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5.陛下⋯⋯泣いても良いのですよ。

مؤلف: 専業プウタ
last update تاريخ النشر: 2025-05-10 19:01:18

 ふと、意識が戻ると背中が柔らかさを感じた。

 誰かが、私をベッドの上に運んでくれたようだ。

 体がだるい。

 目が開けられない。

 おそらくレイ・サンダース卿の投げたナイフにはマルネスの木の樹液が塗ってある。

 体中に痺れて、しまいには気管閉塞までおき呼吸が停止する毒だ。

 ナイフを受けたのが私でよかった。

 私はマルテーキーズ王国で使われる毒には耐性がある。

 母に言われて幼い頃から少しずつ摂取して、免疫をつけていたのだ。

 おそらくナイフを受けたのが、アレキサンダー皇帝だったら10分足らずで身体中に毒が回り亡くなっていただろう。

 私は苦しみながら、少しずつ毒を飲んで耐性をつけてきた幼い日々を思い出していた。

 意識が遠のいていき、思考が奪われていくのを感じる。

 きっと、次に目が覚めた時には毒に私は打ち勝っている。

 私はそう信じて再び意識を手放した。

 「皇妃⋯⋯目を開けろ⋯⋯」

 遠くにアレキサンダー皇帝の声が聞こえる気がする。

(よかった、生きてる⋯⋯私は毒に勝てたんだ)

 「アレキサンダー皇帝陛下⋯⋯」

 目を開けると、目の前に心配そうに私を見つめる陛下の顔があった。

「1週間も目覚めなかったんだぞ」

 アレキサンダー皇帝が、まるで私を愛おしい女のように抱きしめてくれる。

 彼の温もりと爽やかな香りが私に安心感をもたらす。

「私の連れてきた護衛騎士を、マルキテーズ王国に返してください。バラルデール帝国には立派な騎士団がありそうだったので、彼は必要なさそうです」

 レイ・サンダース卿のプライベートは知らないが、彼は王家に絶対服従の人だ。

 私から指名されて帝国までついてきたけれど、実は彼を待つ方がマルキテーズ王国にいるかもしれない。

 彼は兄の命令に従っただけだ。

「あの護衛騎士はすでに処刑したよ。今回の暗殺未遂の実行犯だ」

 おそらく私に刺さったナイフがマルテキーズ王国で作らたものだとわかったのだろう。

 そのせいで、暗殺未遂がサンダース卿の仕業だと判明してしまったのだ。

 私のせいで兄のお気に入りの彼を死に追いやってしまった。

「陛下は、ずっと私の側にいてくれたんですか?」

「いや、今朝、母上が亡くなって⋯⋯なんとなく、君も死ぬのではないかと思い覗きにきただけだ」

 私は自分が5年前、母エミリアーナを失った時のことを思い出した。

 王女の私が人前で泣くわけにもいかず、悲しむ間も無く葬儀の準備もしなければいけなくて苦しかった。

「陛下⋯⋯泣いても良いのですよ。国葬の準備は私がします。今日はもう休んでください」

 私はどうにか、気だるい体を起こし彼を抱きしめた。

 彼が私の背中にそっと手を回してくる。

 彼のお母様の身に何があったのだろう。

 バラルデール帝国において、私の記憶にある限り彼の母タルシア皇后は表舞台に出てこなかった。

 もしかしたら、元々お体が弱い方だったのかもしれない。

「いや、休む訳にはいかない。今晩は弟カイザーの誕生日の舞踏会がある。母上の死は、明日以降に頃合いを見計らって公にするつもりだ」

 陛下の弟君であるカイザー・バラルデール皇子は、まだ幼かったはずだ。

 陛下は、まだ子供である弟の誕生日は笑って迎えてあげようと考えているのだろう。

 それにしても、幼い子が舞踏会に出るなんてバラルデール帝国は私の祖国とは違う文化を持っている。

「今日は弟君に会えるのですね。楽しみです」

「そなたは今やっと目覚めたばかりだろう、まだ休んでおけ」

「嫌です」

 私が彼の言うことを聞かなかったからか、彼が私の表情を不思議そうにまじまじと見つめてきた。

「そもそも、ドレスをまだ作ってもいないだろう」

「何着か持ってきております。マルテキーズ王国から連れてきたメイドのルミナを呼んでください。しっかりと、支度して私も陛下のパートナーとして弟君の誕生日のお祝いがしたいです」

 彼の忠犬になるはずだったのに、やはり王女として育てられた我儘さも私は持っていた。

 私が出席したい会には当然出るつもりだ。

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  • 元捨て犬の私が暴君の愛され妻になりました。   30.マリリンは処刑したじゃないですか⋯⋯。

