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第305話

Auteur: 十一
「もしもし、どなたかしら?」

「こんにちは、時見晴香様のご家族でしょうか?こちらは京西病院産婦人科の入院棟です。時見様が……」

この話し方だと、美琴は病院からの電話だとすぐにわかった。

たぶん晴香がまた騒ぎを起こしたに違いない。

彼女は遮るように言った。「また調子が悪いんでしょ?どうせまたぎゃあぎゃあ騒いでいたでしょ?私に電話しなくていいわ。死にたかったら遠くで死んでちょうだい。私を煩わせないで!」

そう言い捨てると、美琴は一方的に電話を切った。

ふん!毎回同じ手を使うって、うんざりしない?

美琴はよくわかっていた。晴香の最後の切り札はそのお腹の子にある。

だからいくら勇気があっても、本当に子供に危害を加えることはしないはずだ。

これに気づくと、美琴は今まで受けてきた全ての屈辱が無駄だったように思えた。

わざと田中や佐藤、運転手たちを連れ去ったのも、時見晴香を苦しめるためだった。

世話してくれる人がいない苦しい生活を味わわせてやる!

そう思うと、彼女は顔に貼っているパックを軽く叩きながら、楽しそうに鼻歌を歌った。

ナースステーションでは、二人の看護師が顔を見合わせ、呆れていた。

最後にため息をついた。

「やはり愛人に良い末路はないわ」

……

晴香は二日間病院で寝たきりだった。

その間、出血が止まらず、再び手術室に運ばれたこともあった。

手術室から出てきた時、彼女の顔は人のものではないように青白く、目は開いていたが一言も話せなかった。

出血には重篤な感染症が伴っていた。

彼女はひどい目に遭った。

しかもそばには介護人一人しかいなかった。

その間、晴香も何度か海斗と美琴に連絡を試みたが、誰も電話に出なかった。看護師に連絡を頼んでも結果は同じだった。

彼らはもう彼女を構わない気でいるのだ!

体の不調に加え、鬱が解消できず、彼女はますます辛辣になった。

ナースステーション全体が悲鳴を上げていたが、それでも歯を食いしばって対応しなければならなかった。

なんならVIP病室の患者なんだから。

……

美琴が子供をいなくなったことを知ったのは、三日後のことだった。

那月から電話を受けた時、彼女は一瞬ぼうっとした。

いなくなった?

どうしていなくなったの?

今まで何度も入院したのに、なんで今回は急にいなくなったの?

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