LOGIN「ふあ~ぁぁ。よく寝たぁ」
伸びをして起きたミリアは色々とはだけているが、見ないように顔を明後日の方向に向ける。
「ナイルも寝てたの?」
コクリと頷く。
「スケルトンも寝たりするんだねぇ。いがぁーい! 今日は依頼を受けるぞぉ!」
意気込んで準備を始めた。
襲撃があったことには気づいてないみたいだな。 よかった。宿を出る時に「こんな染みあったかな?」なんて話していたが、バレなかったようだ。
早速ギルドに行くと静まり返っていた。
なんでも、奴らが捕まって罰する為に調査をしていたら色んな悪事が出てきたとかなんとか。もう冒険者には復帰できないだろうとのこと。
良かった良かった。 もう会うこともないだろう。「依頼を見よう!」
初めて依頼を受けるミリアは何がいいかなぁとルンルンで選んでいる。
「お願いします! お母さんを助けて!」
「報酬がこれでは依頼を出せないんです。ごめんなさい。最低でも銅貨はないと……」
なんだか少女がお困りのようだ。
けど、依頼に出すには報酬が足りないと。 まぁ、冒険者も生活がある。 だれもうけな──────「どうしたの? 私が受けるわ!」
「ミリアさん!?」
ギルドの受付嬢は驚きを隠せない。
そりゃそうだ。依頼受けるの初めてだもんな。「アンさん。私が依頼を受けます!」
あの受付嬢、アンっていう名前だったんだ。
ってそうじゃない。 なんだって? 依頼を受ける? なんの依頼かもわかんないのに!?「お姉ちゃん、お母さんを助けてくれるの?」
「えぇ。まず、何からお母さんを助ければいいのかな?」
「あのね、段々石になっちゃう病気なの」
なるほど。
石化病か。 そうなると……。「お医者さんには見てもらった?」
「うん。でも、治らないって言われたの」
「どういう事?」
「せきかびょう? は、治すにはアンガー山の山頂に生えてるミストン花が必要なんだって。でも、山頂にはグリフォンがいて……それを取るにはお金が沢山必要なんだって……」
そういう事か。
前世の知識から行くと、グリフォンは恐らくAランク。 Aランクに頼んでその花をとるとなると、金貨は必要だな。かなり割に合わないぞ?
やめた方が──────「大丈夫! 私のテイムモンスターは最強なんだよ? 心配しないで!」
「ホント? お姉ちゃん、助けてくれるの?」
「えぇ。もちろんよ! 任せなさい!」
胸を張って自信満々に言い放つミリア。
「ミリアさん、石化病だと発症から、もっても一週間ですよ? 進行状況によっては五日もつかどうか」
アンが冷静に今の状況をミリアに説明している。
それをわかっていない訳では無いんだろう。 でも、微塵も不安な顔は見せない。「うん。急がないとね! あなたは、家でお母さんの看病をしてあげて? 元気づけてあげるんだよ!?」
「うん!」
「家はどこ? 薬が出来たらすぐに持っていくわ!」
「ここを出て左手のパン屋さんの隣!」
「わかったわ。じゃあ、準備して行ってくるわ」
「うん! お姉ちゃん、お願いします!」
「任せなさい!」
胸をトンッと叩いてニコニコしている。
不安は微塵もないのだろうか。 凄いな。ミリア。子供がギルドを出ていくと。
力が抜けたようにフニャフニャと床に膝を着いた。「ねぇ。ナイル、グリフォンに勝てる? あんなこと言っちゃったよぉ。どうしよう」
そうなっちゃうのか。
カッコイイなと思ったのに。 自信持てよ。ミリアの肩を叩き、サムズアップする。
「大丈夫ってこと!? ホントに!?」
コクリと頷く。
前世では俺は敵無しだった。 グリフォンも討伐したことはあるし、どうにかなる……と思う。まぁ、後はこの体と剣がどこまでもつかなんだよなぁ。
昨日の夜の身体強化が使えればいける気がする。後はそれまでになるべくスキルで体を頑丈にすることだな。
この体のレベルを上げながらアンガー山を目指そう。「うぅぅぅ。ナイルありがとうぅぅ」
俺にすがりついてくる。
勢いで言っちゃうタイプなんだな。 頭を思わずなでなでしてしまった。「スケルトンには流石にグリフォンは荷が重いのでは?」
