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第7話

小豆
凛太の放った言葉に、音葉は心臓を激しく打ち据えられたように震え、見開いた両目に驚愕と絶望を浮かべた。

それは、彼女の幼い日々を黒く塗りつぶした、決して消えることのないトラウマだった。

かつて占い師が吐いたその一言のせいで、両親の死後、彼女は親戚から見捨てられ、同級生からは石を投げられ、ある冷たい雨の夜、危うく命を落としかけた。

もう耐えきれない、いっそ死んでしまおう――そう思い詰めていた彼女に、「人の運命は他人の言葉など関係ない」と教えてくれたのは、他ならぬ凛太だった。

「両親はお前を特等席で見守るために天国へ行ったんだ」と優しく諭し、「俺の全人生をかけて、その呪いを解いてやる」と誓ってくれたのも彼だった。

それなのに今、彼はその過去を最も鋭利な刃に変え、彼女の心臓を容赦なく抉りにきている。

音葉の目から大粒の涙がぼろぼろとこぼれ落ちる。だが、その口元に浮かぶ笑みは、狂気を孕んだように次第に深まっていった。

……どんなに深く愛し合っていても、時の試練には耐えられないということか。

彼の瞳に映る自分は、もはや愛した女性などではない。女としての尊厳を無惨に踏みにじり、ようやく抜け出したはずの泥沼へと再び突き落として復讐を遂げるような、身の毛もよだつほど醜悪で卑劣な女――それが、今の彼が下した自分への評価なのだ。

彼女はもはや、弁解する気力すら失っていた。ただ、決して屈しまいと細い首を真っ直ぐに伸ばし、凛太を冷たく見据えた。

「凛太、やっていないことで謝るつもりは毛頭ないわ!彼女が死のうが生きようが、私には何の関係もない。……そして今日から、あなたも同じよ」

言い捨てるなり、彼女は渾身の力でその手を振り払い、目尻の涙を乱暴に拭うと、顔を上げてドアノブに手をかける。

だが、外へ踏み出そうとした瞬間、ドアは外側から冷酷に閉ざされた。

その背後から、まるで悪魔のように、底冷えのする凛太の声が響いた。

「音葉、どうしても謝らないというなら、俺の非情を恨まないでくれ。

誰か!彼女を璃風館へ連れて行け!自分の非を認めて謝罪するまで、決して迎えには行くな!」

音葉は足の裏が床に縫い付けられたように凍りつき、自分の耳を疑った。「……凛太、今、なんて言った?」

「璃風館」――それは帝都で最も名を馳せる、巨大な歓楽街の闇。男たちにとっては至高の悦楽に浸れる楽園だが、女たちにとっては筆舌に尽くしがたい拷問を受ける生き地獄だ。

凛太はあろうことか、自分の妻をそんな場所へ叩き落とすと言い放ったのだ。

音葉は信じられないものを見る目で彼を見つめたが、返ってきたのは、一切の反論を許さない氷のような言葉だった。

「音葉、今回はお前がやりすぎたんだ。晴香の過去の仕事をそこまで見下すなら、かつての彼女がどれほど必死に生き抜いてきたか、お前自身がその身で味わってみるといい。そうすれば、少しは聞き分けというものが身につくだろう」

凛太の顔には一片の感情もなく、その冷え切った瞳は、かつて命がけで取り戻した最愛の女性でも、現在の妻でもなく、まるで見ず知らずの他人を突き放すかのようだった。

絶望のどん底に突き落とされた音葉は、弾かれたように逃げ出そうとしたが、屈強なボディガードたちにあっけなく押さえ込まれた。

どれほど必死にもがいても、多勢に無勢だった。

両腕を拘束され、無理やり車に押し込まれる自分の姿を自嘲気味に見つめながら、音葉の心はもはや完全に死に絶えていた。

彼女は力なく車のシートに崩れ落ち、ひび割れた虚ろな瞳で、まるで糸の切れた人形のように凛太をじっと見つめた。

「凛太……離して。これ以上、私にあなたを憎ませないで……」

だが凛太は少しも意に介さず、むしろ彼女の態度を不可解だと責めるような目を向けた。

「音葉、過ちを犯せば代償を払うのは当然だ。俺が愛しているからといって、善悪の区別もつかないまま甘えるな。これはお前のためなんだ。将来、取り返しのつかない過ちを犯さないためにな」

そう言い残すと、彼は足早に車から離れ、二度と彼女を振り返ることはなかった。「木村さん、車を出せ」

それからの数日間は、音葉の生涯で最もおぞましい悪夢となった。

璃風館の厳格な階級制度は、まるで封建社会のようだった。

そこに巣食う人間たちの心理は極限まで歪みきっており、新人の登場は、彼女たちにとって格好の「狂宴」の幕開けを意味した。

放り込まれた初日、音葉は血を吐くまで強い酒を無理やり飲まされ、全身がミミズ腫れになるまで鞭で打たれた。

彼女たちはそれを「歓迎の儀式」と呼び、「親愛の証」として、音葉の鎖骨に火のついたタバコを力いっぱい押し当て、消えない火傷の痕を刻み込んだ。

ある客が、彼女が凛太の妻であることに気づき、わざわざ大金を積んで彼女を指名した。

だがそれは、彼女を助け出すためでも、酒の相手をさせるためでもなかった。男は音葉の首に犬の首輪とリードをつけ、土下座を強要し、まるで本当の犬のようにホールの床を這いずり回らせようとしたのだ。

音葉が死に物狂いで拒絶すると、今度は無数の蹴りと鉄拳が雨あられと降り注ぎ、吐き気を催すような血の匂いが何度も喉の奥へせり上がった。

このまま殴り殺されるのだと覚悟したその時、ようやく店の人間が止めに入った。

「まあまあ、お客様、どうかお怒りを鎮めてください。この女は瀬戸様から特別に『お世話』を頼まれている身です。死なれてしまっては、こちらとしても示しがつきません」

「ふん、凛太が『殺しさえしなければ、どう弄ぼうが勝手だ』と言い広めているのは周知の事実だろうが!加減は分かってる、邪魔するな!」

その言葉が店内に響き渡ると、もはや誰一人として彼女に遠慮する者はいなくなった。掃き溜めに落ちた芥のように、誰もが彼女を泥靴で踏みにじり、己の鬱憤を晴らすための格好の標的として扱った。

音葉は二度、脱走を試みた。だが、建物の外へ足を踏み出した途端、見張っていた凛太のボディガードによって無情にも引き戻された。

その後に待っていたのは、璃風館のオーナーによる凄惨な「お仕置き」だ。太い棍棒が、彼女の華奢な背中に何度も何度も振り下ろされた。

彼女はもうもがく力すら残されておらず、ただ奥歯を強く噛み締め、口いっぱいに広がる血の味を飲み込むしかなかった。

聡子が手配した「失踪」のタイムリミットが刻一刻と迫る中、音葉はついに一か八かの賭けに出るしかなかった。彼女は、客が投げつけてきた酒瓶に向かって、自らその頭を激しく打ち付けた。

その場で血の海に沈んだ彼女は、すぐさま病院へと運び込まれた。

だが、意識を取り戻し、重い瞼を開けた彼女の目に最初に飛び込んできたのは――あろうことか、晴香の姿だった。

そして、何よりも音葉の目を釘付けにしたのは、彼女がその首に、サファイアのネックレスをかけていたことだった。

音葉は、信じられないものを見たかのように大きく目を見開いた。それは、亡き母が彼女に残した、大切な遺品だった。
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