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第3話

Author: 微気力
翌日、私は病院へ向かった。

病室には両親が揃っていた。

蒼真は姉のベッドの傍らに座り、彼女の検査結果を手にしていた。

雅玖が出張で不在のため、蒼真が彼に代わって、医師からすべての注意事項を聞き出していたらしい。

私の姿を見るなり、姉は咄嗟に下腹部を庇うように手を添えた。

その動作はとてもささやかなものだったが、病室にいる全員の目に留まるには十分だった。

母が彼女の前に立ちはだかった。「一体何をしに来たの?」

「謝りに」私は持ってきたフルーツバスケットを置いた。

母は虚を突かれたように固まった。

父が冷ややかな顔で叱責した。「萌奈は小さい頃から至る所でお前に譲ってきたというのに、今度はお腹の子までお前のせいで危ない目に遭うところだった。結月、お前は一体いつになったら聞き分けが良くなるんだ?」

また、「譲る」の話だ。

私は病床の姉に目を向けた。

彼女は青白く、か弱く、誰もが腫れ物に触るように大事に守り抜いている。

姉も私を見つめていた。

彼女は声を潜めて父をなだめた。「結月を責めないで。あのアトリエは結月が一番気に入っていた場所なの。蒼真が相談もなしに壊したんだから、怒るのも無理ないわ」

姉は、昔からいつもこうだ。

まずは私の味方をするふりをして見せ、その実、私が決定的な過ちを犯したのだという事実を、病室の全員にこれ以上なく印象づけるのだ。

案の定、蒼真の眼差しはさらに冷酷さを帯びた。「アトリエを壊したのは俺が決めたことだ。萌奈に八つ当たりするな」

私は姉を見つめた。「ごめんなさい」

病室が静まり返った。

母は、まさか私の口からその言葉を聞く日が来るとは思いもよらなかったのだろう。

姉の目はたちまち赤く潤んだ。「結月、やめて……私、怖い」

私はなんだか、ひどく滑稽に思えて笑い出したくなった。

私が物を壊せば、彼女は怖がる。

私が人を叩けば、彼女は怖がる。

そして今、私が頭を下げて謝罪しても、やはり彼女は怖がるのだ。

結局のところ、私が何をしようと、すべて間違いなのだ。

私はバッグから株式譲渡の書類を取り出した。「おばあちゃんが私に残してくれた株よ。もうサインはしてあるから、お姉さんに譲るわ」

姉は呆然とした。

母がすぐさまその書類をひったくるように受け取った。「今度は何が欲しいっていうの?」

その警戒に満ちた顔を見て、私はふと16歳のあの年を思い出した。

お姉さんが、私のドレスを欲しがった。

私が拒むと、母は私を部屋に閉じ込め、ドレスを持ち去りながら優しくこう諭した。「結月、萌奈はもう何度もお誕生日を迎えられないかもしれないの。譲ってあげて」

しかしその後、姉は18歳、20歳を越え、29歳の今まで生き延びた。

一方の私は、彼女より先に死を迎えようとしている。

「何も欲しくないわ」

父は書類に目を通し、法的に問題がないことを確認すると、ようやく顔色を和らげた。「お前が萌奈に償うというのなら、萌奈が受け取ればいいだろう」

だが、姉は蒼真の顔を窺った。「蒼真……私、これを受け取ってもいいの?」

紛れもなく、私のものだったはずなのに。彼女は、私の夫に許可を求めている。

蒼真はすぐには答えず、私をじっと見据えた。「結月、お前は一体何を企んでいる?」

「お姉さんは何でも私に譲ってきたって、あなたはいつも言っていたじゃない。だから、一つひとつ返しているだけよ」

蒼真は深く眉間を寄せた。まるで初めて、私のことが理解できなくなったかのように。

姉は最終的にサインをした。

母は私の手を握り、安堵したように言った。「結月、やっと聞き分けが良くなったのね」

母の顔に浮かぶ笑みを見つめていると、不意に、胃の痛みよりも胸の奥のほうがずっと痛んだ。

29年。

母が初めて私を褒めてくれたのは、私が自分の手元に残された最後のものまで、姉に譲り渡したからだった。

母のいい娘になるのは、こんなにも簡単なことだったのだ。

