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第 73 話

Author: 柏璇
先に彩乃が買ってきた服を取り上げ、料理などの習い事を教える。

そうしているうちに、子どもたちは自然と自分になついてくるはずだ――そう思っていた。

けれど真理は、最も大事なことを忘れていた。

――子どもたちはもう六歳だということを。

自分で考える力も、生きる習慣もすでに身についている。

そこへ真理が無理に口を出せば、かえって逆効果になるのは当然だった。

「陽翔、もう切らなくていいよ。姉ちゃんがやるから」若葉が言った。

「大丈夫だよ、お姉ちゃん」

母に教えられていた。僕たちは姉弟だから、助け合うものだと。

「僕も覚えるんだ」

真理が口を挟む。「切り終えたら、和子さんが料理を教えてくれるから。最初は
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