เข้าสู่ระบบ「毎日毎時間毎分毎秒幸せにする。死んでも」 大学受験を控え、アルバイトを辞めた帰り道。葵依は常連客・金城壱から告白される。 二年前、クレーマーから自分を助けてくれた人。亡き母と同じ煙草の香りがする人。 その優しさに惹かれ、葵依は壱の想いを受け入れた。 しかし彼は、二年間の片想いを拗らせた超が付くほど愛が重い男だった。 交際初日から結婚計画。 将来設計は完璧。 逃げ道は存在しない。 けれど壱は誰よりも優しく、誰よりも甘く、誰よりも葵依の幸せを願っている。 愛されることに慣れていなかった少女が、本当の幸せを知っていく長い恋の物語。
ดูเพิ่มเติม警戒心もなく、二年間を埋めるように打ち解けた穏やかな雰囲気は、壱にとって、とても居心地が良かった。 壱は、今夜は葵依に指一本触れる気は一切なかった──ものの、そんな決意はすぐに崩れ去ってしまったが……壱が恋に堕ちた葵依の笑顔を間近で見たら抑えが効かなくなって、自分の決意なんぞ何処かへ置き忘れてしまい――唇を奪ってしまった。隙だらけだったから簡単に奪えた。一瞬、隣の部屋にある遺影と目が合ったような気がして罪悪感は生じたものの……息継ぎが出来ずにいっぱいいっぱいになっている葵依を見ていたら、後ろめたい気持ちは、いずこかに消え去ってしまう。 正直、葵依へキスをして押し倒していた頃は、キス以上のことをするつもりなんぞこれっぽっちもなかった。唇は奪ったものの、「肉体関係は結ばない」という決意は消えてはいなかった。 細くて白い薄肌の首筋へ唇を当てられても、クスクス笑う葵依を見て、自分が話した防犯講座は役に立っていないような気がしたものの邪気のない葵依に愛しさが溢れた。 と同時に、 (思っていた以上に、危機感が薄いな……) と思いはしたが……。 葵依がバイト先の男から肩、背中に横を通る度に触われている姿を目撃したことがある。その度に腸煮えくり返っていたものの、葵依は全く気が付いておらず──当の本人は商品の陳列に夢中だった。『キスは許可制』『可愛い発言は許可制』『名前呼びは許可制』 だと自分で言っていたにも関わらず、キスされた後「可愛い」も「葵依」も許可を貰わずに何度も発言したが、葵依本人はスルーしてしまっていた。 キスされた後なんだから色々と構えるべきだし、男から髪へ触れられたら警戒すべきだ。擽られている感覚と自分の身体に起きている感覚の区別がつかない葵依に対して不安を感じてはいても、今まで聞きたかった「いらっしゃいませ」以外の言葉と、笑い声、驚きの声音、上擦った声音──予想に反して下半身へきた──これ以上の触れ合いは止めた方がいい、まだこの頃は分別出来ていた。それでも葵依
「そうか」「は、はい」 さっきまでは擽ったいだけだったのに、母親との思い出の擽ったい感覚が今では消え去っていて、壱の手から伝わる弱い刺激の方が強い。優しい手つきなのに、指先は触れるか触れないか程度なのに、感じ方が妙だった。「くすぐりとは違う……?」 またも同じ質問を返してみる。どうしてか自分の息が微かに上がっているような……声が上擦っているような気がした。「…………」「えっと……壱さん……?」 無言のままの壱が気になって葵依は壱を見ようとするも、ぎゅっと抱き締められてしまう。彼の手で自分の耳を塞がられてしまって、身動きできない。仕方ないから目だけを動かすも彼の濡れたような黒髪しか映らなかった。 抱き締めたまま壱の動きが止まってしまって、肩と首筋の間に埋もれた彼の吐息を感じるだけになってしまった。「壱さん?」 もう一度名前を呼んで、そっと壱の頭に触れてみる。