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第3話

Author: Chloe Laurent
珠莉視点

どうしても眠りにつけそうになかった。ベッドに背を預けたままぼんやりと天井を見つめていると、スマホに表示された時刻だけが進んでいく。

23時15分、23時30分、そして23時45分。

家の中に響くどんな些細な物音にも、心臓がびくりと跳ね上がる。床板がかすかにきしむ音ひとつにさえ、胸の奥で早鐘が打ち鳴らされた。

もしも、彼が来てくれなかったらどうしよう。

途中で気が変わってしまっていたら……

そもそも、今夜のことはすべて私の妄想にすぎないのではないだろうか。

23時50分。私はたまらず起き上がり、着替えることにした。パーカーとスウェットを着てみたものの、すぐに脱ぎ捨て、迷ったままクローゼットの前に立ち尽くす。

何年も焦がれ続けてきた人が、もう間もなくこの部屋へやってくる。そんな夜に、いったい何を着ればいいのだろう。

散々迷った末に選んだのは、飾り気のない黒のキャミソールと、お揃いのショートパンツだった。派手すぎず、かといって気合いを入れすぎているようにも見えない。

髪はあえて結ばず自然に下ろし、すっぴんのままでいることにした。飾らない、ありのままの私を見てほしかったからだ。

23時58分。私はベッドの端にそっと腰をかけ、じっと待つ。

0時ちょうど。部屋のドアが控えめにノックされた。

私は弾かれたように立ち上がる。両脚は小刻みに震えていた。気づけば、両手まで同じように震えている。

「入って」

かすれた声でなんとかそう告げると、ドアがゆっくりと開かれた。

和也が足音ひとつ立てずに室内へ入り、背後でドアを閉める。かちり、と鍵のかかる小さな音が、静まり返った部屋にやけに大きく響いた。

彼は黒のスウェットに、引き締まった身体のラインが浮かび上がる黒のTシャツ姿だった。髪は無造作にかき上げたのか、少し乱れている。そのまなざしはどこまでも深く、確かな熱を宿していた。

私たちはただ長いあいだ、交わす言葉も見つからないまま、見つめ合っていた。

「これが最後のチャンスだ」

やがて和也が静寂を破って口を開いた。

「今ならまだ引き返せる。全部なかったことにもできる」

「帰らないで」

「一度触れたら、もう俺は止まれない。わかってるのか?」

私は無言のまま、小さく、けれどはっきりとうなずいた。

大股で三歩。彼はあっという間に距離を詰め、大きな両手で私の顔をそっと包み込んだ。親指が私の頬を優しくなでる。

「綺麗だ」

低く響く声で、彼はつぶやいた。

「自分がどれだけ綺麗か、わかってるのか?」

綺麗だなんて褒められたことは、これまで一度もなかった。少なくとも、これほど熱を帯びた声では。けれど不思議なことに、その言葉が本当かどうかは、私にとってもうどうでもよかった。

「和也……」

「もし痛かったり、無理だと思ったり、やめてほしくなったら、ちゃんと言うんだ。いいか?」

「やめてほしくなんかない」

「約束してくれ」

「約束するわ」

そして和也は、深く私に口づけた。ゆっくりと、じっくりと。まるで私の味を記憶に刻みつけようとするかのように、熱い舌が口の中を探り、彼の手が私の首筋から肩、そして腕のラインをなぞるように滑り落ちていく。

私も夢中でその口づけに応え、6年分の想いをすべてそこへ注ぎ込んだ。6年間、ずっと遠くから彼だけを見つめ続けてきた。6年間、ただひたすら、この瞬間が訪れることだけを夢見ていたのだ。

彼の両手が私のキャミソールの裾にかかった。

和也は少しだけ身を引き、熱のこもった目で私を見つめた。

「いいか?」

「うん」

彼は布地をすくい上げ、頭から脱がせた。私はブラジャーをつけていなかった。そこまで考えて服を選んだわけではなかったのだ。和也の鋭い視線が露わになった私の胸元へ落ち、ぐっと顎に力を入れた。

