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第828話

Author: 青ノ序
それからというもの、綾は放課後になると、毎日健吾と一緒に地下鉄で帰宅するようになった。

地下鉄は揺れるが、健吾はいつも彼女の後ろに立ち、距離を保ちつつも何気なく彼女を守るような体勢を取っていた。

それには綾もひそかに感心していた。青木家はなんと寛大だろう。ダニエルが何日も休み続けても、何も言われないのだから。

尋ねようかと一度は思ったが、口には出さなかった。他人の家庭の事情を詳しく聞くほど、彼らは親しい仲ではなかったからだ。

週末、綾はいつも通り明里と遊びに出かけた。

二人でデパートをぶらぶらして過ごした。明里が「最近なんだか顔色がいいね」と言うので綾は「よく眠れているからかも」と笑って返した。

けれど家に帰り着いた途端、どっと重い疲労感が押し寄せ、骨の軋みからじわりと脱力感が滲み出るようだった。

その日の夕方、和子と散歩に出たが、吹く風を浴びた途端、綾は頭がクラクラとした。

玄関に入ると、ついに堪えきれず、そのまま崩れ落ちた。

耳元で和子が叫ぶ声が響いたが、綾の世界は深い闇に包まれた。

完全に意識を失う直前まで、遠くから自分の名前を呼ぶ、和子の声が聞こえたような気
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    それからというもの、綾は放課後になると、毎日健吾と一緒に地下鉄で帰宅するようになった。地下鉄は揺れるが、健吾はいつも彼女の後ろに立ち、距離を保ちつつも何気なく彼女を守るような体勢を取っていた。それには綾もひそかに感心していた。青木家はなんと寛大だろう。ダニエルが何日も休み続けても、何も言われないのだから。尋ねようかと一度は思ったが、口には出さなかった。他人の家庭の事情を詳しく聞くほど、彼らは親しい仲ではなかったからだ。週末、綾はいつも通り明里と遊びに出かけた。二人でデパートをぶらぶらして過ごした。明里が「最近なんだか顔色がいいね」と言うので綾は「よく眠れているからかも」と笑って返した。けれど家に帰り着いた途端、どっと重い疲労感が押し寄せ、骨の軋みからじわりと脱力感が滲み出るようだった。その日の夕方、和子と散歩に出たが、吹く風を浴びた途端、綾は頭がクラクラとした。玄関に入ると、ついに堪えきれず、そのまま崩れ落ちた。耳元で和子が叫ぶ声が響いたが、綾の世界は深い闇に包まれた。完全に意識を失う直前まで、遠くから自分の名前を呼ぶ、和子の声が聞こえたような気がした。何度か朦朧と意識が浮上したが、何も見えず聞こえず、身体が重い繭に閉じ込められたようで、指先ひとつ動かせなかった。その夜、いつも冷静な和子は一睡もできなかった。彼女は綾の手を自分の頬に当てたが、その肌はぎょっとするほど熱を持っていた。翌朝、幸子が静かに声をかけた。「和子様、少し横になられては、あとは私がついておりますから」和子は額を押さえ、綾の顔から一瞬たりとも目を離さず答えた。「綾が目を覚ますまで、休めるわけがないでしょう」一晩の間に医師を何度か変えたが、どの医師も口を揃えて「インフルエンザによる発熱で、少し容態がひどいだけです」としか言わなかった。こうして、和子は綾の看病に夢中で時間も忘れ、学校へ欠席の連絡を入れることすら忘れていた。この時、和子の瞳には、熱で頬を赤く染めて横たわる綾の姿しか映っていなかったのだ。……一方、学校では、国際クラスの担任が、綾が1限目から欠席していることに気づいた。綾はいつも素直で、無断欠席なんて一度もなかったはずだ。そう思って教室の後ろに足を運んだ担任は、綾の後ろの席に座る健吾に尋ねた。「中野さんは今日

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