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第10話

Author: 花畑のベイビー
慎也はとても優しく、そして、私を大切にしてくれた。

1年後。奈々が4歳の誕生日を迎えた日、慎也は小さな誕生日パーティーを開いてくれた。

そこで慎也は皆の前で改めて私にプロポーズしてくれた。彼がシンプルな指輪を差し出す。

指輪には、私と奈々のイニシャルが刻まれていた。

「梓。この1年、頑張っている君の姿と、奈々ちゃんの成長を側で見てきた。だから、改めて思ったんだ……君たちを一生守り抜きたいって。

これからの人生、俺の全てを捧げて君たちを愛すると約束する。

二度と、辛い思いはさせない」

慎也の声は優しく、そして力強いものだったし、とても愛おしそうに私を見つめてくれた。

奈々が私の手を引き、おぼつかない口調で言う。

「ママ、いいよって言って?私、パパが欲しいの。3人で家族になろうよ」

両親も琉生も、笑顔で私を見つめ、祝福してくれている。

この状況を目にし、私は涙を堪えることができなかった。

悔し涙ではなく、感動による嬉し涙。

私は頷いて手を差し出し、慎也が指輪をはめてくれるのを待った。

それから数日後、家族と親しい友人だけを招いた結婚式を挙げた。式は決して大きくは
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  • 割り勘夫に、大富豪の娘という正体を明かす   第10話

    慎也はとても優しく、そして、私を大切にしてくれた。1年後。奈々が4歳の誕生日を迎えた日、慎也は小さな誕生日パーティーを開いてくれた。そこで慎也は皆の前で改めて私にプロポーズしてくれた。彼がシンプルな指輪を差し出す。指輪には、私と奈々のイニシャルが刻まれていた。「梓。この1年、頑張っている君の姿と、奈々ちゃんの成長を側で見てきた。だから、改めて思ったんだ……君たちを一生守り抜きたいって。これからの人生、俺の全てを捧げて君たちを愛すると約束する。二度と、辛い思いはさせない」慎也の声は優しく、そして力強いものだったし、とても愛おしそうに私を見つめてくれた。奈々が私の手を引き、おぼつかない口調で言う。「ママ、いいよって言って?私、パパが欲しいの。3人で家族になろうよ」両親も琉生も、笑顔で私を見つめ、祝福してくれている。この状況を目にし、私は涙を堪えることができなかった。悔し涙ではなく、感動による嬉し涙。私は頷いて手を差し出し、慎也が指輪をはめてくれるのを待った。それから数日後、家族と親しい友人だけを招いた結婚式を挙げた。式は決して大きくは無かったが、そこにはとても温かな時間が流れていた。小さなドレスを着た奈々に手を引かれ、私は慎也のもとへと歩んでいく。慎也は私の手をしっかり握ると、耳元で優しく囁いた。「これからは、俺がいる」たった一言。だけどそれは、一生の安心感を与えてくれる言葉だった。結婚生活は、穏やかで幸せな日々だった。慎也は進んで家事を手伝い、奈々の寝かしつけや絵本の読み聞かせだってしてくれる。私が仕事で忙しいときには、家事を全て終わらせ待っていてくれた。慎也は私の仕事を応援してくれていた。「女性だから」といって、何かを諦めさせることはなかった。私に離婚歴があることも、全く気にせず受け入れてくれた。互いに助け合い、認め合って、私たちは穏やかな家庭を築いていった。そんなある日、彰人がまた私を探しに実家まで来たが、追い返すかどうか、と琉生から連絡がきた。私はどうでもいいと答える。なぜなら、もう彰人のことなど、何とも思っていないから。聞いたところによると、全てを失った彰人は日雇いの仕事で何とか食いつないでいるようだった。工事現場で働き、食堂で皿洗いをする日々。周囲

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