Masukアンガー山はそこまで遠くはないが、徒歩で半日はかかる距離にある。
急がなければ。アンガー山までは街道を利用していく。
最初は勢いよく飛び出して早歩きでずっと来ていた。 俺は疲労というものがないからいいが、テイマーであるミリアは体力がそんなにある訳ではなく。二時間経った頃にはヘトヘトになっていた。
「ううぅぅぅ。こんなに歩くのってしんどかったっけぇ?」
ヨロヨロと歩いているミリア。
そんなのではあの子のお母さん助からないぞ? 仕方ないなぁ。ミリアの前に回るとしゃがむ。
そして、背中を指さす。「えっ? ナイル……もしかしておぶってくれるの?」
コクリと頷く。
「うぅ。ごめんね。有難う」
背中に覆いかぶさってくる。
うん。おんぶしても体は問題ないな。 力的にも問題なくおぶれる。ミリア軽いな。
そして、背内に柔らかい物が当たる。 んー。骨なのに感触があるのはちょっと不思議だよなぁ。骨にも神経みたいなのがあるって事かな?
神経も何も骨だけだからそんなわけないか。 謎だな。スケルトン。おぶって歩いていく。
疲労がないからこの方が効率的かもしれない。 なんか、ミリアを背内に載せる専用の物を作った方がいいかもしれないな。これなら、もう少しでアンガー山には着きそうだ。
そう思った矢先、ブラウンウルフに囲まれた。 気づいたら囲まれていた。統率が取れている群れだな。
リーダー格が居るに違いない。 一旦ミリアを下ろす。それを隙と思ったのだろう。
一番近かったブラウンウルフが突進してきた。 剣を抜く暇はなかった。前世で剣聖になったが、剣だけしかできなかった訳では無い。
何せ、剣がなきゃ何も出来ないと思われる為、剣を隠されたりもした。その上で襲撃。
良くやられたものだ。 だから、俺は素手でも強くなる事にした。迫り来るブラウンウルフのこめかみを蹴りを放ち吹き飛ばす。
「ギャンッ!」
痛かったか?
硬化した骨だからな。 痛いのかもな。「ウウゥゥゥゥ」
今ので警戒されたようだ。
俺達には時間が無い。 悪いが、こちらから行く。ゆっくりと歩み寄る。
ジリジリと後ろに下がっていくブラウンウルフ。ストロング流剣術 幻剣術
「カタタ(現《うつつ》)」残像だけその場に残して、目の前のブラウンウルフに肉薄する。
近づかれた事に気づいていない。 後は首を切り落とすのみ。これで一体。
後は輪になっているので、残像に気を取られている間に始末する。中心にいる俺の残像はまだ残っている。
次々とブラウンウルフを横から切り飛ばしていく。 半分くらい来た時、残像が無くなった。「グルルルル!」
大きめなブラウンウルフの周りに土の塊が浮かび上がる。
ほぉ。モンスターが魔法を使うのか。
そんな個体も居るんだな。「ガァァァ!」
土の弾が俺に向かって放たれた。
そこまでのスピードはない。 一つ一つ丁寧に切り裂いていく。前世でも魔法士の相手をする時はこうやって全てを切り伏せたものだ。
懐かしいな。 こういう奴は大体魔法を放った後は無防備なものだ。一気に距離を詰め肉薄する。
ストロング流剣術 抜剣術
「カタカタ(皇《すめらぎ》)」リーダーと思わしき個体は真っ二つになった。
それを見ていた他のブラウンウルフは逃げ出した。 散り散りに逃げていく。適わないと思ったんだろう。
最初からリーダー個体を狙えばよかったな。 次からはそうする事にしよう。そうだ。
ブラウンウルフを一体捌くことにした。 解体用のナイフ買わなかったんだよな。金がないからな。
剣で捌くしかないな。 出来ないわけじゃないからな。刃の部分を手で持ち、先っぽの方で皮と肉を剥がしていく。
内蔵は土に埋める。 後は放っておけば何かが食べるだろう。「ねぇ? なんでブラウンウルフの肉取ったの? えっ? もしかして食べる?」
コクリと頷くと、ミリアはブルブルッと震えた。
「モンスター食べるの?」
コクリと頷く。
だって、ミリア金ないから食料買ってないだろ? 仕方ないんだって。 念話繋がってないから分かんないだろうけど。手を握りしめて胸の前でギュッと握る。
ガッツポーズのような形で。「頑張れってこと?」
コクコクと頷く。
ウルフの肉は少し臭みがあるけど、美味かったはずだぞ?「はぁぁ。仕方ないよねぇ。お金なかったし。そもそも一週間じゃあ、保存食しか買えないしね」
コクコクと頷く。
分かってるじゃないか。 仕方がないことだ。持ってきたロープに肉を吊るして腰に下げる。
そして、またミリアをおぶる。「なんかごめんね? もう歩けない」
はははっ。
うちのお姫様はか弱いこったな。 そんなんでよくあの子の依頼を引き受けたもんだ。でも、誰もあの子には手を差し伸べようとしていなかった。
そんな中、迷わず手を差し伸べたミリアを、俺は尊敬する。この子のテイムモンスターで良かったなと、そう思うほどに。
俺はミリアがしたいと思うことを手伝うことにする。手伝う?
