Share

第7話

Author: 春のそよ風
浩介は、従業員たちを集めた。

「いいか、よく聞いてくれ!最近、少し問題があって、経営が少し厳しいんだ。

だから、来月からみんなの給料を一律2割下げることにした。

この困難を乗り越えたら必ず元に戻すし、ボーナスも弾む。だから、今はなんとか受け入れてほしい」

その瞬間、その場がざわついた。

「減給?!どういうことですか、社長!」

「そうですよ!真壁さんがいた時は、かなりの売り上げが出てたじゃないですか!

真壁さんがいなくなってまだ数日なのに、なんでこんなにもすぐに給料を下げるんですか!?」

「そうですよ!真壁さんがいた時はこんなこと無かったのに!

トラブルが起きるとすぐに、私たちの給料を下げるなんて、納得いきません!」

「真壁さんを呼んでください!真壁さんに間に入ってもらって話しましょう!」

「そうですよ!真壁さんを連れてきてください!」

従業員の感情も昂っていき、場は騒然となった。

浩介の顔もみるみるうちに青ざめていく。

自分が雇っている奴らなのに、口を開けば智樹のことばっかり……

まるであいつがここのトップみたいじゃないか。

挙句の果てには自分を、悪徳経
Continue to read this book for free
Scan code to download App
Locked Chapter

Latest chapter

  • 利益を独占する従兄。僕は協力を止め海外に飛んだ   第10話

    その後の月日は、水の流れのように過ぎ去った。とても静かだったが、それでも多くを運び去り、多くをもたらしてくれた。それから数年後、僕はある国際会議で今の妻に出会った。妻はバイオインフォマティクスを研究していた。あの時、僕らは専門の話から日常のことまで、夢中で語り合った。やがて僕らは付き合い始め、結婚した。結婚式は僕たちが暮らす街の小さな教会で挙げた。本当に親しい同僚と友人だけを招いた簡単な結婚式。それから2年が経ち、息子の真壁海晴(まかべ かいせい)が生まれ、僕の両親は舞い上がるほど喜んだ。毎日、小さくて柔らかい海晴のそばで、目を細めている。共働きの僕たち夫婦に代わり、両親は海晴の面倒を見てくれた。それからしばらくして、僕たちはマンションを引き払い、小さな庭のある一軒家に引っ越した。母は庭でネギやハーブ、さらにはスーパーで買ってきた、名前も知らない花を育てている。父は車庫の隅を作業場に改装し、家で壊れたものを直してくれたり、たまに海晴へと手作りの簡単な木のおもちゃを作ったりすることもあった。海晴もすくすくと育ち、いつしか小さな口で、たどたどしく「あー」や「うー」などと言葉を発し始めた。ある週末の午後のこと。家族みんながリビングにいて、海晴はカーペットの上でブロック遊びをしていた。母はキッチンで夕食の支度をし、父はソファで新聞を読んでいる。赤いブロックをいじりながら、何かをぶつぶつ言っていた海晴。すると不意に海晴は顔を上げ、黒い瞳をキラキラとさせながら、キッチンの方へと視線を向けた。そして小さな口を開き、はっきりとこう言ったのだ。「ば……ば……」キッチンから聞こえていた蛇口の音が止まった。母がキッチンから顔をのぞかせる。手には野菜を持ったまま、呆然として立ち尽くし、大きく見開かれた目で、じっとカーペットの上の海晴を見つめていた。母が自分を見ているのに気づいた海晴は、嬉しそうに体を揺らして叫んだ。「ばあば!」その瞬間、母の手に持っていた野菜がぽろりと落ちた。それでも母はそれを拾おうともせず、ただ立ちすくんで唇をかすかに震わせていた。母の目頭が赤くなっていく。そして母は海晴の高さまで視線を落とすと、努めていつものように声をかけた。「もう一回、ばあばって呼んでみて」

