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第5話

مؤلف: 三水
煌は反射的に手を伸ばし、力なく崩れ落ちる冬美の体を受け止めた。

生温かい血がみるみる溢れ、煌の手を赤く染めていった。

冬美は口を開いた。けれど声は出ない。意識はあっという間に暗闇へ呑み込まれた。

再び目を覚ました時、冬美は病室のベッドに横たわっていた。

腹部を裂くような痛みが、直前に何が起きたのかを容赦なく思い出させた。

目を開けると、ベッドのそばに煌が座っていた。その顔には複雑な色が浮かび、目の奥は赤く血走っていた。冬美が目を覚ましたと分かると、煌はすぐに口を開いた。その声は、これまでにないほど重かった。

「どうして俺を庇って刺された?」

冬美は喉がひどく乾いていた。あれはただの事故で、誰かに押されただけだと、どうにか説明しようとした。

けれど煌は冬美の言葉を遮った。苛立ちと、妙な確信が混じった目をしていた。

「冬美、お前がまだ俺を好きで、俺のためなら死ねるくらいだってことはよく分かった。でも、俺はもうはっきり言ったはずだ。今の俺が好きなのは凛だけだ」

煌は何かを決めたように、ポケットから小切手帳を取り出した。新しい小切手に署名し、前の一枚と一緒にベッド脇のサイドテーブルへ置いた。

「前のは受け取らなかったな。今回はさらに2億円を上乗せする」

煌は立ち上がり、もう冬美を見なかった。

「金は持っていけ。これからは……二度と俺たちの前に現れるな。凛は純粋で、不安になりやすい。お前の存在で、あいつを不安にさせたくないんだ」

そう言い残し、煌は未練など一切ないように背を向けて出ていった。

冬美は目に刺さるほど真っ白な二枚の小切手を見つめた。腹部の痛みと重なって、苦笑する力さえ残っていなかった。

彼女は目を閉じた。ただ、果てしない疲れだけが体の奥へと沈んでいった。

それから数日が過ぎ、冬美の傷は少し落ち着き、退院できることになった。

退院手続きに向かうと、ちょうど凛の退院手続きに付き添っている煌と鉢合わせた。

凛は冬美を見るなり、すぐに歩み寄ってきた。顔には心配そうな色が浮かんでいたが、その奥にはほんのわずかな優越感が透けて見えた。

「冬美さん、傷はもう大丈夫?あの日、煌を庇ってくれてありがとう。5年も一緒にいた気持ちをすぐに手放せないのは分かる。でも、今の煌は私の彼氏だから。二人の間に割って入るような真似は、やっぱりよくないと思うの」

冬美には、あれはただの偶然の事故だったと説明できなかった。迅との契約のことも、口にできない。

彼女は青ざめた顔で、ただ一言だけ答えた。「安心して。これからはもう、絶対に邪魔なんてしないから」

そばに立っていた煌は、その言葉を聞いていた。感情の波ひとつ見せず、まるで本当にすべてを手放したような冬美の顔を見ていると、煌の胸にまた名のつけようのない苛立ちが込み上げた。ひどく息苦しい。

冬美は先に手続きを済ませ、背を向けて去ろうとした。

「冬美さん!」

その時、凛が冬美の腕を掴んだ。声は明るく、親切そうだった。

「家に帰るんでしょう?私たちもちょうど帰るところなの。ついでに送っていくよ。この辺り、タクシーが捕まりにくいし、外はまた雨が降ってるから。一人じゃ危ないよ」

冬美は反射的に手を引き抜こうとした。

「大丈夫よ。ありがとう」

「遠慮しないで。どうせ同じ方向だし……」

軽く揉み合いになった拍子に、冬美の腕に掛かっていたバッグが床へ落ちた。中身がばらばらと散らばった。

その中から、冬美が大切にしまっていた迅との「監督契約書」が滑り出た。

契約書は、ちょうど煌の足元へ落ちた。

「これは何だ?」

煌の声が低く沈んだ。

彼はその契約書を拾い上げた。

冬美の心臓が、凍りついた。ほとんど反射のように身を乗り出し、煌の手から契約書を奪い返した。

「何でもない。ただの……この前買った部屋の契約書よ」

煌の眉が、一瞬で険しく寄った。

刃のように鋭い視線が、冬美の青白い顔をなぞった。

今の冬美の慌てようは、ただの部屋の契約書を見られた時の反応には到底見えなかった。

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