違うな。 一緒に歩んでいくんだ。ミリアがこれから歩く道が茨の道であるなら、俺はその茨を根こそぎ薙ぎ払ってみせる。
俺達は最強のコンビだと証明してみせるさ。
アーノルド家の人達はぐっすり寝れたようでよかった。 見張りは俺が引き受けたのだ。馬車に乗せてもらうのだから、それくらいしなければ。「それでは、出発しますぞ?」「はーい!」 元気に返事をしたのはミリアで、俺はその横に座らせてもらっている。なんども言うが、この体は疲労が無いからいい。 魔力は動かなきゃ回復するからな。 馬車は順調に進んでいた。「ミリアは冒険者としては長いんですの?」「うーん。そうねぇ。長いといえば長いかなぁ。一年は経ってるけど、何にもテイムできなくて、弱くて。それで、荷物持ちしてたんだ」「そうなのですか? なんと。あなたみたいな華奢な子が荷物なんて持てますの?」「はははっ。そうなんだよねぇ。大して持てなくて。だからお金稼げなくて……」 リンスさんがフンッと鼻息を荒くしている。 何かお気に召さなかったかな?「女性に荷物を持たせるなんて見下げた冒険者もいるのですわね! 何もしなくてもお金を上げればいいのですわ!?」 はははっ。 さすがお嬢様。 まぁ、ミリアに荷物持ちは無理だろうっていうのは同感だけどな。「そういう訳にも行かないよぉ。今だって、ナイルがいないと何も出来ないし」 でも、俺の事をテイムしたのはミリアだから。ミリアがしてるのと変わらないさ。俺は逆についてってるだけって事だからな。「ふふふっ。たしかに、そうね? しっかりとついてきなさい?」 ははぁ。お嬢様。「ナイルさんはミリアの侍女みたいなものなんですの?」 俺がお辞儀をしたからそう思ったのか? まぁ、でも侍女と変わんないよな? 料理作ったりもしてるし。「んー。侍女ではないかなぁ。なんていうのかなぁ。パートナーかな?」「なっ!? それは、婚姻関係にある方をそういうんではなくて!?」「そうなの? じゃあ、相棒?」「それなら、分かりますわ」 なんだか難しいお嬢様だな
話しているうちに日が沈んでしまったので、野宿をする事となった。そこで疑問に思ったのだが、お嬢様って野宿するのか? 御者の人とお嬢様の後ろに控えているお付の女性もいるし。どうすんだろ? 「今日はこの近辺で野営になりますけど、皆さんはどうされるんですか?」「はっ! 私共もテントを設営しまして、野営をさせていただきます!」 それに答えたのは御者の人で、テントを張るらしい。それならもう少し木々がある方に行こう。 ミリア、こっちに案内してくれ。「あっ、こちらへどうぞぉ」 ミリアが俺の後を付いてきて案内してくれる。 いい草むらと気の感じのところを見つけた。 ここにしよう。「今日は、ここで野営にしましょう! ここでなら、少し大きなテントを張っても問題ないようです!」「先程から不思議に思っていたのですが、スケルトンと意思疎通が出来ているのですか?」「はい! 普通に念話で話してます!」「はぁ。凄いですなぁ」 御者に感心されてしまった。 野営するところを少し綺麗にして布を敷いたり丸太に座ったりしながら少し落ち着いた頃。「あっ。申し遅れました。私共はアーノルド家の者でして、わたくしは執事をしております。ダンテと申します。こちらはアーノルド家、当主代理のリンス・アーノルド様で御座います」 さっきまで御者だと思ってた人は執事さんだったんだな。身の回りの世話もしながら馬車の手綱も握って大変だな。「ご紹介に預かりました。リンス・アーノルドですわ。この度は助けて頂きまして、誠に感謝致しますわ。王都に戻ったらしっかりの謝礼をするようにお父様にお願いしますわ」「助けることが出来て良かったです! 私はミリアっていいます! ちょうど荷物も載せれましたし助かります! 逆に感謝したいくらいです! ねぇ、ナイル?」 あぁ。そうだな。 本当に丁度よかったわ。「ナイルと言いますのね。なんと言ってますの?」「丁度よかったって言ってます」「本
