分も用意しちゃったの」「さっき健太さんから連絡もらって、食事に誘われたので」えっ……旦那が誘った?「……そ、そうなんだ。旦那の誘い、受けたんだね」「断る理由なんてないですから」「……で、でも」「ああ、おかえり。智華ちゃん」「あ、健太さん!すみません、遅くなりました」「全然いいよ。こっちも急に誘ったりしてごめんね。じゃあ、行こうか」旦那には私のことが見えていないのだろうか?あまりに無神経な会話に、私はたまらず旦那に声をかけた。「待って、あなた、智華ちゃんは大事な同居人よ。しかもお嫁入り前の若い娘さん。そんな女の子を誘うなんて……。あなたは仮にも既婚者なんだから」そう言いながらも思った。私も、祥太君と颯君に抱きしめられたんだ……私だって、既婚者なのに。「智華ちゃんとは気が合うから、ただ食事して話すだけだろ。変なこと考える方がおかしい」あなただから心配するの、と言ってやりたい。「私、健太さんと話してると楽しいです。もっといろんなことを教えてほしいって思ってます。だから……食事に誘ってもらって嬉しいんです」旦那を見るキラキラした目。本当に美人な智華ちゃん。こんな若くて綺麗な女の子に「好き」なんて言われたら、旦那はきっとイチコロだろう。間違いなく……そういう関係になるに違いない。万が一、そんなことになったら……智華ちゃんの親御さんになんて言い訳すればいいのだろうか。それに……旦那は、もう、私のことなんて1ミリも眼中にないんだろうか……1ミリさえも。今さら考えても仕方のないことだけど、どうしてこんなことになってしまったのだろうか――百貨店の時計売り場で働く旦那と出会ったのは7

  • 優しい愛に包まれて~イケメン君との同居生活はドキドキの連続です~   3 真っ白なキャンバス

    ううん……違う、私、わざと逃げずにいるの?嘘でしょ?「俺のこと、嫌い?」「えっ?」「答えられないよね。結姉は、健太さんの奥さんだし、俺はただの同居人だから……」「ちょっと颯君、本当にどうしちゃたの?おかしいよ」「答えて。ねえ、結姉、答えてよ」必死に聞く颯君に動揺が隠せない。ドキドキして、心臓がおかしなことになっている。「そんなこと……。ごめん、私、何て言えばいいのかわからないよ……」颯君のことをただの同居人だと思っていたなら、きっと、この腕を無理やりほどこうとしたはず。でも、私はそうしなかった。もしかして私は颯君を好きになったの?本当に……この感情がわからない。胸がこんなに熱いのに、こんなにも苦しいのに、どんな言葉で表せばいいのか……「ごめんね。もう……離してくれるかな……」その言葉で、ようやく颯君はそっと私から離れた。「……ごめん」「……ううん。きょ、今日のモデルはこれで終わり。さあ、夕食の準備しないとね。カレー美味しくできたと思うから、みんなで食べましょ」「……」「後で降りてきてね」私は急いで颯君の部屋を出て、そのドアを閉めた。呼吸が上手くできない。この胸の高鳴り、このまま死んでしまうんじゃないかと思うほどだった。今日、私は、颯君と祥太君に抱きしめられた。同じ日に2人から……これは夢?だけど、2人の感覚がまだ体に残っている。だったら、夢じゃなくて現実なの?もしかして、私、みんなにからかわれてるの?みんなして私を?ダメ、もう……頭の整理ができない。とにかく、今日のことは一旦忘れよう。冷静になって、いつもの自分に戻らないと。私は、何も無かったかのように、2人とのことを無理やり胸の奥にしまい込み、階段を降りた。

  • 優しい愛に包まれて~イケメン君との同居生活はドキドキの連続です~   2 真っ白なキャンバス

    颯君は、まず、鉛筆でデッサンしているようだった。私を見て、キャンバスに向かって描いて……そして、また私を見る。しばらくはその繰り返し。鉛筆を動かす指がとてもしなやかで、なぜかその手に男性としての色気を感じずにはいられなかった。真剣な眼差しの颯君――今日はとても大人びて見える。きっと、この人の魅力は、絵を描いている時に最大限に引き出されるのかも知れない。「結姉。すごく……綺麗だよ」無防備な心に突然飛び込んできた言葉に驚く。目が合っている状況が恥ずかしい。「お、お世辞は言わなくていいよ」「お世辞なんか言わない。本当に綺麗だ……」今度は、キャンバスに描かれた私を見ながら言った。「大人を……からかわないで。私、綺麗なんかじゃないし。旦那も言ってたでしょ?私には魅力が無いって」思い出したくないことが勝手に頭に浮かんだ。「……」「それに、私にお世辞を言ってもお家賃は安くならないわよ~」思わず言い慣れない冗談を言って笑ってみせた。これは、完全なる照れ隠しだった。なのに、颯君は何も言わない。「ちょっと、颯君、何か言ってよ。バカなこと言って、恥ずかしいじゃない」「……ごめん」「ねえ、颯君。朝もだけど、今日はなんか変だよ。どうしたの?」「別に変じゃないよ、俺は。朝は、健太さんが結姉のことをバカにしたから」旦那は、私を女としては見ていない。若い時は、もう少し大事にされてたのに……今の私のことは、ただのおばさん扱い。「仕方ないのよ。本当のことだから。あの人は、智華ちゃんやひなこちゃんみたいな若くて可愛い子だけが女だと思ってるんだから」「仕方ないなんて……」「颯君が心配しなくても、私は大丈夫なの。実際、自分が若い子とは比べ物にならないって……ちゃんとわかってるから」「どうして?どうして結姉がそんなこと言われなくちゃならないんだ?」「……颯君、やっぱり変だよ。朝のことはもう……いいの。あっ、私が今言い出したから気にさせちゃったんだよね。ごめん、ごめん。冗談のつもりだったの。本当よ」「結姉……」突然、颯君が立ち上がった。「えっ?」次の瞬間、颯君は、座ったままの私を大きな腕で包むように優しく抱きしめた。嘘……ひざをつきながら、更に腕に力を込める颯君。「……やめて……ちょっとダメだよ。離して……」今のこの状況が理解でき