  • 利益を独占する従兄。僕は協力を止め海外に飛んだ   第9話

    数日後、宗介と浩介が真壁家までやってきた。わずか数日で、宗介は別人のように老け込んでいた。背中は丸まり、顔色はどす黒く黄ばみ、苦しげな咳をしている。喉が引きちぎられそうなその音は、聞くだけでこちらも辛くなった。浩介も似たようなもので、目はくぼみ、骸骨のように痩せ細っている。しかし、たとえどれほど声が枯れていても、宗介の態度は相変わらず横柄だった。「姉さん……弟である俺のこと……少しは心配してくれないか?俺たちが……死んでいくのをただ見てるつもりなの?」母はこれまでの人生、ずっと守り抜いてきた弟をじっと見つめた。そして、小さく溜息をつき、静かに言う。「宗介……あなたたちは、本当に自業自得だよ……」「自業自得!?」宗介は図星を指されたかのように、突然声を荒らげた。だが次の瞬間、激しく咳き込む。宗介が血走った目で母を睨みつけた。「俺はもう死にかけだ!浩介だってもうすぐ捕まっちまう!それなのに、姉さんは俺たちに自業自得だって言うのか?智樹くんはどうした?あいつなら何とかできるんだろ?海外にだって行くんだよな?あいつに何とかさせろ!コネを探して、金を使わせろ!俺たちを助けさせてくれよ!俺は姉さんの弟だぞ?それに、浩介だって姉さんの甥っ子だ!見捨てるなんてあり得ないだろ?」興奮してまくし立てる宗介は、まるで悪いのは助けようとしないこちらの方だと言わんばかりだった。「自分たちはこれからは海外へ飛んでいい暮らしが待っているから、実家の面倒なんて知ったこっちゃないってか?薄情者!どいつもこいつも薄情者だ!」母の顔から血の気が引き、その体がよろめいた。僕と父は慌てて駆け寄り、母を支える。「助けろ?どうやって?」父は母の前に立ち、低く冷徹な声で言った。「浩介くんが問題のある家畜を売って、人まで死なせたんだ。それに、証拠だって完璧に揃ってる。これは犯罪だ。なのに、智樹に犯罪者を救えって言うのか?金を使えと言ったな?お前たちには、これまで稼いだ汚い金があるだろ?」すると、浩介が急に顔を上げ、父を睨みながら叫んだ。「なんでそんなこと言うんだよ!俺たちが終わったら、そっちもただじゃ済まさないからな!そもそも、最初に智樹が飼料を止めなければ……」「黙れ!」父が鋭い声で遮った。

  • 利益を独占する従兄。僕は協力を止め海外に飛んだ   第8話

    ビザの手続きもすぐに終わり、僕は来週の飛行機のチケットをとった。今日までの間にも、僕の耳には吉川畜産に関する話が時々入ってきていた。吉川畜産が安価な飼料に切り替えたことで、昔からの得意先が皆離れてしまったらしい。そこで、追い詰められた浩介は開き直り、安さだけを基準にするようになったようで、そのうち、消費期限が切れたものや、明らかにおかしい飼料まで使い出したという。浩介は粗悪な飼料で育てた、見るからに元気のない家畜を、少しでも仕入れを安く抑えたい小さな飲食店や個人経営者たちに、安値で売りさばき始めた。驚くことに、買い手もついたという。コストを極限まで削ることができ、値段を下げて売っても、すぐに現金が手に入る。その事実に、浩介はまるで突破口を見つけたような気になり、ますますこの悪循環へ沈んでいった。それどころか、買い手には「うちの家畜は良質な飼料で育てているから、この値段で出せるんだ」と吹聴までした。嘘もつき続ければ、いつしか本人さえ信じてしまうのかもしれない。浩介の両親も彼がまた金を持ち帰るようになると、顔に浮かんでいた不安の色を消し、再び笑みを取り戻した。里香は何度も親戚のグループラインで自慢するようになった。【注文が絶えなくて、浩介は今忙しいの。結局、ビジネスっていうのは機転が大事みたいね。勉強ばかりできたって、何も意味がないわ】なんとも嫌味ったらしい言い方だった。ある日、里香が母をメンションする。【智樹くんの就職先は決まった?もし決まってないなら浩介のところを紹介してあげようか?今、経理担当が必要なの。まぁ、給料は高くはないけど、仕事があるに越したことはないでしょ?身内なんだから、気兼ねなく頼ってね】僕の両親は返信もせず、そのままグループを抜けた。吉川畜産は安さを武器に、何人かの客をうまく丸め込み、短い間ながら再び「市場」を取り戻した。どうやら金儲けの「近道」を見つけたと思い込んだらしい浩介は、以前にも増して得意げな態度を見せるようになった。僕たちは渡航の最終準備に追われ、そんな喧騒に関わってはいなかった。しかしある日、無視できないほどのニュースが飛び込んできた。小さな食堂の客が体調の異変を訴え、ひどい食中毒を起こしたのが事の発端だった。電話でその報告を受けた浩介は、案の