この日も街道をミリアと念話をしながら歩いていたのだが、喧騒は急にやってきた。ガタガタガタッガタッガタガタッ 馬車の車の音が後ろから迫ってきていた。「何あれ?」 ミリアも俺も疑問に思ってみていると、上空から炎弾が飛んできていた。 あれに追われてるのか!? 厄介な!「あれって……ワイバーン!?」 小さい版のドラゴンである。細かく言うと翼の形とか顔の形とか違うんだが、まぁ、だいたい一緒。 Aランクのモンスターだ。 馬車の前に出るように陣取る。「助太刀します!」 ミリアがそう宣言すると馬車の御者が口を開いた。「すまない! 護衛を付けていたんだが、やられてしまったのだ! あれはAランクです! 無理をなさらないで一緒に逃げましょう!?」「大丈夫です。私のナイルは、守るものがいた方が強いのです!」 まぁ、そうなんだけど。『四面楚歌《しめんそか》を発動します』 世界の声が聞こえた。 俺の体が赤い炎で包まれる。「なんですか!? あれは!?」「ふふぅん。見ててください! ナイルは強いですよ!」 上空にいるワイバーンと睨み合う。 今の状態ならあそこまで跳べると思う。「グゲェェェ!」 ワイバーンは急降下して突進してきた。 真正面からやってやろう。 タイミングを見計らう。 勝負は一瞬だ。 ストロング流剣術 剛剣術 「カタタ(紫電《しでん》)」 状態を前に倒して踏み込んだ、その一瞬でワイバーンは横に真っ二つに。そのまま墜落して土埃を上げた。 剣を確認する。 うーん。大丈夫そうだな。 ワイバーン斬っても刃こぼれなしか。 優秀な剣だ。これならかなりやれそうだな。 「なっ!? 何者ですか!? あなた達!? まさか、有名なS級冒険者とかですかな!?」「あ
空が薄暗くなってきた頃。 街道を少し外れたところで視界を遮れる草むらのあるところを探す。「あそこがいいんじゃない?」 草が生い茂っているゾーンがあった。 視界を遮れる場所だ。 火を起こしたあとがある。 ここならいいかもな。「よーっしっ! 薪になる枝を探そう」 待て待て。一人で行くな。「あっ。ごめーん!」 なんか……このやり取りいい。「ん?」 いや、なんでもない。行こう。「うん!」 枝をその辺から集めてきて石も探してきた。 石でコンロを作り出して枝をピラミッド型に積み上げる。 火をどうつけるかだが、それは魔法が出来れば一番いいんだが。そうもいかない。魔道具のライターに近いものを使ってつける。 魔法陣が描いてあり魔力を流す事で炎が出てくるのだ。便利なんだよなぁ。 パチパチと枝が音を鳴らしながら俺たちを照らしてくれている。ほのかに温かく、ユラユラ揺れる様は俺達の心を癒してくれる。 ボーッとしばらく眺めていると、ハッと気付いた。飯作んないと。 買ってきていたフライパンを作ったコンロの上に乗せる。 熱がフライパンにつたわり、すぐに熱くなった。肉を投入する。ジュージューと香ばしい香りを漂わせながら美味しそうなキツネ色になっていく。「わぁ。いい匂い!」 調味料もなかったのだが、今回は金があったから買ってきたのだ。塩をかける。それだけでどれほど美味しいことか。 はい。どうぞ。 フライパンから皿に肉をのせる。 ミリアの口からはジュルリと言う音が聞こえる。 行儀が悪いよ? ミリア?「エヘヘッ。ごめーん!」 まぁ。許すけど。 ミリアは肉にかぶりついた。 買ってきた肉だからホーンラビットの肉かな? 引き締まってて美味しいらしい。 美味しそうだなぁとは思うのだが、不
