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第2話

Penulis: ナナ
「事実を述べただけです」

「真奈美、自分の立場をわきまえたらどうだ?」

隼人が立ち上がり、私の前に歩み寄った。

頭一つ分は背の高い彼に見下ろされ、自然と圧迫感が押し寄せてきた。

「お前はもうただのモノだ。モノに洗浄方法を選ぶ資格などない」

隼人は執事に視線を移した。「紗奈の言う通りにしろ。綺麗になるまで、何度でも洗え」

高圧洗浄室では、洗浄機から噴射されるのはただの水ではなかった。ツンと鼻を突くような酸の匂いがする化学薬品も混ざっているのだった。

ジュッ――

液体が、背中にわずかに残っていた生身の肌に触れた瞬間、焼き付くような激痛が脳天を貫いた。

でも、叫び声はあげられない。節電のために、発声機能は自動的にオフになったのだった。

汚水がたまった床にひざまずき、私はただ見ていた。節約のために買った安物のコーティングが少しずつ剥がれ、醜い金属の地肌がむき出しになっていくのを。

30分後、ようやく洗浄が終わったあと、私は、まるで壊れたおもちゃのようにリビングに放り出された。

そこで紗奈は隼人の膝の上でフルーツを食べていた。私の無様な姿を見て、彼女は口元を隠して甘えた声で笑うのだった。

「隼人、見て。彼女ってまるで禿げた汚い野良犬みたいじゃない?」

隼人は私を一瞥した。まだ血が滲む背中に一瞬だけ視線を落としたが、すぐに逸らした。

「確かに、見苦しいな」

そこで、紗奈はマジックペンを手に取ると、私の前に立った。「動かないでね。これからあなたの体を参考にして線を引くから」

そう言って、彼女は冷たいペン先を、私の肌をカリカリと引っ掻くように滑らせ、私の鎖骨、あばら、骨盤に、黒い点線を引いていった。

そして胸のあたりで、紗奈はふと手を止めると、その場所をぐいっと指で突いた。

「ここ、膨らみすぎ。デザイン的に美しくないわ」紗奈は振り返って隼人に甘えた声を出す。「隼人、ここ、平らに削れないかしら?どうせ彼女はアンドロイドなんだから、こんなもの必要ないでしょ?」

それを言われて、隼人は、その場所へと視線を向けた。

そこは、私が女性であることの最後の証だった。

彼は2秒ほど沈黙した後、紫煙の輪をゆっくりと吐き出した。「好きにしろ。殺しさえしなければ、どう改造しても構わない」

こうして私は物置部屋に押し込められた。そこは充電するためのコンセントすらない部屋だった。

幸い、予備のバッテリーを内蔵していた。ひどく劣化しているけれど、最低限の待機モードならあと2日はもつだろう。

深夜、物置部屋のドアが開けられた。

隼人が入り口に立っていた。逆光で、その表情は窺えない。

「出てこい」

関節を動かすと、きしむような耳障りな音がした。私は彼の後について、あの見慣れた書斎へと入った。

書斎の飾り棚には、高価なコレクションがずらりと並んでいた。

骨董の花瓶、絶版の名画、珍しい鉱石……そして、一番目立つ場所に、ホルマリンで満たされたガラス瓶が置かれていた。

その中には、一組の手が浮かんでいた。

細くて、白くて、指の節々が美しい、人の手だった。

それは、私の手だった。

7年前、私はまだJ市で一番のピアニストだった。

隼人は、私の手を「神様が作った芸術品だ」と言ってくれた。

その後、隼人が破産して刑務所に入ると聞いた。彼の借金を代わりに返すため、私はあの身体改造の契約書にサインしたんだ。

改造の第一段階は、この両手を切り落とすことだった。そして強度の高い機械の腕に付け替えられ、闇の闘技場に出場させられた。

でも、そのことを隼人に伝えることはできなかった。きっと、今さら彼も知りたくないだろうけど。

そう思いながら、私はその瓶をじっと見つめた。そして機械の目が、自動で焦点を合わせたのだった。

「まだこの手のことを考えているのか?」隼人は飾り棚の前まで来ると、指で瓶をコン、と叩いた。「真奈美、今の鉄の塊みたいな手じゃ、コップ一つまともに持てないだろう。お前にこの手がふさわしいと思うか?」

「宮崎さんのおっしゃる通りです」私はうつむき、錆びついた機械の指を見た。「今の私には、どぶにつかるのがお似合いでしょう」

「お前……」隼人は、私のそっけない態度にカッとなったようだった。

彼は乱暴にその瓶を掴むと、机に叩きつけた。

液体が揺れ、その手はまるでホルマリンの中で私に助けを求めているようだった。

「真奈美、お前は昔、もっとプライドの高い女じゃなかったか?お前を試そうとして、破産したフリをしただけなのに、お前は俺をあっさり裏切った。それなのに、今のお前は何だ、その廃れた姿は」

そう言いながら、隼人は私に詰め寄り、その体からはふわりとアルコールの匂いがした。

「俺にお願いをしてみろよ」

彼は私の目を見つめた。

「お前がお願いをすれば、この手を返してやっても構わないがな」
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