  • 利益を独占する従兄。僕は協力を止め海外に飛んだ   第7話

    浩介は、従業員たちを集めた。「いいか、よく聞いてくれ!最近、少し問題があって、経営が少し厳しいんだ。だから、来月からみんなの給料を一律2割下げることにした。この困難を乗り越えたら必ず元に戻すし、ボーナスも弾む。だから、今はなんとか受け入れてほしい」その瞬間、その場がざわついた。「減給?!どういうことですか、社長!」「そうですよ!真壁さんがいた時は、かなりの売り上げが出てたじゃないですか!真壁さんがいなくなってまだ数日なのに、なんでこんなにもすぐに給料を下げるんですか!?」「そうですよ!真壁さんがいた時はこんなこと無かったのに!トラブルが起きるとすぐに、私たちの給料を下げるなんて、納得いきません!」「真壁さんを呼んでください!真壁さんに間に入ってもらって話しましょう!」「そうですよ!真壁さんを連れてきてください!」従業員の感情も昂っていき、場は騒然となった。浩介の顔もみるみるうちに青ざめていく。自分が雇っている奴らなのに、口を開けば智樹のことばっかり……まるであいつがここのトップみたいじゃないか。挙句の果てには自分を、悪徳経営者扱いしやがって!その瞬間、抑えきれない怒りが一気に頭へ駆け上がった。目眩に襲われ、耳鳴りもする。「智樹を呼べだと?あいつが何だっていうんだ!」浩介は一歩前に飛び出すと、歪んだ声で怒鳴った。「この吉川畜産は俺のものだ!だから、お前たちは俺のいうことを聞いていればいいんだよ!あいつはただの恩知らずだ!お前たちは一体何に騙されているんだ!?」浩介は充血した目で、そこにいる人々の顔を睨みつけた。そして、従業員の一人である小山純一(こやま じゅんいち)を指さして吐き捨てる。「おい!小山!お前が一番うるさかったな。智樹のやつに会いたいんだろ?納得いかないんだよな?じゃあ、教えてやるよ!あいつはとっくに俺が追い出したんだ!お前もクビだ!今すぐ出ていけ!」純一は怒りに体を震わせ、顔を真っ赤にして言い返した。「しゃ……社長!真壁さんを解雇したんですか?社長には人の心ってものがないみたいですね。この吉川畜産を、汗水垂らして支えてきたのは私たちなんですよ!さんざん働かせておいて、最後は切り捨てるっていうんですか?それで給料まで下げるなんて…

