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第 10 話

Auteur: 柏璇
疲れた表情で微笑む真理に、蒼司は口を噛み締め、木村に命じた。

「客室のマットレスを替えろ」

「旦那様、客室のマットレスは全部同じ仕様ですが」

「いいのよ蒼司。昨日、偶然主寝室のマットレスが昔二人で好きだったあのモデルだって気づいたの。明日、自分で買いに行くから」

確かに、それは真理が最も気に入っていたタイプだった。

蒼司はしばらく黙ってから言った。

「寝室のマットレスを客室へ運べ」

木村は一瞬ためらった。

「本当にいいのよ蒼司。こんな夜更けに人を煩わせるなんて」

だが蒼司は真理の腰痛が自分に原因があると知っていた。

真理はさらに提案する。

「じゃあ部屋を交換するのはどう?そうすれば彩乃さんに迷
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