     「アレク、起きてください! 重いです」 私の昨日の高熱の原因はスレラリ草の毒だったらしい。 もう、子が望めないと皇宮医が言っているのを聞いて泣いてしまった。 アレクは私を抱きしめて寝てしまったようだが、非常に重い。「モモ、熱は下がったのか」  起きるなり、私の額に手を当ててくる彼は心底私を心配しているようだ。「はい⋯⋯それから、アレクが私に申し訳ないと思う必要はないです。毒を盛られる可能性に気がつけなかった私に落ち度があるのですから」 私はランサルト・マルテキーズの娘で、私に子が産まれたら自分にとって危険だと感じ毒を盛るのは想像できた。  普段の私だったら予想できる事が、犬の記憶が蘇ったことで主人に対する疑念より忠誠の心が勝っただけだ。   「そんなこと言わないでくれ! 俺が毒については絶対に何とかするから」  アレクが私をキツく抱きしめてくる。  彼自身も、毒を何とかできるとは期待できないだろう。  そのような事ができていたらタルシア前皇后は死んでいない。「アレク、それよりもスラーデン伯爵の問題に集中してください。あと、おそらくマルテキーズ王国がまた刺客を送ってくると思います。レイ・サンダース卿より厄介な、ルイーザ・サンダース卿を⋯⋯」 「ルイ! ルイが来るのか?」  ルイーザ・サンダース卿はレイ・サンダース卿の双子の妹だ。  私がルミナを返したので、メイドという設定で送り込まれてくるかもしれない。 (ルイって、なぜ愛称で呼んでるの?)「アレクはルイーザ・サンダース卿をご存知なのですか? 彼女は女性ということで油断されますが、レイ・サンダース卿と並び立つ暗殺術を持っています。本当に女好きなのですね⋯⋯命が狙われるかもしれないというのに⋯⋯」「えっ? ルイーザ? 女? 違う、俺は女は好きじゃない。誤解してないでくれ、モニカだけが好きなんだ!」 アレクの言葉は嘘じゃないだろう。  確かに彼の瞳からは私への好意を感じる。  ただ、その好意はやがて気まぐれのように終わる事を私が知っているだけ

  • 元捨て犬の私が暴君の愛され妻になりました。   4.私が陛下の為にできることはないかしら?

     目が覚めた時、隣にアレキサンダー皇帝はいなかった。 私は酷く寂しい気持ちに襲われた。(また、捨てられるのが怖い⋯⋯) 気だるい体を起こして、呼び鈴を鳴らすとクレアがやってきた。 服を着替えるのを手伝って貰い、食堂に向かう。(ルミナは本当にどこに行ったのかしら⋯⋯後で陛下に聞かないと⋯⋯) 陛下と一緒に食事をとれると期待したのに、私はまた1人で食事をするようだ。「朝食に陛下はいらっしゃらないの?」「陛下は既に朝食を済ませております」(今日も、料理からほのかに草の匂い

  • 元捨て犬の私が暴君の愛され妻になりました。   3.早く、陛下の妻になりたいので今サインします。

     バラルデール帝国の皇帝になり、半年で早く妻を娶るようにと周囲が煩くなった。 半年前、皇帝であった父が亡くなったのは間違いなく暗殺だ。  父アルガルデ・バラルデールは保守的で、好戦的なレイモンド・プルメル公爵と度々対立した。 父の死因は心不全とされているが、俺はレイモンド・プルメル公爵が裏で手を引いたと思っている。 若くして公爵位を継いだレイモンド・プルメルは、貴族派の筆頭で宰相職にもついていて強い発言力を持っている。 父、アルガルデ・バラルデールは高齢で政務から離れ気味にもなっていたので、レイモンド・プルメル公爵が俺の留守中には皇帝のように振る舞っているとも聞いていた。 俺が

  • 元捨て犬の私が暴君の愛され妻になりました。   2.私は、本当に幸せだ⋯⋯。

     私は初めてバラルデール帝国領に入った。 バラルデール帝国は馬車に乗りっぱなしで、マルキテーズ王国から2ヶ月以上も掛かる。 私はマルキテーズ王国の周辺諸国については、勉強したが帝国については知らないことが多い。 父も、今回の縁談がなければ、遠いバラルデール帝国まで手を伸ばそうとは思わなかっただろう。 馬車の外に見える風景が、目新しい。 夕暮れで暗くなり始めているのに、街灯が付いていて街中には沢山の人が行き交っている。  犬のモモだった前世の記憶を思い出してから、自分が人間であることに幸せを感じる。 目に映る全ての人たちと関わってみたいという好奇心が抑えきれそうにない。(初め

  • 元捨て犬の私が暴君の愛され妻になりました。   1.私、また捨てられたんだ⋯⋯。

     春の日差しが暖かくて気持ちが良い。 今日は花々に囲まれたガーデンにお茶の席を設けた。 集まった貴族令嬢たちとの大好きなお喋りの時間だ。 甘い花の匂いに包まれて私はまた幸せで楽しい時を過ごした。 美味しいものを食べて、会話をすることの幸せを噛み締められるようになったのは前世の記憶を取り戻してからだ。 孤立していた私に友人ができたのは、バラルデール帝国でできた初めての友人ジョージのおかげだ。 恋を知らず、人の好意を利用し「魔性の悪女」と呼ばれた私が愛し、愛される人に出会える日が来るとも思っても見なかった。 それまでの私はマルテキーズ王家の為に身を捧げるだけで、何をしても空虚に感じ

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