  • 優しい愛に包まれて~イケメン君との同居生活はドキドキの連続です~   1 真っ白なキャンバス

    「結姉、さっきはごめん……」「颯君!」部屋に戻っていた颯君が、2階から降りてきた。「結姉、目が赤いけど……。もしかして泣いてた?」「な、何でもないよ。大丈夫だから」私は後ろを向いて目を拭った。「健太さんにまた何か言われたの?」「ち、違うよ」「……じゃあ、もしかして祥太君と一緒だった?今、階段で会ったから」「あ、うん。祥太君がね、ピアノを弾いてくれて……」「ふ~ん、それで感動したんだ。ズルいよな、祥太君は」不機嫌そうな顔で颯君が言った。「どうしてズルいの?」「ズルいよ。だって、ピアノはさ、弾いてすぐに相手に思いを伝えられる。でも、絵は……そういうわけにはいかないから」「そ、そうかな……。ピアノも絵も、私はどっちも素敵だと思ってるよ。颯君の絵も、一筆一筆に思いがこもってるんだよね」また、少し黙る颯君。「結姉、今からモデル頼める?」「えっ、今から?」「そ、今から」「どうしようかな、この後、夕食だし」カレーはもう出来上がっている。祥太君も降りてくる気配はない。「少しでいいよ。夕食までの間」「……うん、わかった」私はうなづいた。颯君の表情からとても真剣な思いが伝わってきて、断ることができなかった。ゆっくり階段を上がり、颯君の部屋に向かう。10畳ほどある少し広めの部屋。コーディネートカラーの黄色が、部屋を明るく感じさせている。入ってすぐに、イーゼルに立て掛けられた、大きくて真っ白なキャンバスが私の目に飛び込んできた。 「ここに座って」「あっ、うん」モデルなど慣れていなくてドキマギする。何をどうすればいいのか全然わからない。「緊張しなくていいよ。リラックス」「リラックス……って、難しいね」「大学ではみんな順番にモデルもしてるよ」「そうなの?モデルさんが来るのかと思ってた」「たまには違うところから呼んでくるけど、普段の練習はみんなで交代したり、まあ、志願するやつもいるけど」「そうなんだ。颯君もモデルとかするんだね」「するよ。モデルは退屈だけど、描いてもらうのはやっぱり嬉しいし。みんなに見られるのはちょっと恥ずかしいけど、そのうち慣れてくる」きっと、颯君がモデルなら描きがいもあるだろう。本物のモデル顔負けの颯君、もし私に絵の才能があればぜひ描いてみたかった。「慣れる……かな」「みんなリラックスし

  • 優しい愛に包まれて~イケメン君との同居生活はドキドキの連続です~   5 大切な悩み相談

    「ありがとう。祥太君、すごく……ものすごく素敵な演奏だったよ」弾き終わった祥太君に拍手をしてお礼を言った。「聴いてくれてありがとう。心を込めて弾いたよ。あれ?結菜ちゃん、もしかして泣いてる?』そう言って、私の顔を覗いた。「そ、そりゃ、泣くでしょ。あんな素晴らしい演奏を聴いたら」思わず、顔をそらす私。そんなこと……こんな至近距離で言われたら恥ずかしいくてたまらない。「結菜ちゃんって……ほんとに可愛いね」「えっ……」祥太君はそう言うと、私に近づいて、そして……頭をなでてから、優しくそっと抱きしめた。「……」お互い黙っている。その行動があまりにも突然過ぎて、体が動かない。どうして……?ただ、そんな思いだけが頭の中を巡っていた。祥太君の腕の強さを感じ、何が何だかわからないのに、勝手に目頭が熱くなった。次の瞬間、祥太君のスマホが鳴り、私は我に返って祥太君から離れた。「あっ、で、電話みたいだね」「う、うん。そうみたい……。ごめん、今日はありがとう、じゃあ」それだけ言って、祥太君は振り向かずにそのまま部屋を出ていった。激しく打つ心臓の音が聞こえる……祥太君も、颯君も、いったいどうしたっていうの?2人とも……変だよ……ピアノの余韻と共に、私の体に残る祥太君の感触が切なくて……言葉にできない感情が、今、心の中にごちゃごちゃに散らかってしまった。

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