ピクリと彼の肩が上下したが、何も返さなかった。 葵依は壱の頭をなでなでと数回撫でてみた。 生まれつき茶髪の髪は軟毛な癖にクセが付きやすくて、毛先がクルンと巻いてしまう自分の髪とは違って、壱の髪質は艶があって直毛だ。試しに指で梳いてみる。サラサラな髪の感触が楽しくなって、葵依は彼が何も言わないのをいいことに何度もその髪を指で梳いながら彼の頭を撫でた。(楽しい。さっき、壱さんが私の髪を触っていたのって自分と髪質が違うから、私のように楽しくなったのかも) 身長差があるから、葵依がこうして壱の髪に触れられるのは壱がしゃがんだ時だけだ。こういう機会は二度とない、そう思って許されるまでは、と葵依は緩やかな笑みを口元に浮かべながら、優しい手つきで彼の頭を撫で続けた。 突然──生温かい何かから首筋を舐められ……おかしいと思った時にはもう遅かった。 「ひやっ!?」 ねっとりとした舌の
「トリートメントとコンディショナーは使った方がいいですか?」 言われるよりも自分で聞いた方が痛みが少ないかもしれない、そう思って葵依は壱へ訊ねた……ものの。 「リンスインシャンプーは職場のシャワー室に備え付けられているから夜勤明けや泊まり込みの時に使うけど、その二つの必要性を感じたことはないな。自宅の風呂へ入る時はあるから使うってだけだし」「使った方がいい」とか、「ちゃんとケアした方がいい」とか言われることはなく、拍子抜けしてしまった。「俺も使う」という言葉に葵依はホッとする。 「夜勤明けや泊まり込みでお仕事するんですね」「一週間から出張で長くて一ヶ月とかあったな……」 激務で大変そうだ。身体は持つのだろうか。(そんなに激務なのに八月は会えるのかな……) 会えなかったら、寂しいな――と思っていると、不意だった。 葵依の首筋に柔らかいものが当たった。「ひゃっ!?」 葵依は驚いて声を上げてしまう。 手を握られたままの葵依は、自分の首筋に埋まった壱をどうすることも出来ずに固まってしまった。 その柔らかい唇の感触が、こそばゆい感じがして葵依は笑い声を上げた。「フッ、フフッ」 何度も啄むように唇を当てられて、それから壱の髪の毛が鼻先に掠って擽ったい。 「かわいいな……」 笑うような吐息で壱は呟いた。 葵依の細い首筋に啄むように何度もキスをしながら、「擽ったい?」と壱は訊ねる。「は、はい……フフッ」 葵依は壱が自分にじゃれているのだと思った。 優しく触れる程度の唇の感触と、いつのまにか自分の手から離れた壱の手は自分の腰のラインを撫でている。葵依の脳裏に幼い頃、母からこしょこしょと擽られてふざけ合った記憶が蘇った。 例え、執拗に腰を撫でられてゾクッと腰に震えが
「誰かが夜中に家を訊ねてきても、絶対に開けるな」 さっきまで、はしゃいでいたのが嘘のような真剣な声だ。「知っている人でもですか? 叔父さんとか楓君とか……」「一人暮らしの葵依に連絡が付かない時は心配して訪ねてくるだろうけど……連絡なしに訪問するようなそんな非常識な人間じゃないだろう?」「はい」と葵依は小さく頷いた。彼らは育ちがよく非常識なことはしない。それでも葵依が電話に出なければ警察を引き連れてここへやってくるだろう……今日はその一歩手前だった。 携帯を両手で握り締めたまま親指同士をくっつけたり、引っ張ったりしていると壱から携帯を取り上げられた。 それから壱の手が重なってきて葵依は動きを止めた。壱の手は、筋肉量が多く角ばってゴツゴツしていた。指が太く関節の節や筋が目立ち、血管が浮き出ている──。(私の手と違う手と手を繋いで……歩いて帰ったんだ……) 顔を上げると、穏やかに微笑んだままの壱と目が合った。 