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4・一芝居

Author: 揚羽渓名
last update publish date: 2026-06-23 15:42:23

 私は今、支給された華美なドレスを着て各地から慰み者として集められた少女たちと一緒に馬車に揺られている。

 ちなみに慰み者の馬車はもう一台あり、そちらには見目の良い青年達が乗せられていた。

 少女たちの顔色は皆悪く、青ざめ、せっかくの綺麗なドレスも化粧も台無しだ。

 私は別にこの世界で何かしようなどとは思ってもいない。とりあえず生きていられればそれでいい。

 白濁液にどれほど塗れようが、食事さえ出来れば生きていける。刺されさえしなければそれでいいのだ。

 むしろビッチ先輩と後輩たちから呼ばれていた私だ。同僚や先輩からは常に腹上死を心配されていた。慰み者なんて、はっきり言って天職ではないか。

 そもそもセックスなどやることは同じだ。蜜壺に屹立を突っ込んで適度に締め上げ欲望を出させる。ついでに自分も気持ちよくなる。それだけの話だ。気をつけなければいけないのは妊娠と性病ぐらいである。

 私は馬車に揺られながら窓の外をしばらく見ていたが、気がつけばいつの間にか眠っていたようだった。

「きゃっ!?」

 突然頭から水をかけられた感覚がして私が驚いて目を開けると、そこにはバケツを持った美しい男がこちらを見下ろして立っていた。

 銀色の髪を靡かせ、夏空のような青い目には一切の温度が無く、氷のように冷たい。

「良い度胸だな。慰み者のくせに寝るだなんて」

 男はそう言ってバケツを放りだし、私の腕を乱暴に引いた。

「気に入った。今夜の相手はお前だ」

 男は言うなり私をまるで物か何かのように血生臭い道中を引きずる。そんな光景を一緒に馬車に乗ってきた少女たちが怯えたような顔をして見ていた。

 道中にはあちこちに死体が転がり血痕が飛び散っていたけれど、死体は何だかありすぎると返って現実感が無い。ついでに言うと生憎私は血は全然平気だ。職業柄「ムチで打って欲しい」だとか「身体を殴りつけて欲しい」などと過激な客の相手をしてきたからかもしれない。

 しばらく死体の転がる道を引きずられ、ようやくやけに豪華な天幕に辿り着くと、今度は乱暴に中に引きずり込まれた。

 天幕の中はとても豪華で、外の仄暗くて陰気臭い雰囲気は一切ない。なるほど。どうやらこの男はそこそこ位の高い人のようだ。

 私は納得したように頷き、おもむろにドレスを脱ぎ始めた。

「さ、やるわよ。あなたも脱いで」

「……お前……」

 さっさとドレスを脱いで下着になった私を見て、男は何故か愕然とした顔をしている。

「何よ? ヤらないの?」

「何故、平気なんだ」

「何が?」

「あの死体の山や血を見ても何も思わないのか?」

 怪訝な顔をしてそんな事を尋ねてくる男に私は腰に手を当てて言った。

「何かって? 別に何も思わないわよ。御冥福をお祈りするぐらいだけど?」

「……普通の女はあの光景を見たら大抵怯えるんだがな」

「知らないわよ、そんな事。それよりもあなたも早く脱ぎなさいよ。それとも脱がして欲しいの?」

 ついつい女王様の頃の癖で強めに言うと、男は驚いたように目を見開く。

「この俺にそんな事を言う女が居るとはな。まぁいい。興味が失せた。さっさと出ていけ」

 男はそう言って仰々しい上着を脱ぐと、私に背を向けて天幕のさらに奥に消えていく。

 私はそんな後ろ姿をしばらく呆然と見ていたが、自分がここへ仕事に来たことを思い出して慌ててドレスを着直して男を追いかけた。

「ちょっと! そういう訳にはいかないの——って、なんだ。やっぱりしたいんじゃないの」

 薄い幕を勢いよく開くと、男はベッドに座って下半身を露出させ、自分の屹立を扱いている真っ最中だった。

「お、お前! 何故無断でここに——っ」

 慌てた男が言うよりも先に、それまでそそり勃っていた屹立がみるみる間に萎んでいく。

「……」

「……」

 気まずい雰囲気が流れ、男は急いで下履きを履き直したかと思うと、私が口を開きかけた次の瞬間、喉元に磨き上げられた剣の切っ先が突きつけられた。

「口を開くな。この事を口外したらすぐさまその首が飛ぶと思え」

 剣の先が少しだけ私の肌に触れ、背筋がゾクリとする。前世で刺殺されて以来、刃物は今も苦手だ。

「絶対にだ。誰にも口外するな」

 二度も忠告してくる男に私は呆れたように言った。

「……言わないわよ。客の秘密を口外するなんて私のプライドが許さないもの。何よ、あなた勃たないの?」

「言うなと言っただろう?」

 静かな男の口調に私は口を噤んだ。何故なら剣の先が私の喉元をスッと横切ったからだ。黙り込んだ私を見て男は剣を私の喉元から避けると、力なくベッドに座り込む。

「もう行け」

「行かないわよ。それバレたら困るんでしょ? だったら一晩中演技してあげるわ」

「?」

「天幕から何の声も聞こえて来ないなんて不自然でしょ? って言ってるの」

「……そうか。言われてみればそうだな」

 男は納得したように頷くと大きなため息をついて、始めろとでも言いたげに顎でしゃくりあげてくる。

「あ……ん、っ、ああん!」

「……」

 私は男から少し離れた場所でわざと天幕の外に聞こえるように喘ぎ声を出した。そんな私を何とも言えない顔で男が見つめてくるが、仕方がない。

「わざとらしい?」

 あまりにも怪訝な顔で見つめてくるので私が問いかけると、男は無言でコクリと頷いた。やはりそうか。女優でもないのだから当然と言えば当然だ。

 私はおもむろにドレスをたくし上げると、自ら陰核を弄り始めた。

 自慰なんてするのは一体何年ぶりだろうか。突然の私の行動に男はギョッとしたような顔をして顔を反らせると私に怒鳴ってくる。

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