出立の準備を終えた俺達はギルドにその事を報告しに来ていた。「アンさん、私達この街を出て王都を目指すことにしました! 竜の鱗を加工できる職人を探すつもりです!」「そうなのねぇ。寂しくなるわぁ。あっ! ギルドカード貸してくれる? この前、盗賊の懸賞金払うの忘れてたのよ。ごめんね?」「えっ? 懸賞金?」「そう。賞金首だったみたいよ? 倒した盗賊。凄いわねぇ」 えっ? アイツら賞金首だったの? あんなに呆気なかったのにな。「すみません。知らなかったです」「いいのよ。こっちの落ち度だから。盗賊団に金貨五十枚だったのよ。ちょっとまっててね」 そういうとアンさんは奥に消えていった。 五十枚? 大金だな! やったな! ミリア!「これで……食事は外食しても大丈夫だし。遠出前に食料を買っておこう。一々狩った肉を食べなくてもいいなんて……幸せ」 ミリアの目から小さな雫が頬をつたった。 そんなに嬉しいか。 肉もいいじゃないか。 俺食えないけど。骨だから。「お待たせ。はい! 金貨五十枚ねぇ」「ありがとうございます! はい。ナイル」 そのまま俺に袋を渡してくる。 おられが持っていた方が安全だということだろうが。良いのかそれで?「じゃあ、私たちは行きます!」「うん! 気が向いたら戻ってきてよ?」「……はい。気が向いたら」 ミリアは曖昧に微笑むとカウンターに背を向けて出口に向かった。「おい! テイマー」 ガッチリとした冒険者に行く手を阻まれる。 はぁ。まだ俺達に手を出そうって言う奴がいるのか。学習能力がないこったなぁ。 剣を構えようと────「ありがとう! この街を救ってくれて! そっちのスケルトンも!」「「「ありがとう!」」」 前にいた冒険者達皆が頭を下げた。 これまでの分の謝
扉を開けた先には、大勢の人とステージには宝石の数々が並んでいた。 ステージの宝石に対して客が値段を提示している。そうして、値段がドンドンとつり上がっていく。 客席側からはステージを通らない限り、裏へは行けない構造みたいだ。 どうする?「もう、あそこに乗り込んじゃおっか?」 ボソッとミリアがそう言った。 確かにな。外の騒ぎにも気づいていないようだし、騒ぎを起こしても問題ないだろう。 ミリアは、背中にしがみつくんだ。「うん!」 背中にしがみつくミリア。 骨はこういう時に便利だ。 骨に足をかけることができる。 客席に足を踏み込む。 ローブを着ているから誰が来たかは分からないだろう。そのまま客の席を駆け抜ける。そして、ステージに跳躍した。「なっ!? なんだ貴様!?」「ドラゴンの子供はどこ!?」「何故それを!?」 ステージにいた男に剣を突きつける。 少しくい込ませる。「ぐっ!」「どこ?」「ステージ脇から入った通路の一番奥の部屋だ」 そのまま切り伏せるとステージ脇に駆ける。 通路が続いている。「何者だ!? 敵襲!」 各部屋からゾロゾロと武装した人が出てきた。 これは邪魔だな。 片っ端から切り伏せる。 剣術を出すまでもない。 コイツらはただのゴロツキだ。 あの傷の奴は何処だ? 次に会ったらたたっ斬ってやるのに。 そう思っている間に奥の部屋に着いた。 ドアを斬り破る。「なん────」 そこに係として居たんだろう奴を切り倒し。 置いてあった布を被っていたものを取り、中を確認する。 赤みがかった鱗の小さなドラゴンがいた。「おぉー。このドラゴンで間違いないね」 あぁ。脱出だ。 カゴを持って出る







