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第4章

last update publish date: 2026-09-13 08:12:52

社長室に重い沈黙が落ちた。

ジュリアンは、まさかここで私に会うとは思ってもいなかったかのように、私を見つめていた。

眉間には深い皺が寄り、顔には戸惑いがはっきりと浮かんでいる。

「マリー・ローズ……ここで何をしている?」

私は冷静さを保つために、深く息を吸った。

今は感情を抑えられなくなるような時でも、場所でもない。

「面接を受けに来たの」

ジュリアンは乾いた笑いを漏らした。

「面接? Terry Groupで?」

私はまっすぐ彼の目を見た。

「そうよ」

彼は首を横に振った。

そして、唇に嘲るような笑みを浮かべた。

「まさか、今度は俺を追いかけてきたんじゃないだろうな?」

その言葉は胸を突き刺した。

それでも、私は彼にまだ私を傷つける力があると悟られたくなかった。

私は背筋を伸ばした。

「勝手に勘違いしないで。あなたがここで働いていることすら知らなかったわ」

ジュリアンが何か言い返そうとした、そのとき。

クラークが静かにペンを机の上へ置いた。

金属が木製の机に触れる、わずかな音。

それだけで、私たちの注意が彼へ向いた。

「ジュリアン」

その声は穏やかだった。

けれど、はっきりとした威厳があった。

ジュリアンはすぐにクラークへ振り向いた。

「はい、クラーク叔父さん」

クラークは数秒間、甥を見つめてから口を開いた。

「面接を邪魔しているぞ」

ジュリアンはわずかに目を伏せた。

「……知りませんでした」

「今は知ったな。なら、また後で来ればいい」

丁寧な口調だった。

しかし、そこに反論の余地はまったくなかった。

ジュリアンはしばらく動かなかった。

私と叔父を交互に見ながら、今何が起きているのか理解しようとしているようだった。

きっと、頭の中にはいくつもの疑問が浮かんでいるのだろう。

やがて、彼は顎を引き締めた。

「分かった」

彼は扉へ向かって数歩歩いた。

しかし、私の前まで来たところで足を止めた。

「マリー・ローズ。俺たちは話をする必要がある」

私は腕を組んだ。

「私にはあなたに話すことなんて何もないわ」

彼の表情が険しくなった。

一瞬、彼が無理にでも話そうとするのではないかと思った。

けれど、彼は最後に私を一瞥しただけだった。

そして社長室を出て、静かに扉を閉めた。

再び部屋に静寂が戻った。

私は少し気まずくなり、視線を落とした。

「すみません……。こんなことになるとは思っていませんでした」

クラークはすぐには答えなかった。

机の上で指を組んだまま、静かに座っている。

やがて、落ち着いた声で尋ねた。

「君は私の甥を知っているのか?」

私はゆっくりと顔を上げた。

もう隠す意味はなかった。

「はい」

「長い付き合いなのか?」

私はさりげなく唇を舌で湿らせた。

「三年間、付き合っていました」

クラークの表情は変わらなかった。

驚きもない。

判断するような視線もない。

ただ静かにうなずいた。

「そうか」

それ以上、何も聞こうとはしなかった。

その反応に私は少し驚いた。

普通なら、こんな話を聞けば、何十個もの質問をするだろう。

でも、彼は違った。

ただ私の履歴書を再び手に取った。

「君の推薦状は素晴らしい」

私は目を瞬いた。

今の出来事を考えれば、面接を中止されてもおかしくないと思っていた。

それなのに、彼は何事もなかったかのように話を続けた。

「二年間、事務アシスタントとして働いていたんだな」

「はい」

「この仕事のどこに魅力を感じる?」

私は数秒考えてから答えた。

「物事をきちんと整理するのが好きなんです。責任感もありますし、新しいことを覚えるのも早いです。それに、プレッシャーのかかる状況でも、常に自分の力を最大限に発揮するよう努力しています」

彼はしばらく私を見つめた。

「ここでは、プレッシャーが日常だ」

私はわずかに笑った。

「怖くありません」

ほんの一瞬。

彼の表情が少しだけ柔らかくなったように見えた。

ほんのわずかな変化だった。

口元が少し動いただけ。

それでも、それだけで彼の冷たい印象が少し和らいだ。

彼はゆっくりと私の履歴書を閉じた。

「いいだろう」

心臓が速くなり始めた。

クラークが立ち上がった。

その瞬間、私はなぜ皆が彼をあれほど尊敬しているのか理解した。

そこに立っているだけで、圧倒的な威厳があった。

声を荒らげる必要などない。

彼がいるだけで、周囲には自然と静けさが生まれる。

彼はデスクを回り、街を一望できる大きな窓の前で足を止めた。

両手をポケットに入れ、数秒間、眼下のビル群を眺めていた。

そして、私へ振り返った。

「ローズさん」

私も立ち上がった。

「はい」

彼はまっすぐ私の目を見つめた。

「この仕事は君に任せる」

私はその場で固まった。

聞き間違えたのだと思った。

「……え?」

「採用だ」

私は驚きを隠せなかった。

「本当に……本気ですか?」

彼の表情は変わらない。

「私の会社のことになると、冗談は言わない」

胸の奥から、大きな安堵が込み上げてきた。

笑いたかった。

泣きたかった。

もしかしたら、笑いながら泣いてしまいそうだった。

「ありがとうございます……本当にありがとうございます、テリーさん」

彼はわずかに頭を下げた。

「オリビアが君に新しい仕事について説明する。月曜日の朝八時から勤務開始だ」

「時間より早く来ます」

「そうすると思っている」

私はバッグを手に取った。

扉の前まで来たところで、最後に一度振り返った。

「この機会をくださって、本当にありがとうございます」

クラークが顔を上げた。

「君に機会を与えたわけじゃない」

私は意味が分からず、彼を見つめた。

彼はいつもの落ち着いた声で続けた。

「君は自分の能力でこの仕事を手に入れた。それだけだ」

その言葉は、認めたくないほど私の心に響いた。

私は心からの笑顔を向けた。

「期待を裏切りません」

そして、私は社長室を出た。

扉が閉まった直後、オリビアが興味深そうに近づいてきた。

「それで……どうだった?」

私はまだ信じられない気持ちのまま、小さく笑った。

「たぶん……採用されたみたい」

オリビアの顔がぱっと明るくなった。

「おめでとう! Terry Groupへようこそ」

彼女は嬉しそうに私の手を握った。

私は笑顔でお礼を言った。

私たちが廊下を歩き始めた、そのときだった。

誰かに見られているような気配を感じた。

私はゆっくりと振り返った。

数メートル先。

壁にもたれ、腕を胸の前で組んだジュリアンが立っていた。

まだ帰っていなかった。

彼は動くことなく、私をじっと見つめている。

暗い瞳は、一瞬たりとも私から離れなかった。

どうやら、帰るつもりはないらしい。

そして、なぜか私は分かっていた。

これ以上、彼がずっと求めていた話し合いから逃げることはできない。

もう、避けることはできないのだ。

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