アンが心配そうに聞いてくる。
「うちのナイルは強いので大丈夫です! ご心配ありがとうございます!」
頭を下げるとギルドを出ていった。
後を追う。「まずは、回復薬を買おう。お金ないから一本しか買えないけど……ごめんね。ナイル……」
コクリと頷く。
別に無くてもいいんだけどな。
ダメージを食らう気は無い。 グリフォンがそんなに強かった覚えがないからなぁ。「あとは、魔力回復薬を買っておこう。ナイルって、魔力で動いてるんでしょ?」
コクリと頷いて感心する。
俺でさえわからなかったのに、ミリアは知ってたのか。 流石はテイマーだな。「だよねぇ。テイムできるようにモンスターの勉強は頑張ってたんだぁ!」
そういう事か。
俺はミリアを頼りにしてるよ。 だから、俺のことも頼ってくれていい。俺は、ミリアを最強のテイマーへと押し上げてやる。
共に駆け上がろう。 誰にもミリアは傷つけさせない。「よしっ! 準備はオッケー! アンガー山へ出発! 時間が無いからね!」
コクリと頷くと。
街を出てアンガー山へ向かうのであった。『では、次の勝負は的当てです!』 的当てか。 前前世でいえば銃のようなものを持って目標に当てるようなゲームを言うけど、この世界ではどんな勝負をするんたろうか?「はぁーい! 私的当てやった事ありませーん!」『では、説明致します。私が用意する的を射抜くだけでございます。射抜くのは魔法でです』「えぇー!? 魔法で?」 爺やは今度はお嬢様が有利そうな勝負にしたようだ。 爺やにはミリアの魔法の腕を知らないだろうが、トウカお嬢様の方が有利なのは俺達には分かりきっている。 何故なら────「私、魔法で狙ったりできないんですけど!?」 思い返してみると、今まででミリアはざっくりと雨をふらせてざっくりと電撃をくらわせる。そういう戦い方をしてきた。 狙いを定めて的に飛ばすなんて至難の業だろう。纏めて吹き飛ばすなら出来るかもしれないが。 繊細に的の中心を射抜くなんてそんな芸当到底ミリアにはできないだろう。『それは、この機会に魔力制御を出来るようにした方がいいですよ? どれ、少し一緒にやりましょうか?』「いいんですか?」 ミリアに魔力制御とはなんたるかを、爺やが教えてくれるらしい。「魔力を一箇所に集中して。そして球を作り、回すのです」 その言葉通りにミリアは水の球を作って浮かせた。だが、回すことまではできない。「うぅぅぅ。回せないですぅ」「集中すればできます。この水の中が渦をなすように意識してみてください」 ミリアは眉間に皺を寄せて口を歪めている。 本来、こういう細かいことは向かないタチだと思うのだが、一所懸命にやろうとする姿は可愛いものだ。「ぐぬぬぬぬ」 少しずつ、浮かせている水が渦を巻き始めた。 グルグルと水の球が回っている。「そうです! それを的に射出するのです!」「とりゃぁぁ!」 変な掛け声を上げながら水球を射出する。 射
『それでは、始め!』 ────ミシッ! 最初に聞こえていたのは両者の骨が軋む音。 ガッチリと組んだ手は二人の中央を陣取り、重さの拮抗した天秤のようにどちらにも傾かない。 両者は睨み合いながら笑っている。 その形相ははたから見たら恐ろしい程獰猛に。 そして、好戦的に見えた。『ははははっ! やるじゃない!? 人族の癖に力があるのね!?』「私だって、ナイルの力になる為に頑張ってるんだもん! こんな所で負けられないわ!」 ミリアがいつも俺の事を思ってレベルが上がる度にスキル構成に悩んでいたのは俺も見ていたよ。 相談されたら答えるようにはしようとしてたけど、一人で悩んで一人で決めている時は見守るって決めてたんだ。『私だって、自分がいいと思った人と結ばれたい! あんなゴツゴツのアーマーとなんか結婚したくない!』「じゃあ、しなければいいじゃない!?」『そんなに簡単な話じゃないのよぉぉぉ!』 魔力の出力を上げてきたトウカお嬢様。 少しテーブルに手を傾ける。 ミリアの顔が少し歪む。