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第580話

Author: 鈴木真知子
母娘が弾かれたように揃って顔を上げると――

そこには、かつて志乃と彩葉の傍に仕えていた年老いた使用人が、無表情で静かに立っていた。

「よくもまあ、のこのこと戻ってこられたわね、この恩知らずの裏切り者が!」

多恵子は手にしていた箸をパシッとテーブルに叩きつけ、林家の女主人としての威厳を保とうと、必死に表情を取り繕った。「ちょうどよかったわ、あんたには、きっちり落とし前をつけさせてやるわ!」

周囲に誰もいないとわかると、雫もふだんの愛想のいい令嬢の仮面をあっさりと脱ぎ捨てた。目が険しく吊り上がり、全身から傲慢で冷酷な気配が滲み出る。

「このクソ婆!お父さんの誕生日の夜、蒼真さんをわざとあの部屋に連れて行ったのはあんたでしょう!あちこちで余計なことを吹き込んでくれたわね!」

年老いた使用人は、顔色ひとつ変えることなく淡々と答えた。「さようでございます。私が氷室社長にお伝えいたしました」

「あんたって人は――!」雫は今すぐ掴みかかりたい衝動を、かろうじて理性で押さえ込んだ。

「この恩知らず!せっかくこの家に置いてやってたのに、私たちを背後から刺すなんて!」

多恵子は目を血走ら
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