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第585話

Auteur: こふまる
冬真は弾かれたように手を離した。まるで灼熱の鉄に触れてしまったかのように、よろめいて半歩あとじさる。

喉元の圧迫が消えた途端、夕月は激しく咳き込んだ。氷のように冷たい空気を貪るように肺へと送り込む。雪白の首筋には、くっきりと赤い指の跡が刻まれ、その生々しさが痛々しい。

冬真は肩で息をしながら、その場に立ち尽くしていた。

咳き込み、涙目で赤くなりながらも、なお不屈の眼差しで睨みつけてくる夕月。先ほど指先に残った感触と、胸の奥底から不意に這い上がってきた場違いな——あまりに不謹慎な——高鳴り。それが、かつてないほどの恥辱と狼狽を彼に突きつけていた。

俺は、何を……

彼女に暴力を振るいながら、あろうことか、あんな感覚を覚えるなんて。何より今は、息子の安否さえ分からない非常時だ。それなのに、拉致犯かもしれないこの女に対して……

冬真は奥歯が砕けそうなほど噛み締めた。喉の奥から鉄錆のような血の味が込み上げ、全身の血が逆流するような感覚に襲われる。

自らの内面に巣食う醜悪な衝動への気づきは、夕月から浴びせられたどんな罵倒よりも、遥かに彼を打ちのめした。

怒りが消えたわけではない。だ
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