『お父様はスケルトンだけど、お母様はゾンビなのよ! どっちも細いのに! なんで私の婚約者だけあんなにゴツイのよ!?』 テーブルにまた少しミリアの手が近づく。 ミリアはここに来て初めて魔力を巡らせた。「だからって、私のナイルを奪わないでよ! そんなお嬢様の都合で私たちを引き裂くなんておかしいでしょぉぉぉがぁぁぁ」 また中央へと両者の手が戻り拮抗する。 両者の気迫からだろうか。 空気が重い。「私だって! ずっとテイマーとして底辺の生活をして来て! ナイルをテイムして! ナイルのお陰でようやく私は自由を手に入れたの! ナイルは私の王子様なんだからぁぁぁ!」 魔力の出力を上げたミリアが少しテーブルに手を押す。 骨なので顔には出ていないが、トウカお嬢様は今、愕然としている。 それは魔族にとって使役されること程、屈辱を感じる
ミリアを指差して決闘だと宣言したお嬢様スケルトンだったが。なにで決闘するんだ?『トウカ様! 決闘なんて何事でございますか!? お止め下さい!』『爺や! 私の言うことに文句があるんですの!? フンッ! ナイル様を手に入れるためですわ!』『そのように婚約者を力ずくで手に入れていったい何になるんです? この方達を引き離してまでしてやる事ですか?』 その諭すような言葉で、爺やはなんとかお嬢様を落ち着かせようとしている。 お嬢様は下を俯いて口ごもってしまった。 この貴族の人達は貴族とはなんたるか。という考えを自分たちで持っている人達なのだろうな。そう感じた。「その決闘受けて立つわ!」 腰に手を当てて胸を張りトウカを指さしてそう宣言した。 でたよ。せっかく話が纏まりかけてたのにややこしい話になるじゃないか。『ミリア?』「いいからナイルは黙って! これはそこのお嬢様と私の間の話よ! そうでしょ!? そこの爺やも黙ってて!」 ミリアは爺やと呼ばれた執事までもそんな扱いをしてしまう。 爺やは表情は分からないがなんだか凄く嬉しそうな優しい雰囲気で下がって後ろに控えた。 任せてくれるってことだろうか。 ミリアはこういう時に完全に自分のペースに人を巻き込んでいく人だ。 それは良い時と悪い時があると思う。 今回は相手が多分子供のスケルトン。 だから、こういう対応の方がもしかしたらお嬢様は嬉しいのかもしれない。『言ったわね!? 逃げないでよ!?』「逃げないわ! なんだってやってやるわよ!」『貧弱な人族には力比べで勝負よ!』 人族の人達は筋肉をつけないと重いものを持ったり、力を発揮したりは出来ないだろう。 だが、俺たちのような魔力で運用されている生き物は違う。 魔力の質、量で決まる。 勿論、人族も身体強化をすれば力を発揮出来る訳だが。 俺達のような魔族と呼ばれる者の身体は魔力伝導率が全然違うのだ。
「おい! 骨の分際で俺様に当たってんじゃねぇよ!?」 えっ? 俺? 声のした方を焦って向くと、ドレスアップしたスケルトンがゴツイ馬に怒鳴られていた。 なんか絵がシュールだな。『なによ! あんたがぶつかって来たんでしょ!?』「あぁ!? そのほっそい骨砕いてやろうかぁ!?」 拳を振りかぶっている。 こりゃいかん。 咄嗟に縮地を使い、ドレスアップしたスケルトンの前に出る。 振り下ろされた拳に手を添えて受け流す。「なんだてめぇ!?」『通りすがりのものです。往来の場でやめた方がいいのでは?』 馬さんは周りを見ると野次馬に「馬の恥だ」とかヤジられて顔を顰めると振り返って歩いていった。『大丈夫でしたか?』『か……』 何したんだ? か?『カッコイイわね! あなた! 私の婚約者になりなさい!』 どういう事?『お嬢様! 何をなされているんですか!? 勝手に街に出るなんて危険です!』 やって来たのはカチッとした執事風のスケルトン。『爺や、この人を婚約者にします!』 爺なのか? このスケルトン? 年齢の概念あるの?『何を言ってるんですか! お嬢様にはリビングアーマー族の許嫁が居るではありませんか!』『あんなゴツイ奴嫌よ!』 なんか、他種族国家トイロは色々と複雑なようだ。『俺はこのミリアと旅の途中でして、この国にずっと居るか分からないので』『あぁー!? 人族じゃない! そんな弱っちいやつと一緒に居ると不幸になるわよ!?』 いやー。弱いから不幸になるとは限らないんじゃ。 そんな事を思っていると横からずいっと出てきたミリア。目がつり上がって可愛い顔が台無しである。「聞き捨てならないわね! ナイルは私のパートナーよ!」『ナイル様っていうのね!? 私と結婚しましょう!?』 俺に詰め寄ってくるお嬢様。