「完璧だ」

押し殺したような低い声で、彼はつぶやいた。

「本当に、くそ完璧だ」

和也の熱い両手が、むき出しの胸を包み込んだ。親指が敏感な先端をなぞり、私は思わず短く息を呑む。甘い痺れが火花のように走り、脚のあいだへじわじわと広がっていった。

和也が頭を下げ、私の片方の胸をゆっくりと口に含む。私はこらえきれずに甘い声を漏らし、両手を彼の髪に差し入れて、さらに近くへ引き寄せた。

和也が吸い、舌でなぞり、時折軽く歯を立てるたび、私は思わず身をよじった。

やがて彼は、もう片方にも同じ愛撫を繰り返した。

私は膝から崩れ落ちそうだった。全身が疼いている。これほど激しい感覚は、生まれて初めてだった。

「和也……お願い」

「どうしてほしいんだ?」

「もっと、欲しいの」

彼は軽々と私の体を抱き上げると、そのままベッドに横たえた。それからためらうことなくショートパンツの中に指を差し入れ、下着ごと一気に引き下ろしていく。

私は彼の前で、完全に裸になった。

和也はベッドの脇に立ったまま、身じろぎひとつせずに私の裸を見つめていた。その瞳がしだいに暗く沈み、さらに濃密な熱を帯びていく。

「脚を開け」

静かで有無を言わせぬ命令に、私は素直に従った。

彼の喉の奥から、獣のような低いうなり声が漏れる。

「もう、こんなに濡れてる」

それは自分でもはっきりわかるほどだった。自分でもわかるほど、私は和也を求めていた。

和也は身につけていたTシャツを脱ぎ捨て、次にスウェットを、そして最後に下着を脱いだ。

浴室で偶然目にしたときの記憶と同じだった。太く、硬く張り詰め、思わず目を奪われてしまうほどだった。

彼はゆっくりとベッドに上がり、私の開いた脚のあいだへ体を滑り込ませてきた。和也の指先が太腿の内側をじわじわと這うように上へなぞり、いちばん触れてほしい場所へ少しずつ近づいてきた。

「ここを、今まで誰かに触られたことはあるか?」

「自分でしたことしか、ないわ」

「普段どうやって触るのか、俺に見せてくれ」

私は和也の熱を帯びた視線が私の手元に釘づけになった一瞬にして、顔が火の出るように熱くなった。

「……え?」

「見せてほしいんだ。お前がどんなふうにされるのがいちばん好きなのか、知りたい」

私は小刻みに震える手を脚のあいだへ滑らせ、おずおずと敏感な場所に触れた。ゆっくりと小さな円を描くように指を動かし始めると、和也の熱を帯びた視線が私の手元に釘づけになった。

「くそ、たまらない。そのまま続けろ」

私は言われたとおりに指を動かし続ける。じわじわと、快感は高まっていく。それでも、決定的に何かが足りなかった。自分の指だけでは、いつだって物足りなかった。

「お願い、和也。私には、あなたが欲しいの」

彼は私の手をどけると、代わりに大きな手をそこへ重ねた。和也に触れられると、自分の指とはまるで違う強い心地よさが広がった。片手で絶え間なく敏感な場所を弄びながら、もう片方の手をさらに奥へ滑らせていく。

