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第690話

Author: クレヨンまるこ
啓介が帰ってからというもの、千暁の表情はどこか重苦しかった。

そんな彼を見た良太は、軽く咳払いしてから尋ねた。「おじいちゃん、何か気づいたんじゃないか?」

先ほどの啓介と千暁のやり取りは、どうにも表面どおりの単純な話には思えなかった。

啓介は、おそらく何かを察している。

良太の言葉を聞き、咲夜も心配そうな眼差しを千暁へ向けた。

彼女もまた、良太と同じことを感じていたのだ。

千暁は良太を横目で見た。「祖父は今、あまり経営に口を出してないだけだ。別に耄碌したわけじゃない」

啓介もかつては名の知れた実業家だった。

そうでなければ荻野グループを任されることも、あれほどの繁栄を築き上げることもできなかっただろう。

実際、啓介はすべてを理解したうえで静観している。

千暁が今やっている一連の行動が何を意味するのか、見抜けないはずがなかった。

だからこそ、啓介はなかなか首を縦に振ろうとしないのだ。

表向きは、ただ孫を荻野グループから手放したくないように見える。

だが実際には、そういう形を取ることで千暁を止めようとしているだけだった。

啓介は、千暁にその先へ進んでほしくない。
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