  • 利益を独占する従兄。僕は協力を止め海外に飛んだ   第6話

    「分かった」僕は迷いなく携帯を取り、その100万円を浩介の口座に送り返した。「送ったよ。確認して」浩介がせせら笑った。「当たり前だ。お前もやっと話が分かるようになったみたいだな。智樹、言っておくが……」しかし、僕はそれ以上聞く気にもなれず、すぐに電話を切った。その時の動作は、今までの人生で一番自然で、冷徹なものだったと、僕は思う。書斎にしんと静寂が広がった。父は目を見開いて僕を見つめ、やっとのことで絞り出すように言った。「智樹……なんで金を送り返したんだ?お前が素直にそうやって言うことを聞くと、ああいう奴は調子に乗るだけだぞ!」母も焦った様子で続ける。「智樹、あのお金……あなたが貰うべきものでしょ?確かにそんなに多くないけど、わざわざ返すことなんてなかったんじゃない?浩介くんったら……あれは恐喝よ!」僕は両親に向かって小さく首を横に振った。「父さん、母さん。あの100万円は僕にとって大した金額じゃない。でも浩介にとっては、僕を縛りつける唯一の首輪なんだ。だから、僕が全額返せば、もう僕に助けを求める言い訳がなくなる。お金を全額返金した今、もうこれから浩介や吉川畜産がどうなろうと、僕には一切関係ないんだよ」父は呆然としたまま僕を見つめ、深く長い溜息をつく。「お前ってやつは……本当に……」父は呆れたように首を振るだけで、それ以上は何も言わなかった。母も携帯を見てから、再び僕に視線を戻した。それでも結局は大きく溜息をつき、目尻の涙を拭いながら呟く。「そうね……それでもいいわ。縁を切ったんだもの。静かに暮らせるわね」電話が切られた。通話終了音が、浩介の耳元で無情にも響く。「おい!」と声を荒げた浩介は、腹立ち紛れに脇にあった飼料袋を思い切り蹴飛ばした。しかし、舞い上がった粉塵を吸い込んでしまい、激しく咳き込む。次の瞬間、携帯が震えた。モバイルバンクからの100万円の入金確認通知だった。浩介は嫌な笑みを浮かべ、既に通話が終わった携帯に向かって悪態をつく。「気取りやがって!お前がいなきゃ、俺が商売できないとでも思ってるのか!」携帯を握りしめ、相手を言いくるめたことで得た優越感にまだ浸る間もなく、健二が慌てた様子で飛び込んできた。「社長!大野社長と佐藤社長か

  • 利益を独占する従兄。僕は協力を止め海外に飛んだ   第5話

    電話に出た途端、浩介の怒鳴り声に鼓膜が破れそうになる。「智樹!お前はどこにいるんだ!?今の状況がわかってるのか!?こっちは大パニックなんだぞ!なのに、電話にも出ないし顔も見せない。一体どういうつもりだよ!?」僕は携帯をスピーカーにして机の上に置き、手元の書類を整理しながら、淡々と答えた。「何か用?」「何か用だと?それは俺に聞いてるのか!?」浩介の怒号が飛んでくる。「家畜どもが餌を食わなくなって、見るからに元気がないんだよ!現場の従業員だってお手上げだ。お前、一体何をしてくれたんだ?もしかして、お前のしょうもない配合飼料のせいなのか?覚えておけよ。もしこのことで吉川畜産が潰れたら、お前に責任を取ってもらうからな」僕はある書類を手に取り、抑揚のない声で答えた。「その配合飼料は君が僕に頼んできたものでしょ?それに、原料の調達から製造工程まで管理していたのはそっちだろう。だから、トラブルの責任なら、君が高給で雇ってる技術責任者に聞きなよ」「ふざけるなよ、この野郎!」浩介は僕の話を遮り、威圧的にまくしたてる。「忘れるな。俺はお前に給料を払ったんだぞ?100万円だ!あの金を受け取った以上、その分働け!それに、お前は俺の親戚だから、今までいい思いをさせてきてやっただろ?今じゃ自分の力で何でもできると思って、いい気になってるんじゃないのか?俺に偉そうな口をきいて、楽して稼ごうって魂胆だな?!」浩介は激昂し、溜まった不満を僕にぶつけてきた。「いいか?今日中に現場まで来い!この問題を解決しなかったら、お前のことをただじゃおかないからな!来年の分配金は、一銭も渡さない!俺は言ったからな!」それははっきりとした脅しだった。誰のおかげでここまでやってこられたのか、浩介は完全に忘れているらしい。僕は作業の手を止め、携帯の画面を見つめた。すると、なんだか急に何もかもが馬鹿らしくなってきた。浩介にとってあの100万円は、僕への報酬ではなく給料という扱いらしい。それに、僕が協力してきたのも、仕事の提携というよりは、やって当然のことだと言う。数秒黙った後、僕は静かに言った。「言いたいことは言い終わった?」浩介は僕がこんなにも落ち着いているとは思わなかったのだろう。電話の向

More Chapters
Explore and read good novels for free
Free access to a vast number of good novels on GoodNovel app. Download the books you like and read anywhere & anytime.
Read books for free on the app
SCAN CODE TO READ ON APP
DMCA.com Protection Status