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第513話

Author: 木真知子
隼人は、驚きに浸る暇もなかった。

なぜなら、今まさに立っている崖が崩れそうだからだ!

「小春!早く!」

隼人は焦りから、思わずその名前を口にしてしまった。

桜子はその呼びかけを聞いて、目を見開き、心臓が激しく鼓動しているのを感じた。

その声が、彼女に不思議な力を与え、間一髪で崖の縁に到達し、隼人の胸に飛び込んだ。

隼人は両腕で彼女を強く抱きしめ、全力で守った。

轟音が響き渡り——

崩れゆくその瞬間、隼人は体を使って桜子を守り、反対方向に素早く転がりながら、ようやく命拾いをした。

「うっ!」

背中が岩にぶつかり、痛みに呻き声を上げた。

その衝撃はかなり強く、冷汗が額に浮かび、雨水と混ざり合った。

「怪我してない?」

桜子は隼人の胸に顔を埋め、彼の青白い顔を心配そうに見つめた。

「大丈夫だ」

隼人は痛みを堪え、低く響く声でそう答えた。

桜子はまだ恐怖が抜けきれず、濡れた体が彼の胸に力なく沈み込み、深く息をついた。

「どうして......教えてくれなかった?」

隼人は濡れた長いまつげを伏せ、彼女の目をじっと見つめながら、声がかすれていった。

「何のこと?
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