「少しずつ広げていくぞ。最初は、少し痛むかもしれない」

太い指が一本、ゆっくりと中へ入ってきた瞬間、私は反射的に全身を強張らせた。

「力を抜け。ゆっくり息をして」

私は言われたとおりに深呼吸しようとすると、和也は私の身体が彼の指に慣れるのを待つように、ゆっくりと指を出し入れした。それから少し間を置き、2本目の指を加える。

私はたまらず高い声を漏らした。奥まで入りすぎている。彼の指だけで、中がいっぱいになったように感じた。

「そう、それでいい。上手だ。俺の指を、こんなに深くまで受け入れてる」

彼はひどく甘い、励ますような声で言った。和也が内側で指を曲げ、奥の敏感な場所を探り当てられると、私はびくりと全身を震わせた。

「ここだ」

彼は満足そうに言った。

「お前が感じるのは、ここなんだな」

和也はそこを正確なリズムで刺激し続けながら、同時に親指で外側の敏感な場所を容赦なくなで回した。快感の波が積み重なり、今にも限界を迎えて弾けてしまいそうになる。

「和也、私、もう……っ」

「思い切り感じていい。全部感じていいんだ」

激しい絶頂が巨大な波のように押し寄せ、抗う間もなく私を呑み込んだ。我を忘れて声を上げ、シーツの上で弓なりに背中を反らせる。

私は背中を反らし、体がベッドから浮き上がりそうになった。和也は最後まで決して手を止めず、私の震えが収まり、敏感になった体が落ち着くまで優しく宥め続けてくれた。

やがて荒い息がようやく落ち着き始めると、彼は濡れた指を引き抜き、そのまま自身の唇へ運んだ。私から一切目を逸らさないまま、指先をゆっくりと舐める。

「すごく甘い」

それからついに、熱く硬い先端が私の入り口へ触れた。

「少し痛むぞ。でも、なるべく優しくする」

「私、あなたを信じてる」

和也がほんの少し入ってきただけで、私は強い圧迫感に息を詰めた。先ほどの指よりも、ずっと太い。

「息をして」

彼はさらに少しだけ、深く入ってくる。私は呻き声を漏らし、両手ですがるように彼の広い肩を強くつかんだ。

「いい子だ。あと少しだけだ、頑張れ」

耳元で甘く囁きながら、彼はさらに深く沈み込んでくる。引き裂かれるような焼けつく痛みが下半身に走り、思わず目尻に涙が滲んだ。

「和也、もう無理……」

「わかってる。ごめん。ゆっくり息をして。すぐに楽になるから」

彼はぴたりと動きを止め、私の内側が彼の大きさに慣れるのをじっと待ってくれた。それから一度、迷いのない滑らかな動きで腰を押し進め、最奥まで一気に入り込んできた。

私は悲鳴にも似た声を上げた。焼けつくように熱く、痛く、耐えがたいほどだった。

「ごめん。本当にごめん。でも、いちばんつらいところは、もう終わった」

彼は私の首筋に顔を埋めて囁いた。

和也は最奥まで入ったまま、そこからまったく動こうとしなかった。必死に衝動を抑えているのか、彼のたくましい身体が小刻みに震えているのがはっきりと伝わってきた。

やがて鋭い痛みは、潮が引くように少しずつ薄らいでいった。あれほど焼けつくようだった感覚が、徐々にまったく別のものへ変わっていく。甘く、とろけるような快感へと。

「動いて」

私はかすれた声で囁いた。

「お願い、続けて」

彼はゆっくりと少しだけ身を引き、再び奥へ入ってきた。どこまでも優しく、慎重な動きで。

「もっと、強くして」

「本当にいいのか?」

「うん」

和也が腰を打ちつける力を強めると、脳が真っ白になるような激しい快感が全身の神経を駆け抜けた。

「すごい……そのまま!やめないで!」

私は乱れた息で喘いだ。やがて彼は一定のリズムをつかんだ。深く、規則正しく突き上げてくる。和也は両手で私の腰を強くつかみ、ずっと私の目を見つめていた。

「たまらないな。こんなにきつく締めつけてきて……最高だ」

彼が荒い息の合間に言う。快感の波が、再び怒涛のように高まっていく。さっきよりもずっと強く、激しく。私は両脚を彼の腰へ回してきつく絡め、彼をさらに深く受け入れた。

和也は獣のように低く唸り、腰の動きを一気に速めた。和也が激しく動くたび、その動きが私の奥の敏感な場所に触れた。こうやって彼が一度動くたびに、私は確実に絶頂へ近づいていった。

「和也、私、もういきそう」

「一緒にいこう。俺と一緒に」

彼は密着する私たちのあいだへ器用に手を滑らせ、外側の敏感な場所も同時に弄んだ。それだけで、私はあっけなく限界を迎えた。

私は頂点へ達した。二度目の絶頂は、一度目をはるかに上回るほど激しく、狂おしいものだった。

私は彼の名前を叫んだ。

和也もくぐもった声で呻きながら、最後にさらに二度、最奥深くまで入ってきた。私は体の奥で和也が脈打つのを感じた。続いて、熱が一気に広がった。

すべてが終わると、和也は糸が切れたように私の上へ崩れ落ちた。どちらも激しく息を切らしていた。

しばらくしてから、彼は体を横へ向け、私をそっと腕の中へ引き寄せた。彼の広い胸に頬を寄せると、力強く規則正しい鼓動が私の耳元に心地よく届いてくる。

「大丈夫か?」

気遣うように囁かれた問いかけに、私は幸せなため息をついて答えた。

「最高よ」

彼は私の髪に、慈しむようにそっと口づけた。

「さっきのお前、本当によかった」

もはや交わす言葉もなく、ただ満ち足りた心地よい静寂に二人で身を委ねる。彼の指先が、私の滑らかな背中にゆっくりと見えない模様を描いている。

どうかこのまま、この幸せな時間が永遠に終わらなければいいのに。

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