俺達はアントの巣から出た先で街のようなものを見つけたのでそこに向かって歩いていたのだが、異変に気づいた。 門番が虎とリビングアーマーなのだ。 モンスターがなぜ?「お前達どこから来た?」 二足歩行の虎が喋った。『えーっと、この先の荒野地帯の向こうです』「ほぉ? そいつは珍しいあそこを超えてくるとは相当の手練だな。んっ? あんた人族か?」 ローブのフードを外して顔を見せる。『いえ、俺はスケルトンです。こっちは人族のミリア』「はぁぁ。人族とは珍しい。人族は弱いから気をつけるんだぞ? あんたはスケルトン族だな。あれ? あんたローブの中は何か着てるか?」 ん? 骨だけど、なにか着る必要があるのか?『いや、そのままだが?』「おいおい。この国の常識は知ってるだろう? 全種族服は着る決まりなんだから、守ってくれよ?」 そんな話になってるんだな。この国。 っていうかモンスターも生活する街なの?『あ、あぁ。そうだったな。着るのがなくてな。街で買うよ』「そうしてくれ。ちゃんと伝えたからな? 言っておかないと、後で貴族たちにドヤされるからな」 貴族もいるんだ。 街に入るとそれはそれは仮装パーティーかと思うような光景であった。 犬、猫、馬、虎、ライオン、熊。 動物が居るかと思ったら、スケルトン、ゾンビ、リッチ、リビングアーマー、ゴブリン、オーガ等いるわいるわモンスター達。 なにこの街? キョロキョロ見てしまうが、街の人達も人族が珍しいようでミリアをチラチラと見ている。「私ってそんなに珍しいのかなぁ?」『そりゃ、この光景の中では目立つだろうな』 街をフラフラと歩いていると服屋を見つけた。 服を買っておかないとな。 中に入るとそこに居たのは熊の店員さん。「あらあら。人族は珍しいわね。あなたはスケルトン族ね、何をお探しで?」『あー。動きやすい服
こちらを見つめる赤い光。『こいつはアーミーアントだな』「うわぁ。ちょっと嫌いかも」『俺もだな』 カチカチと口のハサミを鳴らして威嚇しているようだ。 せっかくの休憩を邪魔してくれたな。 その時は何も思わずにアーミーアントの頭を落としたのであった。 後から後悔することになろうとはその時は思わなかった。 その日はゆっくりと休んだ。 次の日、目を覚ますと何やら周りがざわめいている気がする。「なんか、変な感じだねぇ?」 ミリアも何か異変を感じ取ったようだ。 なんだから大きなものが蠢いているような。『ミリア。一応戦える準備を』「あぁふっ。はぁい」 欠伸をしながら準備をするミリア。 俺も警戒しながらだが、休めたから魔力は回復したしな。 戦いになっても問題は無い。 少し離れた岩場から黒い影が現れたと思ったら次々とアーミーアントが出てきた。こちらに向かってくる。『そういう事か。仲間がやられたから復讐に来たのか?』「うわぁ。数が多いね」 ミリアがそういう感想を抱くのも無理はない。この光景は胃からせり上がってくるものがあり、ちょっと気分が悪い。 あっ、胃は無かったわ。『はぁ。朝の運動といきますか』「おぉー!」 そう意気込んで戦い始めたのは良かったのだが、次々と迫り来るアーミーアントに精神的にも削られ始めた頃。「ねぇ。もう見たくない!」『同感だ。もう巣を攻めよう』 アイツらが湧いてでるところを突き止める。 その為にはこの大群を始末しないとなぁ。 なんかないかなぁ一気に吹き飛ばす方法。 魔力でって言ったってこの数は限界がすぐに来てしまう。何せ見渡す限りアーミーアントなのだ。どこから出てきているのかも分からない。 なんか持ってたような。 なんだっけ。 おっきい何かが。