不意に彼の指が伸びてきて、葵依の頬に触れる横髪を耳後ろへかけた。指先が耳輪に触れてゾクりとする。今度は反対の横髪も右と同じようにしてもらった。「髪、手触りが良いな」「安いリンスインシャンプーを使ってます」 クスッと笑われたが、馬鹿にしているような笑いではなく。葵依の発言全てを愛しいと思っての漏れたものだった。 でも、葵依にはその違いが分からず、呆れられたと思って傷ついてしまう。全身安物を身に纏った自分が、生まれて初めて恥ずかしいと思ってしまった。「なぁ……提案があるんだが」「ていあん?」(シャンプー、トリートメント、コンディショナーを使えって言われるのかな……) 葵依は、どれで洗っても変わらないと思っているため、リンスインシャンプーしか使っていない。それ以前に、全部揃えるとコストが掛かる。 見当違いのことを葵依は思い浮か
「……照れ隠し?」 目をパチパチさせる葵依に113番は「あぁ」と短く答えた。 「下田さんのバイトは今日が最後だから声を掛けようと思ったんだ」 「あれ? 名前?」 どうして名前を知ってるんだろ? と首を傾げると 「バイト中、名札を見てたから」 と男は自分の右胸を指した。バイト中はその場所にネームプレートを差すのだ。 「そうなんですね」 納得して頷く。 名前を知られていたなんて、と思うとどうしてか嬉しい気持ちが沸いてきて口元が緩んでしまう。 「俺は壱だ」 「いちさん?」 「あぁ」と113番──金城 壱は頷いた。名前を呼ばれただけで
俺は──この子に今まで話しかけた事なんぞ一度もない。 ただ一度だけクレーマーに絡まれている所を助けたが……その後も声をかける事はしなかった。 『昨日は助けてくれてありがとうございました!』 と頭を下げられ。 俺はなんと答えたか。 『あぁ』 だけである。それで会話は終了した。それ以来会話をした事がない。クレーマーの男に掴まれていた右手首はあれから一カ月も経つのに薄らと跡が残っていた。『大丈夫か?』という言葉さえかける事が出来なかった。 それから数日後。コンビニへ行くと、お礼だと言ってプレゼントを渡された時は、飛び回ってその辺を歩く赤の他人にも自慢をしたいくらい嬉しか
(本当は続けたかったけど──…) 葵依は特待生だ。常に学年十位以内を保っていて、一度でも十一位に下がると奨学金が打ち切られてしまう。今まではバイトと学校を両立して上位を保てていたが、葵依には将来の夢を叶える為にどうしても進学したい大学があった。その為、今の勉強量では足りないと思い泣く泣くバイトを夏休み前に退職する事にした。幸い、バイトをしたお金は貯金をしているから生活費には困らないし勉強に専念する事が出来る。 「あれ……? 私が煙草の銘柄を間違えて渡したからじゃないんですか?」 「ん?」 男は首を傾げるのを見て、葵依も男と同じ向きに首を傾げた。 「私、113番さんに違
113番というのはコンビニで売られているタバコの番号だ。葵依を呼び止めた男は113番の銘柄をいつも買う常連の男で、葵依は彼がいつも買う銘柄の番号で呼んだ。番号で呼ばれた男は目を見開いた後不機嫌そうに口を曲げた事に葵依は気付かない。ぺこりと頭を下げたからだ。頭を上げると、そこには女のような成り立ちの甘い顔があった。 「どうされましたか? もしかして、私……違う煙草を渡しちゃいました?」 葵依の問いが聞こえているのかいないのか……113番は無言のまま葵依を見下ろした。 葵依がバイトを始めた頃、この113番は葵依がレジでクレーマーに絡まれている所を助けている。 それは二年前に遡る。