私がただ、「何もいらない」とすべてを手放しさえすれば。

その夜は、私と姉の誕生日パーティーだった。

レストランには、姉の好きな白バラが飾られていた。

ケーキに書かれていたのは姉一人の名前だけだった。

小さい頃は、二人分の名前が書かれたケーキがあった。

10歳のあの年、私が先走ってろうそくの火を吹き消した。

姉はショックを受けて発作を起こし、父は私の頬を平手打ちした。

それ以来、ケーキに私の名前が載ることは二度となかった。

母はいつも決まってこう言った。「あなたは体が丈夫なんだから、お誕生日を一回くらいお祝いされなくても平気でしょ」

29歳の誕生日。私が受け取ったのは、相変わらず形式ばかりのハンカチ一枚だけだった。

一方で蒼真は、姉にピンクダイヤのネックレスを贈っていた。

姉はそれを受け取ろうとはしなかった。「今日は結月の誕生日でもあるのよ」

蒼真は淡々と弁明した。「お前にじゃない。腹の子への贈り物だ」

姉はそこでようやくうつむき、彼が首元に着けてくれるがままになった。

ピンクダイヤが彼女の胸元に落ちる。

蒼真の指先が彼女の長い髪をそっと払うその動作は、まるで幾度も練習を重ねてきたかのように自然だった。

私は、あのネックレスを知っていた。

3ヶ月前、私はオークションのカタログのその写真に丸をつけ、わざと蒼真の書斎のデスクの一番目立つ場所に置いておいた。

彼にまとわりつき、「誕生日にこれ、買ってくれない?」とねだりもした。

あの時、彼は何も答えなかった。

そうか。彼はちゃんと見ていた。ただ、私には贈りたくなかっただけなのだ。

姉がどことなく不安げな視線を私に向けた。

その場にいる全員が、私がいつ暴れ出すかと息を潜めて待ち構えている。

私は手元のグラスを取り上げ、彼女に向けて軽く掲げた。「とても似合っているわ」

蒼真の手がピタリと止まった。

父はほっと安堵の息を吐き出した。

母は私がようやく大人になったと笑って褒めそやした。

蒼真だけが、ずっと私から目を離さなかった。

彼もきっと不思議に思っているのだろう。かつての私なら、ネックレス一つを奪い取るためだけに、公衆の面前で姉のネックレスを引きちぎり、宝石を床一面にばら撒くことすら平気でやってのけたのだから。

だが今の私はただ、彼が姉にネックレスを着けてあげた時のその姿を、この目に深く焼き付けておきたかった。

そうやってこの家を去れば、彼も少しは私のことを好きだったのではないかなどと、もう自分を欺かずに済むからだ。

ろうそくの立てられたケーキが、姉の前へと差し出された。

姉は不意に私の手を握ってきた。「結月、一緒に願い事をしましょう」

私はそっと手を引き抜いた。「私に願い事なんてないわ」

姉の目がまた赤く潤んだ。

母が咎めるような目で私を睨みつけた。「萌奈がせっかく誘ってくれているのに、今日という日にあの子に恥をかかせるんじゃないわよ」

私は何も弁解しなかった。

私には本当に、願い事など一つもなかったのだ。

生きたいと願っても、医者にはどうすることもできない。蒼真に愛してほしいと願っても、彼にはどうすることもできないのだから。

ろうそくの火を吹き消した後、姉は嬉しそうに蒼真の腕に身を寄せた。

私はきつく拳を握りしめ、それでもやはり堪えきれずに問いかけた。

「蒼真。今日が私の誕生日だってこと……覚えていた?」

その場の笑い声がピタリと止んだ。

私を見つめ返す彼の顔には、明らかに忘れていたという動揺が浮かんでいた。

数秒の沈黙の後、彼はようやく口を開いた。「プレゼントは、後日改めて埋め合わせをする」

以前の私なら、間違いなく彼に要求していただろう。

一緒に家に帰ってほしいと。もう姉を見ないでほしいと。そのネックレスを外してほしいと。

けれど今回、私は静かに首を横に振った。

「いいえ、結構よ。あなたはすでに、私が一番欲しかったものをくれたもの」

「……何をだ」

「『あなたの妻の座』よ。でも残念だけど、今の私にはもういらないわ」

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